SOCSYS040: THE 40TH SYMPOSIUM OF TECHNICAL COMMITTEE ON SOCIAL SYSTEMS
PROGRAM FOR TUESDAY, SEPTEMBER 1ST
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13:20-14:05 Session 1A: 意思決定と不確実性
13:20 エフェクチュエーションにおける起業家アイデンティティのモデル化に向けた概念的検討
ABSTRACT. エフェクチュエーションは,不確実性の高い状況下において,起業家が手持ちの手段を起点として事業機会を形成していく意思決定理論である.その中で,「Who I am」に相当する起業家のアイデンティティは,意思決定に影響を与える重要な要素として位置づけられているが,アイデンティティが具体的にどのような構造を持ち,事業アイデアの形成や関与者との相互作用にどのように関与するかは十分に整理されていない.本研究では,起業家のアイデンティティを単一の固定的属性として扱うのではなく,中核的自己理解,社会的志向性,主張されるアイデンティティなどの複数の要素から構成されるものとして捉え,それらが実行可能な事業方向の形成,アイデア選択,関与者からの評価,およびその後の自己理解の更新へとつながる概念モデルを提案する.本発表では,この概念モデルの構成要素と相互関係を整理し,今後の定式化およびシミュレーションモデルへの展開に向けた研究課題を示す.
13:30 小売購買系列における次商品予測のための系列ノイズ除去手法の構想
ABSTRACT. 逐次推薦では,行動履歴から次の商品を予測する.系列ノイズ除去は予測を妨げる履歴要素の影響を抑えるが,小売購買系列の各要素は実購入商品であり,客観的なノイズとはみなせない.予備実験では,SSDRec,無作為削除,商品ごとの重み付けはいずれも無削除条件を上回らなかった.本研究では,1件削除時の予測変化を教師信号としてモデル依存ノイズ候補を推定し,過度な履歴削除を抑える手法を構築する.
13:40 デジタル基盤における国外依存構造の分析と対策評価
ABSTRACT. 日本では,クラウド,AI,OS・ソフトウェアなどの社会機能を支えるデジタル基盤で国外企業が主要な提供主体となっており,国内主体による統制・選択・変更・代替の制約が安全保障上の問題につながる可能性がある.ScRの結果,国外依存は複数の要因から捉えられていた一方,要因間の関係や安全保障上の問題への影響,対応策の効果を実証的に検証した研究は限定的であった.そこで本研究では,日本のデジタル基盤における国外企業・国外技術への依存を構成する要因間の関係と安全保障上の問題との関係を明らかにし,有効な対応策を示すことを目的とする.
13:20-14:05 Session 1B: 行動変容と介入の設計
13:20 エスカレーター利用規範の転換に関する研究 ―片側立ちから両側立ちへの規範変化―
ABSTRACT. 日本では,エスカレーターの片側に立ち,もう一方を歩行者のために空ける利用規範が定着している.鉄道事業者や自治体は,歩行防止と両側立ちを促す広報活動や条例を実施してきたが,規範の転換には至っていない.本研究は,戸田・高橋の研究を参考に現状を表すエージェントベースモデルを構築し,長期間にわたる呼びかけが十分な効果を上げていない原因を明らかにし,既存施策の不足を補う施策の方向性を提示することを目的とする.
13:30 ABMとLLMを用いたモビリティハブ施策の一検討
ABSTRACT. 本研究では、大阪府和泉市を対象として、施設併設型モビリティハブが高齢者の外出行動に与える影響を評価するABM を構築する. 第1 段階では、統計データおよび地理データを用いたロジットモデルで高齢者の外出行動を表現し、実際の人流データとの比較によりモデルの再現性と妥当性を評価したうえで、LLM を用いて行動理由の推定を行う。第2 段階では、第1 段階で推定した選好を持つエージェントを動かし、モビリティハブ導入前後の行動変化を比較することで、施策の効果を明らかにする.
13:40 危機管理広報を題材とした専門家判断モデル抽出法の開発の構想
ABSTRACT. 企業の危機発生時における広報対応は,実務家の経験や暗黙知に依存する部分が大きく,判断根拠が明示されにくい.本研究では,Cognitive Task Analysis(CTA)およびCritical Decision Method(CDM)に関する先行研究を基盤に,危機管理広報の実務家から判断要因を整理する.さらに,第三者委員会報告書や調査報告書等から収集した実際の危機事案について,判断要因,企業・事案属性,実際の対応方針,対応後の報道量や株価反応等を対応付けて分析し,専門家判断モデルを抽出する方法の開発を目指す.将来的には,新たな危機事案に対して対応方針候補と想定される社会的反応を根拠とともに提示する意思決定支援への展開を目指す.
