SOCSYS039: THE 39TH SYMPOSIUM OF TECHNICAL COMMITTEE ON SOCIAL SYSTEMS
PROGRAM FOR MONDAY, MARCH 9TH
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08:50-10:05 Session 3: ロング発表(1)
08:50
ナラティブと心情を統合した地域密着型店舗における来店体験可視化手法の提案

ABSTRACT. 本研究では,来店アンケートから生成したナラティブと心情情報を,合成人口データおよび地理情報と統合し,地域単位で来店体験の傾向を可視化する手法を提案した.アンケートに含まれる断片的な回答を文脈情報として統合的に扱い,来店前から来店後までの体験を一人称のナラティブとして再構成するとともに,来店時の心理状態を心情スコアとして定量化した.これにより,従来の数値的・属性的分析では捉えにくかった顧客の心理的側面や体験の背景を,地域という文脈の中で表現可能とした.岩手県盛岡市の地域密着型ベーカリーを対象とした適用事例および関係者による評価を通じて,本手法が顧客理解や課題発見を支援する手段として有用であることを確認した.

09:15
生成AIによるロジックモデル構築支援手法の設計と比較評価 — 思考様式の違いがモデル構造に与える影響 —

ABSTRACT. 本論文では,自治体の政策形成においてロジックモデルを構築する際に生じる構造的課題を軽減するため,生成AIを活用したモデル構築手法を設計・検証した.一般的なモデル構築では,事業実施の目的化や,各要素間の因果関係が不明瞭になるといった課題が指摘されてきた.そこで本研究では,新潟県加茂市の総合計画を対象に,既存の異なる思考様式に基づく構築手法を生成AIに教示し,3種類のロジックモデルを構築した.さらに,構造評価および実務者による評価を通じて比較を行った結果,構築手法の違いがモデル構造や実用性に体系的な差異をもたらすことが明らかとなった.また,適切な方法論を与えることで,生成AIが参照情報を正確に反映したモデル構築を行える可能性が示唆された.

09:40
大規模言語モデルのエージェントベースシミュレーションにおけるミクロマクロリンク推論能力の検証

ABSTRACT. ABSは,ミクロとマクロの双方向の因果関係であるミクロマクロリンクの分析に有効である一方,モデルや出力が複雑化し,非専門家にとって分析が困難になるという課題がある.近年,自然言語での入出力が可能な大規模言語モデル(LLM)をシミュレーション分析に活用する試みが進んでいるが,LLM自身のミクロマクロリンク推論能力を定量的に検証した研究は限られている.本研究では6つのマクロ現象を対象として,LLMにどのようなデータを与えることで,ミクロマクロリンクを適切に説明できるかを検証した.その結果,Zero-shot条件下でも,複数回のODDプロトコルのみ与えた分析と,ODDプロトコル,シミュレーションモデルのコード,シミュレーションのログを与えた分析と,出力比較により全現象の説明が可能であることが示された.

10:05-10:20休憩
10:20-12:00 Session 4: ロング発表(2)
10:20
EVオーナー分布を考慮したEVCS配置最適化

ABSTRACT. 近年,電気自動車(EV)の販売を促進するためにEV充電ステーション(EVCS)の増設が求められている. そのため,EVオーナーの充電需要を考慮したEVCSの配置最適化が必要である. しかし,多くの先行研究ではEVオーナーの分布を市場占有率から単純に推定しており,実際の分布との乖離が生じる恐れがある. 本研究では,合成人口データを用いて実際のEVオーナー分布を模擬し,Simulated Annealing法によるEVCS配置最適化を行う. さらに,均一分布を仮定した場合との比較検証により,実分布を考慮することの有効性を評価する.

