SOCSYS034: THE 34TH SYMPOSIUM OF TECHNICAL COMMITTEE ON SOCIAL SYSTEMS
PROGRAM FOR TUESDAY, MARCH 12TH
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09:00-10:20 Session 4A: 応用分野2(ミドル発表)

現地4件

09:00
コンピテンシー評価における関係者の立場に即した行動様式作成の生成AIによる省力化
PRESENTER: 諒 吉野

ABSTRACT. 本研究では,コンピテンシー評価における行動様式作成の際に必要となる膨大な時間と労力の削減をするため,また,現場からの漏れのない意見取り込み,被評価者を含めた評価関係者のそれぞれの立場の正確な判断などの課題を解決するために,生成AIの利用や被評価者と評価者の立場を明確に分けたアンケートプロセスなどを用いた行動様式作成手法を開発した.結果として,行動様式(シナリオ・行動指標)の具体性,納得度を確保しながらも,行動様式作成に必要となる時間と労力を大幅に削減することが生成AIの利用によって実現できたことが,有効性を評価するためのアンケートなどでわかった.

09:20
博物館における学習支援のためのユニバーサルデザイン:視覚障がい者のためのインタラクティブ学習環境の設計と評価

ABSTRACT. 本研究は,日本の博物館における視覚障がい者のアクセシビリティの現状と課題を検討し,展示物に対する学習支援コンテンツデザインを提案する.動物をテーマにした「ROUND ZOO」は「触察と対話」を活用し,視覚障がい者が動物の情報を理解しやすくすることを目指す.実施したワークショップとアンケートを通じて,このボードが視覚障がい者の学習支援に有効であることを確認し,ユニバーサルデザインの可能性を示した.

09:40
博物館におけるこどものための仮想現実協働学習システム
PRESENTER: 稀太 徳野

ABSTRACT. 本研究の目的は,博物館における複数人で体験できる AR 体験を探索的にデザイン, 実装, 検証し, 複数人で参加可能なAR体験を多様な博物館に応用可能な形でデザインする上での知見を獲 得することである. そこで, プロトタイプのデザインおよび博物館における AR 機能の実験を博物館 関係者の大人を対象として実施し, 検証を行なった. その結果, 本システムを用いることで, 体験者 同士の相互作用が生じていたことが確認された. また, AR で提示する情報の種類を使い分けること で, 体験における社会的相互作用と没入的な観察機会を創出できることが推測された.

10:00
後期採用者尺度とイノベーティング・ユーザー尺度を用いたUGC普及段階の推定 -2023年の調査結果-

ABSTRACT. Consumer Generated Media (CGM)や User Generated Content (UGC)の普及は自明であるが,現在がどのような普及段階であるかを推定することは難しい.そこで,本研究はJahanmir and Lages (2016)による後期採用者尺度(Late-Adopter Scale)とイノベーティング・ユーザー尺度(Lead-user Profile)を用いて一般消費者による情報・メディア・コンテンツの採用時期を分析する.筆者が2010年代半ばに実施した調査と同様の質問項目を用いて,今回新たに2020年代における状況を調査することで,現在の普及段階がより進展していることや手法の有用性を確かめることができる. 2010年代半ばから2020年代の現在までの間に,スマートフォンやアプリケーションのさらなる普及やコロナ禍によるオンラインツールの普及があった.2010年半ばの時点で既にUGCを共有や公開するためのCGMプラットフォーム(例えば動画共有サイトやSNS)の利用は一般的であったが,今やそれらを通じたUGCの受容はますます当たり前のものとなっている.このような状況の進展は,同一のプロダクトを対象とした普及段階の比較調査や推定方法の確認を行うには最適である. 本研究は2023年度に新たにデータを取得して分析を行ったので報告を行う.

09:00-10:20 Session 4B: 社会システムデザインの技術・ツール1(ミドル発表)

オンライン座長

オンライン1件、現地3件

09:00
インボイス取引の交換代数によるシミュレーションとそのHaskell実装

ABSTRACT. 本稿では,適格請求書等保存方式によって保存されるインボイスデータに記録される経済主体間の取引情報を交換代数によって表現した. また,その実装として,Haskellによる交換代数の計算用ライブラリを構築し,基礎的な経済シミュレーションの事例を構築した.