13:50 観光地における混雑情報提示が観光客行動に与える影響分析に向けたシミュレーションの構想
ABSTRACT. 近年,観光需要の回復に伴い,多くの観光地で観光客数が増加している.観光客の増加は地域のにぎわいや経済の活性化につながる一方,特定の場所や時間帯への集中による混雑が問題となっている.そこで本研究では,実際の観光地の道路や観光スポットを再現したエージェントベースシミュレーションを構築し,混雑情報の提示が観光客の行動に与える影響を分析する.観光客には訪問経験や同行者などの属性を設定し,提示された混雑情報に基づく目的地や移動経路の変化を表現する.また,情報提示の有無や提示方法の違いによる訪問先,移動経路,道路や観光スポットの混雑状況を比較し,混雑緩和に有効な情報提示施策の評価を目指す.
13:20-14:05 Session 1C: 制度・組織と変化への対応
13:20 レンタルビデオ市場におけるイノベーションのジレンマ分析
ABSTRACT. Christensenは,優良企業が既存顧客の要望に応え続けることで,新たな価値基準をもたらす破壊的技術に対応できず市場シェアを失う現象を「イノベーションのジレンマ」と定義した.この現象はアメリカのレンタルビデオ市場でも発生した. Blockbuster社は圧倒的シェアを誇っていたが,郵送・定額制という破壊的イノベーションを導入したNetflix社に対抗できず倒産した.本研究では,イノベーションのジレンマの定量的分析が未だなされていないレンタルビデオ市場を対象に,実際に生じたイノベーションのジレンマ現象をシミュレーションによって再現する.さらに,その結果をもとに,優良企業がイノベーションのジレンマに対抗するために取るべき戦略について検討する.
13:30 対人特性を加味した人事施策構成に向けた多様な参加者構成によるワークショップ設計手法開発の構想
ABSTRACT. 人事施策の構成は,管理職や人事担当者の経験に依存することが多く,施策を検討する参加者や施策対象者の対人特性の違いが十分に考慮されていない.本研究では,マルチレイヤーネットワークと対人特性データを統合し,性格や人との関わり方が異なる社員との日常的な接触の程度に基づいて参加者を構成するワークショップ設計手法を提案する.接触する社員の対人特性の多様性が高い参加者群と低い参加者群を構成し,同一条件下で人事施策案を生成する.両群の施策案について,課題認識,対象者,実施場面の多様性を比較するとともに,全社員による自己適合評価を通じて,対人特性の異なる幅広い社員に高く適合する施策案を含むかを比較する.
13:40 貧困の連鎖からの脱却評価と支援接続プロセスに基づく支援内容・接続条件の検討
ABSTRACT. 日本では、家庭の貧困が教育機会や進学を制約し、将来所得を通じて次世代へ貧困が再生産されることが課題となっている。そこで、日本の子どもの貧困と教育格差に関する44件の文献を対象にスコーピングレビューを行い、支援内容、届きにくい要因、支援主体、支援効果等を整理した。その結果、情報不足や申請手続き等の課題に加え、貧困の連鎖を断つための条件や支援効果が研究ごとに断片的に示され、共通の基準で比較できないこと、また支援情報が対象世帯に届き利用へ至る過程も十分に明らかになっていないことが分かった。今後は、貧困の連鎖からの脱却に関する評価指標を整理し、子ども・家庭の状況に応じた支援内容と支援への接続条件の関係を明らかにする。
14:15-15:00 Session 2A: 意思決定・協調と支援
14:15 オートポイエーシスの観点からのミクローマクロリンクのモデリング
ABSTRACT. 本研究は,オートポイエーシス理論の概念を応用し,ミクロマクロリンクにおけるミクロレベルとマクロレベルの相互作用がどのように形成されるのかを説明することを目的とする.オートポイエーシスは,マトゥラーナとヴァレラによって提唱され,生物を自らの構成素を産出しながら組織を形成する自律的なシステムとして捉える理論である.本研究では,環境,攪乱,構造的カップリングなどの概念に着目する.特に,ミクロレベルの主体間の相互作用からマクロな構造が形成され,その構造が環境として主体の相互作用に影響を及ぼすという循環的な過程を捉えることで,ミクロからマクロ、マクロからミクロへの相互作用をモデル化することを目指す.
14:25 タンジブルインタフェースによる洪水防災施策検討環境の一提案
ABSTRACT. 本研究では, 時間とともに変化する洪水状況を考慮した避難シミュレーションを基盤として, 地域の防災担当者が通行規制や避難所等の条件を物理的なカードやブロックによって変更し, その結果を住民と共に比較できるタンジブルユーザインタフェースを用いた防災施策検討環境を提案する. 地図上で複数の施策をシミュレーションし, 避難経路や到達状況の変化を可視化されたシミュレーション結果より確認することで, 洪水時の避難上の課題を把握し, 防災施策の検討を支援することを目指す.