10:45
自治体横断的デマンド交通整備にむけた運行エリア探索手法の開発

ABSTRACT. 近年,地方部を中心に公共交通の縮小が進み,デマンド交通(DRT)が注目されているが,自治体単位での交通施策では実際の移動需要に対応できないという課題がある.本研究では,オープンデータのみを用いて自治体境界を越えたDRTの運行が成立しうるエリアを客観的に抽出する手法を提案する.この手法は実装コストが低く,全国スケールで適用可能な枠組みであるという長所を有する.現実のDRT運行状況と整合するようなパラメータ設定に基づいて,手法を全国の自治体に適用した結果,721のDRT運行可能エリアが抽出され,そのうち281のエリアは自治体を横断したものであった.この結果から,自治体横断的DRTの可能性と必要性が確認できたといえる.

11:10
公的制度利用判断におけるスティグマの影響と介入点の検討

ABSTRACT. 日本では様々な公的制度が整備されているにもかかわらず,支援を必要とする者が利用に至らない漏給問 題が生じている.本研究は,日本における各種公的制度の利用判断に関わるスティグマを対象とし,その形成およ び影響過程を踏まえたうえで,スティグマ軽減に有効な介入点を検討することを目的とした.スティグマ形成過 程と制度利用の意思決定過程を統合したエージェントベースモデルを構築し,福祉・医療・文化の制度分野にお いて,メディアから発信される情報を変化させた際の制度利用者数の変化をシミュレーションを行った.その結 果,報道極性に応じてスティグマ分布および補足率は分野を通じて体系的に変化した.また,スティグマは制度 利用意図が一定水準に到達しているものの確定していない層において制度利用判断と関連し得ることが示された. さらに,当該層は無作為に分布しているのではなく,年齢や所得水準といった個人属性に一定の偏りをもって存 在しており,今後スティグマ軽減に向けた介入施策を検討する際の知見となり得ることが期待される.

11:35
日本の公立学校における教員の労働時間短縮のための施策要因分析

ABSTRACT. 本研究は、日本の公立学校教員における長時間勤務の是正を目的とした施策の効果を、定量的に評価する ことを目的とする。全国の学校で実施されている働き方改革の取組を対象に因子分析を行い、勤務時間削減効果 を推計するとともに、政策手法の普及過程を考慮した動学モデルを用いて費用便益分析を実施した。分析の結果、 部活動指導、学級担任業務、教科指導、校務分掌といった教員の中核的業務に直接介入する施策は、中長期的に 見て比較的高い費用対効果を有することが明らかとなった。本研究は、業務負担軽減策を相対的に評価するため の定量的枠組みを提示するとともに、教育現場における政策立案および意思決定を支える実証的根拠を提供するものである。

14:00-15:20 Session 6A: ミドル発表(1A-前半)
14:00
市民なりきりゲームに向けた 市民の行動特性に基づくロールプレイング向けペルソナの生成

ABSTRACT. 自治体の政策立案では,多様なステークホルダー(SH)が施策の影響を理解し,納得感をもって意思決定することが求められている.エージェントベース社会シミュレーション(ABSS)はその支援手法として期待されるが,結果をSHが自分事として受け止めることは容易ではない.本研究は,ABSSの理解と納得感を高める手段として市民なりきりゲームに着目し,その成立を支えるペルソナ生成過程に焦点を当てる.特に,抽象的な市民像を,実在感と行動想像可能性を備えた人物像へと変換する方法論を検討する.対話型遺伝的アルゴリズムと生成AIを組み合わせ,人とアルゴリズムの役割分担による段階的生成手法を提案し,SHの判断を生成過程に組み込むことで,納得感を設計可能なものとして扱う点に本研究の意義がある.

14:20
SNS投稿日時及びイベントの時間的変遷による感情変動のテキスト解析

ABSTRACT. SNS上の感情が周期性に影響されることが指摘されている一方,政治イベント時の感情変動を周期性とトレンドの両面から分析した研究は少ない. 本研究では参議院議員選挙期間中の日本語X投稿を対象に, BERTによる感情スコア算出とSTL分解を用いて感情変動を分析し,ワードクラウドおよびLDAにより時間帯や政党別の投稿傾向を検討した. その結果,政治イベント期間中においても日内周期性が維持される一方で,選挙進行に対応したトレンド変動が観測され,感情変動が周期成分を基盤としてトレンド成分が重なる形で形成されていることが示唆された.