09:20
利用者の意思決定に基づく EV 充電器の最適配置の検討
PRESENTER: 進太郎 藤田

ABSTRACT. 近年, 地球温暖化への対策としてカーボンニュートラルが注目されている. 日本でもEVを普及させていくために, 充電インフラの拡充が求められる. そのため, 現状のEV充電器の配置と,今後のEV利用者の充電需要を考慮した配置計画が求められる. そこで本研究では,エージェントベースモデルを用いて, EV充電器の混雑時における利用者の意思決定と複数の充電器の種類を考慮した仮想世界を構築し,複数の配置計画を比較することで, 利便性の高いEV充電器の配置計画を検討することを目的とした. その結果, すでに充電器がある場所に充電器を追加することで混雑の緩和が可能になることや, 道路需要に沿った充電器の配置計画の重要性を示した.

09:40
居住地と従業地の距離を考慮した従業地割当手法

ABSTRACT. 国勢調査の常住人口を基に合成された合成人口データは居住地ベースの静的なデータである.これを動的なものとする試みの一つに,個々の就業者への従業地割当がある.就業者の居住地と従業地の関係については,距離が近い方が就業者に選好されやすいと考えられるが,先行研究のMurataらの従業地割当手法では,就業者の居住地と従業地の距離が考慮されていない.本研究では,合成人口データを用いて通勤距離を調整する従業地割当手法を提案する.なお,通勤距離については政府や自治体,研究者らによる調査結果などが公開されておらず,通勤距離に関する実態がつかめていないのが現状である.本研究では,通勤距離の実態が調査できるようになれば,実態に合わせて割当てできる手法を提案する.

10:00
多目的最適化社会シミュレーションによる給付付き税額控除制度の分析

ABSTRACT. 現行の所得税法における所得控除において,所得再分配機能に支障を来たし,財源調達機が低下する一因という課題が指摘されている.このような課題にある現行の所得控除を,その2つの課題の改善を目的とした給付付き税額控除へと控除制度を変更した場合における影響の分析を,多目的最適化社会シミュレーションを用いて行った.本研究で行ったシミュレーション結果として,税制における重要な役割と財源調達機能や,所得再分配機能の回復といった目的において,給付付き税額控除は現行の控除制度よりも,両方の目的においてともに改善することが可能であることが分かり,本研究における控除制度の変更は現在の税制における課題点の解決につながることがわかった.

10:40-12:00 Session 5A: 応用分野3(ミドル発表)

現地4件

10:40
インターネット広告における消費者の態度を考慮した広告効果に関する研究
PRESENTER: 佳奈恵 堀

ABSTRACT. インターネットの普及に伴い,様々な形式のインターネット広告が増加した.2021年には,インターネット広告費が他のメディア広告費を上回るなど,その重要性が増している.しかしながら,消費者と広告主の双方にとって懸念すべき課題も存在する.また,サードパーティークッキーを廃止する動きも高まってきており,今度ターゲティングすることが難しくなることが考えられる.本研究では,ターゲティングが難しい状況下での,広告の掲載方法や状況の違いによる消費者の態度を考慮した広告効果の変化について明らかにする.そこで本研究では,エージェントベースシミュレーションを用いて,消費者の広告視聴から購入,SNSによる拡散行動を再現した.また,消費者の広告に対する態度,広告の視聴回数による影響など,消費者の態度を踏まえた購買意思決定を再現した.

11:00
商品の潜在的類似性に基づく集約を用いた商品推薦手法の開発と予備的実装

ABSTRACT. 本研究では,商品を集約することで多種多様な商品に対応した商品推薦手法を開発した. 従来の推薦システムは,類似ユーザーから高い評価を得ている商品を推薦するが,ユーザーは多種多様な商品のうち少数しか購入しないため,推薦の参考にならず効果的な推薦を行うことができない.そこで,ユーザーの購買パターンを評価データとして認識し,潜在的な類似点に基づいて商品をクラスタリングすることでデータの分散性を改善した.また,この手法を組み入れ,製パン企業の事例に適用した推薦システムプロトタイプを作成し,精度が高く,十分な実現可能性があることを確認した.

11:20
Detecting Political Position Similarity among Politicians in Categorized Multilingual Tweets

ABSTRACT. In the field of computational social science, word embedding models converting words into complex, high-dimensional vectors are used as useful tools to study myriad axes of culture. These axes are induced by word differences in a high-dimensional space, which corresponds to dimensions of cultural meaning. Building upon this approach, we expand its application from individual words to entire sentences. We utilize the Language-agnostic BERT model (LaBSE) for analyzing and identifying cultural associations across multiple languages. Additionally, we incorporate Singular Value Decomposition (SVD) for a detailed examination of topic dimensions in aggregated documents. By projecting sentences onto these topic dimensions, we can interpret them from diverse perspectives. Our methodology is validated through its application to political discourse, revealing that political positions similarities can differ significantly on various topics, even among the same group of politicians.