14:35 合成人口データを用いた水害時避難シミュレーションによる避難困難性評価の検討
ABSTRACT. 近年,極端な豪雨の増加に伴い,水害時における安全な避難の重要性が高まっている.特に,高齢者や要介護者などの要配慮者を含む住民の避難困難性を評価する際には,年齢だけでなく,世帯構成や避難支援の有無を考慮する必要がある.そこで本研究では,年齢や世帯構成などの情報を持つ合成人口データを用いて住民エージェントを生成し,時系列浸水深データを組み合わせた避難シミュレーションを行う.浸水深に応じた歩行速度の低下や道路の通行可否,世帯員による同行・支援を避難行動に反映し,避難開始時刻と破堤箇所を変えた複数ケースを検証する.避難完了率や避難未完了者数を属性・世帯構成別に比較し,避難困難性が生じる条件を分析する.
14:15-15:00 Session 2B: 個体差と集団意思決定
14:15 社会的ジレンマとしての内部共創における協調崩壊の閾値とその制御
ABSTRACT. 組織内で知識を持ち寄り新たな価値を生む内部共創の基盤である共有データベースへの知識提供は,共有知識の非排除性・非競合性ゆえに社会的ジレンマの構造を持つ.Cress ら(2006)は,情報の重要度に応じて貢献コストが増加すると,重要な情報を優先的に提供する協調的な行動が失われることを示した.しかし,どの程度のコスト差から崩壊が生じ,何がその閾値を動かすかは明らかになっていない.そこで本研究では,見積もりのズレで閾値はどう変化するのか.また,崩壊した状況で自己利得・他者貢献の可視化という二種類の間接的制御は協調を取り戻すことができるのかを明らかにする.
14:25 労務相談対応を対象としたLLMロールプレイ学習支援システムの開発に向けて
ABSTRACT. 近年,管理者には,労務相談で相手に配慮しつつ必要な事実を確認し,状況を整理する対話能力が求められている.しかし,労務事案には人間関係や健康状態など複数の要因が関係し,限られた情報から確認事項や質問順序を判断することは容易でない.そこで本研究では,相談者役LLMとの反復対話と対話後のフィードバックを提供するロールプレイ学習支援システムを開発する.複数の評価エージェントが学習者の発話を評価し,結果に応じて相談者の態度と情報開示を動的に調整する.管理職約15名による利用評価を通じ,システムがもたらす利用体験と,自己効力感・対応不安の変化との関連を明らかにすることを目指す.
14:35 公共サービスの集約・再編が住民生活に与える影響の定量的事前評価
ABSTRACT. 人口減少・高齢化に伴い自治体の財政制約が強まる中、公共施設やインフラ等のサービスの集約・再編が求められている。一方、集約・再編は、アクセス性、サービス水準、活動機会、地域コミュニティなど、住民生活に影響を及ぼす。既存研究では、アンケート等の主観評価を用いる研究が多く、住民生活を定量評価する指標の体系的整理や、他地域への適用可能性の検証が十分ではない。本研究では、公共サービスごとに住民生活への影響と定量指標の対応関係を整理し、自治体が各集約・再編シナリオによる影響を事前に算出・比較できる評価プラットフォームを構築する。各地域への適用を通じて評価方法の妥当性を検証し、自治体の意思決定を支援する。
14:15-15:00 Session 2C: 行動モデルと介入・支援
14:15 映画『国宝』興行収入推移を説明するモデル化とヒット要因分析
ABSTRACT. 先行研究では,映画の興行収入推移はblockbuster-typeとsleeper-typeの2つのパターンに大きく分類され,エージェントベースモデルによってその推移の再現が行われている.しかし,映画『国宝』の興行収入推移は,従来の2つのパターンには完全には当てはまらない推移を示している.そこで本研究では,『国宝』を事例として,興行収入推移をエージェントベースシミュレーションによって再現する.さらに,シミュレーションを通じて,『国宝』の興行収入推移が形成された要因を分析し,大ヒットに至った要因を明らかにする.
14:25 公共駐車場料金政策の議論支援に向けたエージェントベースモデルの構築と活用構想
ABSTRACT. 公共駐車場の料金政策では,利用者の利便性,収益,駐車可能性,周辺民間駐車場への需要移転など,複数の観点を考慮する必要がある.エージェントベースモデルは施策の事前比較に有用であるが,計算結果の提示だけでは政策議論への活用が難しい.そこで本研究では,現場情報に基づく公共駐車場利用モデルを構築し,その結果を用いて施策の影響とトレードオフを議論するワークショップの実施を目指す.これまでに,インタビュー,動画観測,位置情報データおよびWeb選択実験を統合したモデルを構築し,料金施策を比較した.今後はワークショップを設計・実施し,政策課題の理解や施策検討に対するモデルの有用性と課題を評価する.