14:40
合成人口データへのBig Five割当手法の提案と妥当性検証

ABSTRACT. 合成人口データとは,統計情報に基づいて作成されている仮想個票データであり,年齢,性別,就業情報,世帯情報などを含み,社会シミュレーションに活用されている.一方,個人の意思決定のゆらぎを再現するには,統計属性に加えて心理的属性の付与が課題である. この課題に対する先行研究として,Big Fiveという性格特性を合成人口データへ割り当てる手法が提案されている.この手法では,参照調査における性別のみを考慮したBig Five割当を行っているため,実社会における行動の多様性を再現できない可能性がある. そこで本研究では,性別と年齢を考慮したBig Fiveの割当手法を提案し,再現性・妥当性を定量的に比較した.さらに外部データを用いて,Big Fiveに対応づけたライフスタイル指標と行動選択に関わる興味関心分野の関連を分析し,Big Fiveを用いた意思決定モデル設計の手掛かりを提示した.

15:00
実店舗小売における購買時間とユーザ属性を考慮した次点購買推薦手法の提案

ABSTRACT. 近年,スマートストアの普及により実店舗でも購買データの活用が進んでいる.しかし,既存の推薦手法はEC サイトを想定しており,実店舗特有の来店タイミングによる購買目的の変化(例:平日昼の簡便な購買,休日昼のまとめ買い)を考慮できていない.同一人物であっても,その時々の状況(コンテキスト)によって需要が大きく異なる点が実店舗の特徴である. そこで本研究では,分析より得られたコンテキストである購買時間情報とユーザ属性情報を既存の推薦モデルに追加情報として組み込むことで,実店舗の購買文脈を捉えた高精度な次点購買推薦手法を提案する.

14:00-15:20 Session 6B: ミドル発表(1B-前半)
14:00
地理情報システムおよび合成人口データを用いたATMの統廃合の影響分析

ABSTRACT. 日本経済を支える社会インフラとしての役割を担う金融機関は,コスト削減が共通課題として掲げられており,ATMの統廃合は,その有効な手段の1つとして期待できる.しかし,ATMの統廃合には多大なコストがかかる上に,銀行の信用性担保の観点からも慎重な判断が求められるため,統廃合の実施が与える影響を事前に検討する必要がある.本研究では,社会シミュレーション,GISおよび合成人口データを用いて,実社会のATMの利用状況を模倣したシミュレーションモデルを構築し,統廃合が与える影響を明らかにした.分析の結果,ATMの設置台数と設置箇所が利用者の待ち時間および利用回数に与える影響を定量的に評価できることを示した.

14:20
持続可能な観光実現に向けたABSSにおける位置情報データを用いた観光客エージェントと混雑影響モデルの改良

ABSTRACT. オーバーツーリズムの影響や低い労働生産性などの観光産業の課題に対し,文化や地域経済へ配慮しつつ,観光客や地域の需要に適合した持続可能な観光産業の実現が求められている.その実現には多様なステークホルダの行動特性を考慮することが重要である.本発表では,観光客の属性と位置情報データに基づいて混雑影響を組み込み改良したエージェント行動モデルを構築するとともに,エージェントベース社会シミュレーション(ABSS)を用いた行動特性を評価する.

14:40
大学教育における教育内容の重点化が職業別需給構造に与える影響-エージェントベース・モデルによる分析-

ABSTRACT. 近年,高等教育と労働市場成果の関係が広く議論されているが,教育と職業のミスマッチ研究の多くは事 後的な統計分析に依拠しており,教育が職業別労働供給構造の形成過程に及ぼす動的影響は十分に解明されてい ない.本研究では,高等教育における教育内容の重点化の違いが,卒業生の職業選択行動を通じて職業別労働供 給構造に与える影響を検討する.そのため,教育属性を持つ求職者エージェントが教育適合度や価値観に基づい て職業を選択するエージェントベースモデルを構築した.現行の教育状況を反映したシナリオ,専門能力重視シ ナリオ,汎用能力重視シナリオの 3 条件を設定し,職業別充足率の分布を比較分析した.その結果,いずれのシ ナリオにおいても充足率は時間とともに安定水準へ収束し,長期的な労働供給構造が形成されることが確認され た.教育内容の重点化は安定後の充足率水準に影響を与える一方,職業間の順位構造は大きく変化しないことが 示された.これらの結果は,労働供給構造が教育内容のみならず,就業志向や制度的要因といった構造的要因に も規定される可能性を示唆している.