11:40
SICE社会システム部会研究会におけるABSS研究のモデルと著者の特徴分析

ABSTRACT. 本論文では,エージェントベース社会シミュレーション(ABSS)研究の進展に対する総合的な理解を目指し,その最初の試みとして,公益社団法人計測自動制御学会(SICE)システム・情報部門社会システム部会研究会で発表された論文を分析した.2013年から2022年にかけての論文の中から,ABSS関連の論文を選定し,研究対象,モデル解像度,および著者の特徴を,時間的変化も含めて検討した.分析の結果,「公務」「医療,福祉」が一貫して注目されている重要な研究対象であること,Middle Range Modelが主流ながらFacsimile Modelへの進化も見られることが明らかになった.また,2013年時点では研究対象とされていなかった「農業,林業」「生活関連サービス業,娯楽業」等における論文が,年を追うごとに,新たに研究対象として登場し,ABSSの応用範囲が広がっていることが示された.著者の観点からは,主要著者や研究グループが明らかになり,研究コミュニティとしての洞察が得られた.これにより,新たな研究を始める際に参考となる論文や著者情報を特定でき,共同研究やネットワーキングの新たな機会が生まれることが期待される.

10:40-12:00 Session 5B: 社会システムデザインの技術・ツール2(ミドル発表)

現地4件

Chair:
10:40
合成人口データへの国民年金受給権者とその受給額の割り当て

ABSTRACT. 日本の公的年金制度は,現役世代が支払う保険料を年金給付の財源とする賦課方式を採用している.そのため,少子高齢化などの要因から様々な問題が発生し,その度に制度維持・制度改善のための制度改正が行われてきた.また,総人口に占める年金受給者の割合は増加傾向であり,今後も年金制度に関する制度改正とそのための社会シミュレーション等での分析が行われていくことが予想される.社会シミュレーションのモデル作成において,情報を設定する際に用いられるデータとして合成人口データがあるが,現時点では年金に関する属性は存在しない.そこで本研究では,合成人口データへ国民年金の年金受給権者とその受給額の割り当てを行い,合成人口データを用いた国民年金制度に関する分析を可能にする.

11:00
合成人口データを用いた学校施設の統廃合シミュレーション

ABSTRACT. 近年,多くの地方自治体では財政状況や少子化などの影響から学校施設の再編が求められている.本研究では,学校施設の統廃合によって影響を受ける児童とその影響の大きさを合成人口データと社会シミュレーションを用いて分析することにより,学校施設再編施策によって不利益を受ける児童の最小化や児童全体での影響の大きさを最小化するような学校施設統廃合案を提案することを目的とする.

11:20
合成人口データを用いた就業者の通勤手段割当手法の改良

ABSTRACT. 本研究では,合成人口データの就業者に通勤手段,通勤経路,通勤所要時間を割当てた先行研究の交通手段割当の改良手法を提案する.先行研究では通勤手段割合を統計に合わせるため,鉄道利用者割合を考慮して鉄道利用時の通勤時間の係数を決定している.本研究では鉄道利用者割合に加えて自家用車利用者割合との誤差を考慮して係数を決定し,通勤手段割当手法を改善する.

11:40
仮想個票データを用いた静岡市におけるテレワーク普及時の居住地予測マイクロシミュレーション

ABSTRACT. 本研究ではテレワークの普及がもたらす時間や場所の柔軟性が,静岡県静岡市の世帯の居住地選択や都市構造に与える影響を検証した.住宅属性をベースに構築した居住地選択モデルを用いて,テレワーク普及時の居住地選択の傾向を推定した結果,テレワークの頻度が増えると,住居費が安価な郊外地域への居住傾向が強まり,中でも家の広さを重視する世帯や子供のいる世帯ほど移動する傾向にあることが示唆された.現状のテレワーク普及状況では世帯や都市の変化はほとんど起こっていないものの,今後のテレワークの普及次第では世帯の移動が促進され,都市のスプロール化やスポンジ化が起こる可能性があることが明らかとなった.