14:35 不確実性下における若者の意思決定プロセスに基づく支援手法の構築
ABSTRACT. 現代社会では、雇用・制度・科学技術・人間関係などの社会環境が変化し、将来や選択結果を見通すことの難しさが高まっている。こうした不確実な社会環境の中で、個人は進学、就職、キャリア、生活など様々な意思決定を求められている。一方、不確実性は、知識・情報の不足、将来の予測困難性、制度・構造の流動性、他者の行動の不透明性、心理的な確信の欠如など、研究によって異なる意味で扱われている。そこで本研究では、社会環境の変化が若者にどのような不確実性として認識され、心理状態や意思決定にどのような影響を与えるのかを明らかにする。さらに、そのプロセスを体系化し、不確実性下における若者の意思決定支援に向けた理論的枠組みと介入方法の構築を目指す。
15:10-15:55 Session 3A: AI・知識と意思決定支援
15:10 Opportunistic Learningを題材とした組織学習の重要性を学ぶゲーミング・シミュレーションの構築
ABSTRACT. 近年,企業には既存事業の効率性を維持しつつ,新たな市場や技術に適応することが求められている.そのため,既存組織から一定の自律性を与えられた新規事業チームが活用される一方,そこで形成された知識や判断が組織全体の学習に結びつかない場合がある.このような組織学習上の問題の一つとしてOpportunistic Learningが挙げられ,IBMのPC事業はその代表的事例として扱われている.本研究では,Opportunistic Learningによって新規事業チームの局所的な成功が組織全体の失敗へと転じるプロセスに着目し,その構造を体験的に理解できるゲーミング・シミュレーションを構築することを目的とする.
15:20 図面情報を用いた説明可能な抜型の見積り価格予測モデルの構築に向けて
ABSTRACT. 抜型の見積り業務では,図面や過去案件を基に価格を決定するため作業負担が大きく,判断根拠が担当者の経験に依存しやすい.機械学習による予測は省力化に有効である一方,予測結果のみでは価格の妥当性を確認しにくい.そこで本研究では,図面情報から見積り価格を予測し,予測結果を可視化するとともに,予測価格の増減に寄与した図面特徴や類似案件を判断材料として可視化する方法を提案する.予測精度だけでなく,価格算出過程の透明性も重視する.これにより,経験に基づく価格判断を比較可能な情報として定量化し,担当者の負担軽減を目指す.
15:30 社会シミュレーションにおけるLLMを用いたエージェント意思決定の実装手法の構想
ABSTRACT. 社会シミュレーションでは,エージェントの意思決定が設計者の定めた固定的なルールで記述されることが多く,多様な意思決定を表現するには限界がある.そこで,大規模言語モデル(LLM)をエージェントの意思決定に用いることで,状況に応じた意思決定の再現を目指す.本研究では,エージェントベースモデリング(ABM)基盤であるSOARS Toolkitの構造の中に,意思決定としてLLMを組み込む点に着目する.また,エージェントの状態をプロンプトへ変換する方法と,LLMの出力を基盤上の行動として処理する方法を設計・実装し,様々な観点から評価する.これにより,LLMを用いた社会シミュレーションを構築しやすくなることが期待される.