15:00
世帯属性と行動特性を考慮した市区町村別スポーツ消費額の推計

ABSTRACT. 近年,スポーツによる地方創生が推進されているが,その経済的影響を測定するための指標は国レベルや大規模イベントに限られており,地域ごとの詳細な市場規模は不明な点が多い.本研究では,地域主導のスポーツ政策策定に資する基礎データを提供することを目的とし,オープンデータを用いて日本全国1,717市区町村のスポーツ消費額を推計した.その結果,スポーツ消費市場の総額は人口規模に強く依存する一方で,世帯あたりの消費額には都市規模によらない地域固有の分散が存在することが確認された.本推計によりミクロな視点から市場規模が定量化され,各自治体の特性に応じたスポーツエコシステム構築の方向性が示唆された.

15:20-15:25休憩
15:25-16:25 Session 7A: ミドル発表(1A-後半)
15:25
機械学習モデルによる行動の連続性を考慮した統計ベースの生活行動生成

ABSTRACT. 既存の生活行動生成モデルによる生成データに関して,コミュニティ全体としては統計に一致するものの,個々のエージェントの活動を観察すると,頻繁な行動の切り替えが発生していることがあるという問題が存在する.この問題を解決し,各地域ごとの特徴を反映した生活行動生成を行うため,社会生活基本調査を用いたSAによる手法を提案したが,この手法ではデータ生成に時間がかかり過ぎることがわかった.そこで本研究では,機械学習による組み合わせ最適化手法をこの問題に応用し,生成にかかる時間を大幅に短縮することを目指す.

15:45
ご当地VTuberの印象ギャップが視聴者の印象形成と行動意向に及ぼす影響の解析

ABSTRACT. 本研究は,地方商店街活性化に資する「ご当地VTuber」に着目し,アバターの視覚・聴覚情報の整合性(印象ギャップ)が受容性に与える影響を工学的に解析した.まず実験室実験によりV-D軸から性格5因子への写像モデルを構築し,期待と実測の乖離を幾何学的距離として定式化した.解析の結果,ギャップの増大は好意度を低下させるリスクとなることが判明した.一方,実際の商店街における実証実験では,法被等の役割提示が認知負荷を緩和し,来街者の訪問意向を有意に向上させることを明らかにした.混合効果モデルで示された巨大な個人差を考慮し,集団への底上げと個人最適化を統合した多層的な設計指針を提案する.

16:05
未来志向のモデリングを利用した社会変革型の事業戦略考案のためのワークショップの方法論の提案

ABSTRACT. 近年,企業にはESG経営が求められるが,環境と社会に関する社会課題は一企業の内部での解決は困難であるため,社会変革を狙った事業が必要になる.企業の一般社員に対し,社会課題の理解から事業戦略の考案までを行う,単発のWSを設計するための方法論を開発し,そのニーズを特定する.方法論は未来志向のモデリングに着目し,長期的な社会展開への理解や発展の方向性を決定し,そこから自社の強みが活きる事業戦略を実現するものとした.ニーズ調査の結果,方法論の未来志向という考え方へニーズがあることや,方法論が有効となる対象者や企業内の課題の特定,改善点が確認された.

15:25-16:25 Session 7B: ミドル発表(1B-後半)
15:25
菜食選択の普及を対象としたエージェントベースモデルの開発:日米蘭における介入パッケージの効果分析

ABSTRACT. 食事選択は,習慣や社会規範の影響を伴う複雑な意思決定である.しかし,その特徴を包括的に捉え,複数の介入策の組み合わせ効果を長期的・動的に探索する手法は確立していない.本研究では,行動科学の理論を組み合わせ,菜食選択の普及に関するエージェントベースモデルを開発した.日本・米国・オランダの3カ国を対象とした選択実験および心理尺度を含む質問票調査(N=3,018)に基づきパラメータを設定した上で,キャンペーン,ブースト,ナッジ,インセンティブ,製品改善,規制,全介入策の7種類の介入パッケージに関するシミュレーション実験を行った.その結果,意思決定の異なる段階アプローチする介入策を組み合わせることの有効性が示唆された.