15:10-16:25 Session 9: 社会システムデザインの技術・ツール3(ロング発表)

オンライン1件、現地2件

15:10
社会シミュレーション向け行動データ生成のための個人データを使わないActivity行動選択モデルの学習

ABSTRACT. 社会シミュレーション向けの現実に近い行動データ生成のため,入手困難な個人データ(実行動データ)を使わず,合成人口データと公開統計から作成したActivityデータで学習した行動選択モデルにより,任意Activityデータを生成する方式を提案する.本方式を,川崎市幸区民の通勤Tourを例に,ActivityシミュレータActivitySIMを使って開発評価し,有効性を確認した.

15:35
スケールをまたいだ事象の順序関係に基づくミクロ-マクロ・リンク解明手法の提案
PRESENTER: 尚暉 中村

ABSTRACT. エージェントベース社会シミュレーションでは,自律的に意思決定や行動するエージェントの相互作用が積み重なることで様々なマクロレベルの現象が形成され,それがまたミクロレベルのエージェントの行動に影響を及ぼす.このようなトップダウンとボトムアップの作用関係はミクロ-マクロ・リンクと呼ばれており,このリンクの存在が様々な介入施策の議論を可能にしている.本研究では,ミクロ-マクロ・リンクの特徴を定量的に見ることで現象に対する理解を深め,より効果的な施策の設計をできるようにするために,スケールを超えてシミュレーション中に発生した事象の順序関係を見ることで,ミクロ-マクロ・リンクの解明を可能とする手法の提案を行う.

16:00
まちづくりシミュレーションにおける住民の納得性を高める行動シーケンスの類似度測定指標の分析

ABSTRACT. まちづくり施策を評価する際に,社会シミュレーションにより行うことが試みられている.近年モデリングの過程やシミュレーション結果のフィードバックに多様なステークホルダーを巻き込むことが求められている.GSにより被験者がABMを体感し,被験者が選択した行動シーケンスに類似したシミュレーション結果を提示することで,被験者の納得感を醸成することが期待できる.本研究では,ABMを体験するGSを構築し,被験者の行動シーケンスに類似したシミュレーション結果を提示するための,行動シーケンスの類似度の測定指標の分析を行う.

16:40-17:55 Session 10: 応用分野4(ロング発表)

現地3件

16:40
ABSと因果推論を用いた新型コロナウイルス感染症 流行対策の効果分析

ABSTRACT. 新型コロナウイルス感染症に対しては,流行防止のための様々な施策が実施されてきた.施策の効果を定量的に評価する手法として,因果推論がある.しかし,実社会で因果推論を用いて分析を行うには,必要なデータを集める際にランダム実験が難しいことなどのいくつかの課題が存在する.そこで,社会シミュレーションと因果推論を組み合わせることで課題に対処し,有効性の高い施策の効果分析の方法論を検討する.分析の際にはマクロ指標のみではなく,個人単位での施策効果に焦点を当て,他者からの相互作用で受ける効果などについても詳細な検討を行う.本研究では,ABSによって得られるデータを利用して因果構造の分析と因果推論を行い,流行防止対策の効果検証と定量的評価を行う.また,一連の手法を,政策などの意思決定支援のためのフレームワークとして提案することを目的とする.

17:05
社会シミュレーションに基づいた市民目線の物語がもたらす政策理解促進に関する研究

ABSTRACT. 近年,政策を物語として伝える政策伝達が注目されており,共感や受容性の向上につながると期待されている.しかし,この物語は政府や自治体の取り組みに焦点が当たったものであり,市民の立場が明らかにされないまま共感に至るため,特定思想への誘導が懸念される.その課題の解決策として,本研究は市民の目線による政策との関わり方や具体的な政策効果を物語として伝えることに着目した.属性間で政策効果を定量的に比較できる社会シミュレーションを用いて,政策の影響を強く受ける属性目線から物語を生成し,従来研究されてきた自治体目線で描いた物語と合わせて伝えたところ,さらなる受容性の向上が期待できると明らかになった.

17:30
日本の食品加工業サプライチェーンの流通における製配販関係者の意識を考慮した問題構造の分析

ABSTRACT. 食品加工業のサプライチェーンは無数の問題を抱えており,物流とその周辺業務の効率化が求められている.問題解決には食品加工業サプライチェーンの構造の把握に加え,関係者の意識を解明は効果的な対策が立案に必要だと考えられる.本研究は食品加工業サプライチェーンにおける意識から問題へと発展する構造の解明のため,質的研究手法のM-GTAを用いてインタビューを分析した.その結果サプライチェーンの関係者の意識から現状のルールや商慣習が生まれ,それが問題につながることが明らかとなった.また問題は経営戦略上最適な手段を各社が選択したことによるサプライチェーン上の個別最適が背景にあることが示唆された.