15:10-15:55 Session 3B: ネットワークとシステムの構造変化
15:10 破壊的イノベーションにおけるエコシステムの要因分析
ABSTRACT. 破壊的イノベーションの進行に伴い、既存企業ではイノベーションのジレンマが生じる。クリステンセンは、その要因を、顧客を中心として企業やサプライヤなどが価値基準によって結び付けられたバリューネットワークの変化によって説明している。一方、破壊的イノベーションの多様性の要因として、エコシステムが指摘されている。エコシステムは企業・顧客・補完企業などの主体間の関係によって構成されるため、バリューネットワークの変化は、エコシステムを構成する主体間の関係ネットワークの変化として捉え直すことができる。そのうえで「エコシステムのどのような関係ネットワークの変化が破壊的イノベーションの多様性に影響を与えるのか」を明らかにする。
15:20 Physical Internet導入による高速道路貨物流動の変化 ―都道府県間貨物ODを用いたネットワークシミュレーション―
ABSTRACT. 物流の2024年問題を背景に、限られた輸送力を有効活用するため、共同輸配送や積載率の向上が求められている。フィジカルインターネットは、標準化された貨物を企業横断的に物流拠点間で輸送することで、物流効率の向上が期待されている。兵藤ら(2024)は、物流センサスと道路交通センサスを組み合わせ、道路リンク別の貨物流動を推計する手法を提案した。本研究では、2021年物流センサスの都道府県間貨物ODと高速道路ネットワークを用い、従来輸送とPI導入後の貨物流動を経路配分によりシミュレーションする。これにより高速道路上の貨物流動を推計し、PI導入による貨物流動量の変化を定量的に評価する。
15:30 資源・技術偏在下の国際システムにおける均衡状態の記述・判定枠組みの構築
ABSTRACT. レアアースや半導体、AI関連技術などの資源・技術の偏在が国際秩序へ与える影響を背景に、「世界の均衡」の捉え方を整理するためスコーピングレビューを実施した。J-STAGE・Scopusから22,577件を抽出し、段階的なスクリーニングを経て46件を採択した。分析の結果、均衡・安定の捉え方は、対象主体、システム境界、維持対象、状態遷移、判定方法によって異なることが示された。これを踏まえ、資源・技術偏在を扱う国際システムについて、各要素を対応づけ、均衡変化を分析可能なモデル設計枠組みを構築することを研究目的として設定した。
15:10-15:55 Session 3C: 個別化・アクセスと行動支援
15:10 パーソナライズされた観光情報提供における効果の検討
ABSTRACT. 近年,観光地の混雑緩和が課題となるなか,パーソナライズされた情報提供による観光客の行動変容が注目されている.CRMやAIコンシェルジュ等,識別性の高いパーソナライズ情報提供はすでに観光分野に広く実装されているが,これらが実際に行動変容を促す効果を持つのかは十分に検証されていない.また,パーソナライズの効果は識別性の高さとプライバシー懸念の条件によって反転しうることや,観光客の目的地選択が他分野とは異なる意思決定構造を持つことも指摘されており,効果の有無は自明ではない.本研究では,実際に行われているパーソナライズ情報提供が持つ「識別性」と「対話性」に着目し,観光客の行動変容に対する効果とその条件を明らかにするとともに,混雑緩和という帰結への含意を考察する.
15:20 深層学習を用いた建物の利用用途判別における入力データの拡張の構想
ABSTRACT. 近年,社会シミュレーションのモデル作成等への活用を目的として合成人口データが注目されている.しかし,合成人口データが持つ住所情報のうち,町丁目より詳細な情報については,建物に対して無作為に世帯が割り当てられている.そのため,居住の可能性が低い建物にも世帯が配置される等の問題が生じている.先行研究では,深層学習モデルに航空写真を入力し,建物を3項目に分類する手法が提案されたが,視覚的に類似した建物の判別には限界がある.そこで本研究では,航空写真に加え,行政が公開している道路データや数値標高モデル等の情報を用いて入力データを拡張し,建物の利用用途判別の精度を高める.
15:30 住宅弱者の民間賃貸住宅への契約成立を左右する制度・支援条件の分析
ABSTRACT. 住宅弱者に住宅を届けるためには、住宅資源の供給だけでなく、相談、情報提供、物件探索、審査、契約、入居後支援に至る一連の接続過程を制度として機能させる必要がある。しかし既存研究では、対象集団、住宅資源、制度、成果指標が研究ごとに異なり、相談受理から契約成立までの各段階を共通の枠組みで捉え、制度・支援上の変更が契約成立や所要日数に与える影響を検討する知見は十分に整理されていない。
本発表では、住宅弱者と住宅資源をつなぐ制度を扱ったスコーピングレビューの結果を踏まえ、日本の居住支援における今後の研究目的を提示する。レビューでは、69件を全文確認し、制度・政策・行政運用・居住支援・多機関連携を主たる分析対象とする61件を採択した。採択文献を、対象集団、住宅資源、制度的接続段階、制度・支援上の障壁、関与主体、支援手段、成果指標の7軸で整理した。その結果、既存研究は居住支援組織、自治体、不動産事業者、家主等の関与や、多機関連携、ケースマネジメント、保証、仲介、入居後支援などの支援手段を扱っていた。一方で、相談受理から民間賃貸住宅の契約成立までについて、各段階の移行率、所要時間、制度・支援条件を同じ指標で関連付け、制度変更の効果を検証した研究は限られていた。
以上を踏まえ、本研究の目的は、日本の居住支援における相談受理から民間賃貸住宅の契約成立までを対象に、既存業務記録を用いて制度・支援上の変更が契約成立率と契約までの日数に与える影響を推定し、その変更を異なる相談件数、物件数及び支援人員のもとで実施した場合の影響と、実施に必要な主体間の役割分担を明らかにすることである。
16:05-16:50 Session 4A: 評価指標とパフォーマンス
16:05 従業員の発言と業績評価及び組織パフォーマンスに関する社会シミ ュレーションによる考察
ABSTRACT. 本研究は,Voiceを「既存の共有認識とは異なる信念の能動的な表明」と捉える.March(1991)の相互学習モデルを基に,本研究は,コードを学習する個人をLoyalty,学習せず逸脱信念を表明する個人をVoice,表明しない個人をNeglectと対応づけ,逸脱信念がコードに反映される能動的経路を導入する.方法にはエージェントベースシミュレーションを用い,観測不能な真の貢献度を内生的に定義したうえで,Zhang et al.(2022)が示した発言頻度と評価の逆U字型関係の再現によって妥当性を確認する.その後,業績評価の重み付けと環境変動を操作し,組織パフォーマンスに寄与するVoiceが業績評価と乖離するメカニズムと,環境変動下でのその乖離の変化を明らかにする.