15:45
社会シミュレーションの理解促進に向けた表現方法の分析

ABSTRACT. 社会シミュレーションでは,問題状況やシナリオといった前提情報と,それに基づく結果が複雑な文章や表,図などで表現されている.結果の可視化に関しては研究が進んでいるが,統計的なグラフ表現に偏っており,非専門家にとっては直感的に理解しやすい表現方法とは言い難い.また,問題状況やシナリオといった前提情報の可視化については,結果の可視化に比べて十分な検討がされていない.そこで本研究では,社会シミュレーションの「問題状況」「シナリオ」「結果」について,多様な表現手法を作成し,非専門家を対象とした実験を通じて理解度を評価することで,効果的な可視化手法を明らかにし,理解の促進を図ることを目的とする.

16:05
GPGPUを利用可能なエージェントシミュレーション記述系の設計とOpenCLを用いた実装

ABSTRACT. 本論文では,GPGPUを用いたエージェントベースシミュレーション(ABS)を記述可能な,フレームワークを提案する.開発者は,Python言語によってABSを記述するために,テストやデバッグをインタプリタ上で行う.実験はOpenCLを用いたGPU上での並列プログラムに変換した上で行えるため,効率的な開発が可能となる.本フレームワークを利用した場合と逐次処理のC++言語によるABS実装の実行時間を比較した結果,すべてのモデルにおいて数倍から数十倍の高速化効果が得られた.本論文では,さらに 一般的なGPUの最適化処理をABSモデルに適用する手法を示すとともに,典型的なモデルに最適化を適用した場合の性能について調査し,適用可能性および有効性を確認した.

16:25-16:40休憩
16:40-18:00 Session 8A: ミドル発表(2A-前半)
16:40
救急到達時間と影響人口に基づく橋梁重要度評価

ABSTRACT. 本研究は,鹿児島市の橋梁を対象に,市内 17 箇所の救急拠点の統合到達圏に基づく橋梁重要度評価手法 を提案する.単純な影響人口評価に加え,年齢層別の救急搬送需要と到達時間の緊急性を考慮した重み付き影響 人口評価を実施し,両手法の比較により橋梁の維持管理・統廃合の優先順位付けに資する定量的評価を提供する.

17:00
多様な被害想定の生成を可能とする 避難行動シミュレーションモデルの構築-防災訓練での利用を目指して-

ABSTRACT. 本研究は,建物被害およびライフライン途絶などの被災状況の変動に応じて,避難者の発生や移動が連動して変化する過程を表現可能な避難行動シミュレーションを構築した.熊本地震を対象に100回実行し,想定の分岐と避難所逼迫の表現可能性を示した.これにより,単一の推計値提示に留まらない被害状況の作成を可能とした.

17:20
スタジアムにおけるインセンティブを用いた分散退場施策の評価

ABSTRACT. スタジアム等の大規模施設では数万人の一斉移動による混雑が常態化しており,群集事故防止や顧客満足度の観点から対策は必要である.従来の規制退場などの強制的な指示は確実性が高い反面,観客に長時間の待機や行動制約を強いるため,不満やストレスを招く恐れがある.そこで近年,観客の意思を尊重し,自発的な行動変容を促すインセンティブを用いた分散退場施策が注目されている.本研究では,このインセンティブ施策の有効性を検証することを目的とし,エージェントベースモデル(ABM)を用いたシミュレーションモデルを構築し,インセンティブの「待機時間」や「金額」の設定が退場行動および混雑状況に与える影響を定量的に評価した.