16:15 AI時代に求められる人間の能力の体系化とその育成に向けた教育設計の構築
ABSTRACT. 生成AIの普及により,社会で求められる能力が変化する一方,育成すべき能力とその評価方法について共通した定義は確立されていない.本研究では,AI時代に人間に求められる能力を明らかにするため,J-STAGE および Scopus を用いたスコーピングレビューを実施し,採択した63件の文献を整理した.その結果,求められる能力は複数の領域に分類できる一方,分野ごとに用語や粒度が異なり,分野横断的な対応関係と,能力を測定・評価へ接続する枠組みが不足していることが示された.そこで本研究は,既存の能力枠組みとレビュー結果を統合した分野横断的な共通枠組みを構築し,その妥当性を検証することを目的とする.
16:25 NPBにおける打者能力指標と得点との関連性に関する比較分析
ABSTRACT. 打率、長打率、OPS、ISO、wOBAなどの打者能力指標は野球に広く用いられているが、それぞれ異なる打撃能力を評価する指標であり、打者の総合的な攻撃力を十分に捉えられるものではない。また、各リーグの選手能力や戦術傾向により、得点との関連性に差異があると考えられる。Wulff & De Silva(2022)は、複数の打撃指標による多面的な評価の重要性を示した。本研究では、NPBの規定打席到達打者を対象に、複数の打者能力指標と攻撃貢献を表す評価基準との統計的関係を分析する。各指標のチーム得点への説明力を比較し、日本のプロ野球において打者能力をより適切に評価できる指標を明らかにする。
16:05-16:50 Session 4B: 行動とモビリティの設計
16:05 習慣の形成と定着における個人特性と環境介入の役割:エージェントベースモデルによる分析
ABSTRACT. 本研究は、習慣の形成・定着において個人特性と社会的環境が果たす役割をエージェントベースシミュレーションにより分析することを目的とする。習慣形成は、即時報酬・長期報酬への感度、現在バイアス、行動に対する主観的変化など、個人の意思決定特性に左右される一方、模倣、パブリック・コミットメント、同調圧力・社会規範といった他者との相互作用にも影響される。そこで、目標指向的なSlow思考と自動化されたFast思考の切替を含むエージェント内部モデルを構築し、報酬構造の異なる複数の習慣行動と多様な個人特性を組み合わせてシミュレーションを行う。さらに、環境介入を導入し、習慣の定着率を比較する。これにより、個人と習慣の相性による定着度合いを定量化し、自律性を尊重した効果的な介入指針の提案を目指す。
16:15 モビリティハブを活用した地域交通最適化手法の検討
ABSTRACT. 本研究では, 路線バス事業者が撤退した過疎地域における,モビリティハブを利用した最適な公共交通のありかたを検討する.モビリティハブとは,地域住民の交流の場を兼ねた公共交通どうしの乗り換え拠点である.本稿では,大阪府和泉市南部を対象に,市街地への公共交通の乗り継ぎを考慮した交通体系を検討する.これまでに,既存公共交通サービスの特徴分析を行った.
16:25 都市特性と利用実態に基づくシェアサイクルのステーション配置要因分析
ABSTRACT. 環境への配慮や健康増進、混雑緩和の観点から、「コンパクト+ネットワーク」の実現に向け、シェアサイクルの活用が期待されている。シェアサイクルの利便性と利用率を高めるには、適切なステーション配置が重要である。清水ら(2025)はポートの数・配置場所と利用者満足度との関係を示し、山村ら(2022)はGPSデータを用いて利用者の移動行動を分析した。一方、都市規模や構造の違いを考慮した配置要因の分析は十分とは言い難い。本研究では、名古屋市、豊橋市、蒲郡市を対象に、ステーション利用量と人口、駅・バス停、地形等の立地環境との関係を分析し、ステーション配置の妥当性を検証する。
16:05-16:50 Session 4C: 規範・持続性と社会的介入
16:05 メタ規範ゲームへの裏切りの隠蔽の導入
ABSTRACT. Axelrodのメタ規範ゲームは,裏切った者を罰しなかった者をも罰するというメタ懲罰によって,規範が維持されうることを示した.しかしこのモデルでは,裏切りが発見される確率が機会ごとに外生的に与えられ,裏切り行為者自身がその発見されやすさに働きかける余地がない.本研究では,裏切り行為者が自らの裏切りの発見されやすさを下げる形質を導入し,それが規範の成立に与える影響を検討する.隠蔽は裏切り行為者が懲罰を受ける機会を減らすと同時にエージェントの復讐度への選択圧にも影響を与える.
16:15 社会記号がもたらす「あたりまえ」変容のシミュレーションとPR手法最適化の構想
ABSTRACT. 近年,企業や自治体では,社会課題の解決や新たな価値観の普及を目的とした取り組みが行われているが,それらが人々に受容され,社会の「あたりまえ」として定着する過程を事前に評価することは容易ではない.本研究では,社会記号が生活者の価値観変容を通じて社会規範や「あたりまえ」の形成に与える影響を明らかにするため,エージェントベース社会シミュレーション(ABSS)を用いた価値観変容・社会規範形成モデルを構築する.さらに,構築したモデルを用いた逆シミュレーションにより,目標とする社会規範の変化を実現するために有効なPR手法の種類,量,実施タイミングの組合せを,予算や実施期間等の制約下で探索する
16:25 社会維持に不可欠な職種の担い手確保に関する分析
ABSTRACT. 人口減少や労働力不足が進行するなか、社会維持に不可欠な職業の担い手確保が課題となっている。本研究では、社会維持に必要不可欠とされる職種の担い手不足に対する施策とその効果について、既存研究の動向を把握することを目的にスコーピングレビューを実施した。その結果、実証研究は医療・福祉分野に集中しており、社会維持に不可欠な職業を横断的に対象とした研究は限定的であった。また、担い手確保・定着に関する要因や施策は産業・地域ごとに異なり、その効果を産業横断的に比較した研究も乏しかった。以上から、今後は産業間の共通点と相違点を整理し、参入から定着までを包含する担い手確保の仕組みを検討する必要がある。
17:00-17:45 Session 5A: 意思決定・協調と支援
17:00 展開形多重認知ハイパーゲームによるムカデゲームの協調行動のモデル化
ABSTRACT. 本研究では,展開形の非協力ゲームにおける協調行動の発生メカニズムを,プレイヤーの主観的認知の不確実性を扱う枠組みである多重認知ハイパーゲームを用いて分析する.伝統的なゲーム理論では,ムカデゲームにおいて即座の裏切りが理論的解とされるが,実証実験では多くのプレイヤーが協調行動をとることが知られている.既存研究ではこれを客観的な事前確率に基づく不完備情報ゲームとして説明してきたが,本研究では,相手の利他性に対する「主観的な思い込み」として定式化し直す.これにより,複雑な確率計算を前提としない,より現実に即した人間の意思決定モデルを構築し,シミュレーションによる実験結果の再現を目指す.
17:10 システム工学に基づくLLMによる意思決定支援手法の構想
ABSTRACT. 近年,大規模言語モデル(LLM)を用いた意思決定支援に関する研究が行われている.それらの研究では,LLMベース・マルチエージェントシステム(LLM-based MAS)の検討や既存の問題解決アルゴリズムをLLM-based MASに担わせる有効性の検証が行われている.一方,現実の曖昧な情報が絡む複雑な問題への適用可能性には課題が残る.そこで本研究では,システム工学における問題解決プロセスをLLM-based MASに担わせ,意思決定支援を行う手法を提案する.これにより,現実の複雑な意思決定場面へのLLMの有効性を検証する.
17:20 キャリア教育における設計・評価枠組みの構築
ABSTRACT. 近年、進路選択の複雑化や教員による個別支援の限界から、生徒自身が進路を考え、判断するための基礎的・汎用的能力の育成が求められている。一方、キャリア教育では、その能力をどのように育成・評価すべきかが明確でない。そこで、キャリア教育における成功、教育的取り組み、育成能力、評価方法を対象にスコーピングレビューを実施した。その結果、各要素に関する研究は蓄積されているものの、教育的取り組みから能力の育成、進路選択・キャリア形成、成功に至る一連の関係は十分に明らかになっていなかった。本研究では、成功のあり方と、それに必要な能力、教育的取り組み、評価方法の関係を明らかにし、キャリア教育の設計・評価の枠組みを構築する。
17:00-17:45 Session 5B: 個体差と集団意思決定
17:00 An Analysis of the Effects of Time Constraints and Deadline Effects on Decision-Making in the Garbage Can Model
ABSTRACT. The garbage can model, proposed by Cohen et al. in 1972, models the decision-making process in situations where four streams—choice opportunities, participants, problems, and solutions—intersect. Akiyama et al. revealed that introducing time constraints to the garbage can model increases the number of problems solved. Meanwhile, Roth et al. proposed the deadline effect, which states that agreements tend to occur near the end of a meeting when time constraints are present. In this study, we investigate through simulation analysis whether decision-making occurs when time constraints and the deadline effect are incorporated into the garbage can model.