17:40
NKモデルのシミュレーション設計における適応度正規化の影響

ABSTRACT. 本研究は,NKモデルにおける適応度の正規化がシミュレーション設計と理論解釈に与える影響を検討した.NとKの組合せごとに1万回の適応地形生成とサーチを行い,適応度を正規化しないケース,最大値で正規化するケース,最小値を0に最大値を1に正規化するケースを比較した.正規化を行わない場合,Kに対して適応度が逆U字型となる一方,正規化を行った場合,適応度は一貫して低下した.これは正規化によって,複雑性の増大に伴う適応地形の隆起効果がなくなり,探索の困難性のみが残るためである.最後に,研究目的別に指標(絶対的適応度(正規化なし)/相対的適応度(正規化あり))を適切に選択し,グローバルピーク到達率を併記する指針を提案する.

16:40-18:00 Session 8B: ミドル発表(2B-前半)
Chair:
16:40
地方自治体における政策決定プロセスの構造分析 ― 実組織内部における判断の連鎖に着目して ―

ABSTRACT. 本研究は,福岡県糸島市における駐車場有料化政策を事例として,地方自治体内部における政策決定プロセスの内実を明らかにすることを目的とする.市職員へのインタビュー調査を基に,戈木クレイグヒル版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った.その結果,政策決定は明確な正解や判断基準が与えられた線形的な過程ではなく,情報の不足や不確実性の中で,試行錯誤と再検討を繰り返しながら進行する循環的なプロセスとして構造化されることが示された.さらに,同一自治体内の複数事例の比較を通じて,こうした政策決定プロセスの妥当性を検討した.本研究は,政策決定プロセスの構造を可視化することで,AIやデジタル技術の社会実装における支援局面を検討するための基盤を提供する.

17:00
ABSSによる地域コミュニティ活性化施策の政策立案支援 — 平常時の交流機会介入が避難行動に及ぼす影響分析 —

ABSTRACT. 都市防災力の向上には,災害時の共助を担う地域コミュニティの維持・活性化が重要であるが,平常時の施策が住民間のつながりをどのように変化させ,その変化が災害時の認知・意思決定を介して避難行動にどのように反映されるかは,実地で反復的に検証しにくい.そこで本研究では,防護動機理論に基づく住民意思決定,関係強度付き社会ネットワーク,洪水ハザード進展を統合したエージェントベース社会シミュレーションを構築し,平常時の施策シナリオ(交流機会の付与)を政策介入として与えた比較実験を行う.その結果から,平常時施策がネットワークを介して災害時行動に波及するメカニズムを整理し,政策検討における論点整理を支援する枠組の提示を目指す.

17:20
市街地活性化に向けたエージェントベース回遊行動モデルの評価

ABSTRACT. 人口減少・少子高齢化が進む地方都市では,地域活力回復に向け,市街地における回遊行動促進のための取り組みが注目されている.我々は,エージェントベースモデリングを用いた回遊行動促進のための都市計画支援の検討を進めている.具体的には,対象都市の市民をエージェントとし,統計データや人流ビッグデータから得られた知見を反映した行動選択アルゴリズムをモデルに組み込んだ.本稿では,対象都市における市街地活性化に向け,回遊行動モデルを拡張するとともに,活性化施策に対するシナリオの適用に向けた基礎検討を行う.

17:40
現実区画形状と不整形地評価を考慮した小規模連鎖型区画再編事業の利得分析

ABSTRACT. 近年,建築基準法を満たさない狭い道路に面した空き家の解決策として小規模連鎖型区画再編事業が注目されている.この事業は,空き家周辺の道路や隣接地を一体として小規模に連鎖して整備を行うことで,低未利用土地の解消と有効活用を目指すものである.しかし,扱う土地の特性や維持費の発生等により事業採算性が不確実なため,採算性確保と住環境改善の両立が課題となっている.本研究では,社会シミュレーションを用いて,狭隘道路や不整形地の改善が長期的な事業利得にもたらす影響を明らかにした.分析の結果,道路拡幅や土地の整形化は事業利得に正の影響を及ぼし,双方の悪条件を対象とする場合に,1件当たりの価格と狭隘道路・不整形地減少率が最大化することが示された.