17:10 Towards Constructing AI Personas from Public Regional Data for Consumer Narratives
ABSTRACT. Consumer insights are essential for product development because they reveal consumers’ underlying needs, preferences, and motivations. However, traditional methods such as interviews and questionnaires are often costly and time-consuming, particularly for businesses with limited resources. Recent studies have explored Large Language Models (LLMs) to construct AI personas and generate consumer responses. However, many approaches rely heavily on questionnaire data, making it difficult to construct personas without collecting new participant data. To address this limitation, this study proposes an AI persona construction method that integrates publicly available regional data, including demographic and regional visual information, with estimated psychological characteristics. The proposed method constructs AI personas reflecting residents’ characteristics in a target region and uses them to generate human-like consumer narratives. The generated narratives will be evaluated by comparing them with human narratives using Semantic Similarity. After validation, the method will be applied to target and competitor bakeries to identify consumer insights and support product development.
17:20 参加動機に基づく動的なボランティアネットワークの参加と離脱アルゴリズムのモデリングとシミュレーション
ABSTRACT. 現代社会では、災害対応や地域活動など様々な場面でボランティアが重要な役割を担っている。一方で、参加者の不足や活動の継続性が課題となっている。桜井(2007)は、ボランティアは企業従業員とは異なる動機や参加形態を持つため、独自のマネジメントが必要であると指摘した。藤田ら(2010)は、情報共有を考慮した人的ネットワークの組織モデルを提案した。本研究では両者を踏まえ、ボランティアの人的ネットワークをモデル化する。大学の学生委員会活動を対象とし、ボランティア組織の持続可能な運営を目指す。中核メンバーと協力メンバーの関係を人的ネットワークとしてモデル化し、シミュレーションにより活動促進の条件を検討する。
17:00-17:45 Session 5C: 行動モデルと介入・支援
17:00 ランドスケープ理論に基づくオンライン申告ナッジのエージェントベースモデル
ABSTRACT. フィンランド税務庁の大規模フィールド実験は、ナッジによるオンライン申告採用率の上昇を統計的に示したが,行動変容がなぜ・どのように起こるのかは明らかでない.本研究では,ランドスケープ理論に基づき,情報提供・社会規範ナッジへの感度を持つ内部モデルと行動変容モデルからなるエージェントベースモデルを構築し,対照群11.6%および各ナッジ条件の採用率上昇幅の再現を通じて,両感度の組み合わせがナッジ効果に与える複雑な関係を分析する.
17:10 生活時間統計に基づくエージェント基本行動モデル構築の構想
ABSTRACT. 近年,行政施策の効果を事前に検証する手法として,エージェントベースシミュレーション(ABS)が用いられている.ABSを用いて行政施策の効果を精度良く検証するためには,人々の属性や仕事,買物などの日常的な生活行動をエージェントに反映する必要がある.そこで本研究では,総務省の社会生活基本調査やNHK放送文化研究所の国民生活時間調査などの生活時間統計をもとに,エージェントの属性に応じた1週間の基本行動スケジュールを生成する.さらに,移動時間や行動間の時間的整合性を考慮し,ABS上で矛盾なく移動・行動できる仕組みを構築することで,現実の生活行動をより適切に再現したエージェント基本行動モデルの実現を目指す.
17:20 SNSにおける偽・誤情報の拡散構造と予防的対策の検討
ABSTRACT. SNSは主要な情報流通基盤として社会に定着する一方、偽・誤情報の拡散による社会的影響が問題となっている。そこで本研究では、SNSにおける偽・誤情報の拡散構造と対策に関する既存研究を対象にスコーピングレビューを実施した。その結果、情報の新規性や感情喚起、確証バイアス、エコーチェンバー、影響力の高いアカウント、推薦アルゴリズムなど、拡散を促進する個別要因については多くの知見が蓄積されていることが確認された。 一方、それらの要因を相互に関連付けて拡散構造全体を捉え、対策の有効性へ結び付けた研究は十分ではなく、特に生産・供給段階で拡散を未然に防ぐ予防的対策の検討が不足している。そこで本研究では、偽・誤情報の生産・供給から拡散に至る構造を整理し、予防的対策のあり方を明らかにすることを目的とする。