18:00-18:05休憩
18:05-19:05 Session 9A: ミドル発表(2A-後半)
18:05
交換代数に基づく市場スケール会計シミュレーション・パッケージの提案

ABSTRACT. This paper proposes an accounting simulation package for market-scale economic simulation based on Exchange Algebra. Motivated by the rapid standardization and digitization of accounting transactions (e.g., e-invoices and PEPPOL-compatible formats) and the growing interest in Real-Time Economy (RTE) analytics, we focus on how transaction-level accounting microdata can be processed and connected to macro-level simulation in a principled and scalable manner. The proposed package, implemented in the purely functional language Haskell, integrates (i) exchange-algebra-based bookkeeping operations, (ii) agent-based simulation utilities for multi-entity economies, and (iii) output and visualization tools. Exchange Algebra provides a uniform algebraic representation that embeds account attributes and transaction metadata, addressing limitations of conventional table-based accounting representations for large-scale simulations, such as the debit/credit asymmetry, unstructured descriptions, and the lack of support for multi-entity interactions. We demonstrate how repeated purchase–sales events can be expressed as compact state updates and executed efficiently, and present a simulation example that extracts time-series dynamics of inventories and gross profit under different production settings. The package offers a computational foundation for connecting standardized accounting transactions to market-scale simulations.

18:25
日本企業のESGスコアと企業財務の関係性に関する実証分析

ABSTRACT. 本研究は,日本企業におけるESGスコアと企業財務の関係を重回帰分析により検証した.FTSE RussellのESG総合スコアに,EDINETの財務諸表データ,株価(統合報告書公開時点の期末株価),東証業種分類を統合し,2022,2023,2025年度の280社(615観測)を分析対象とした.産業・年度ダミーを用いて統制し,AICに基づく後退ステップワイズでモデル選択を行った.結果として,ESGスコアはROAに正,総資産回転率および売上高経常利益率に負の有意な影響を示した一方,PBRを含む市場ベース指標では有意な関係が確認されなかった.

18:45
システム科学の基礎理念ー目的を含む領域透過的モデルの科学

ABSTRACT. 本論では、一般システム理論を基礎とするさまざまなシステム科学の発展の中で基盤となる、同型性と価値や目的、人工物などの諸概念を、物理科学とその基盤としての実在(Reality)とより広義の観念に関する存在(Existence)などについて、社会科学や科学哲学の認識論的概念と比較することで、物理科学とも社会科学とも異なる科学像について論じる。

18:05-19:05 Session 9B: ミドル発表(2B-後半)
Chair:
18:05
社会受容性に基づく選択行動モデル推定の新手法-社会シミュレーション対象地域の変更の容易化を目指して

ABSTRACT. 交通空白地帯の解消のためには社会的または心理的抵抗感が伴うモビリティシェアリングサービスが注目されており,社会受容性を考慮した事前評価による施策導入の重要性が高まっている.しかし,社会受容性を事前評価するためには高コストなアンケート調査が必須であり,事業者や自治体による初期検討の大きなボトルネックと成り得る.本報告では,オープンデータ由来のデータからアンケート依存項目を予測することで,未調査地域に相当するデータを生成する手法を提案し,そのデータに基づく社会受容性モデル(心理要因+選択行動モデル)で,地域性での推定結果の違いや予測精度の評価を試みた.ライドシェアリングに関して全国対象1,014件のアンケートデータを用いた交差検証では,提案手法の予測精度は既存手法と同じ程度であった.また,提案手法は地域性の違いを反映できる傾向を確認した.

18:25
心理的受容を考慮した移動交通手段選択モデルの構築と ライドシェア制度の特性評価

ABSTRACT. 都市交通課題の解決策として注目されるライドシェア制度に対し,我々はABSSを活用したライドシェア制度設計支援に関する研究を進めている.本稿では,新製品の普及の仕方を示すマーケティング理論であるイノベータ理論を用いて,心理的受容を考慮した行動選択モデルを構築し,ライドシェア制度に関する交通施策を導入した際の普及過程や地域交通に与える影響について,新潟県加茂市を対象としたエージェントベース社会シミュレーションにより分析する.