SOCSYS038: THE 38TH SYMPOSIUM OF TECHNICAL COMMITTEE ON SOCIAL SYSTEMS
PROGRAM FOR TUESDAY, SEPTEMBER 2ND
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13:40-15:00 Session 2A: 構想発表1-A

Room: 1311

13:40
駐車場料金設定支援とLLMによる結果解釈を可能にするシミュレーションシステムに向けて

ABSTRACT. 地方自治体における市営駐車場の有料化は、料金設定によって様々な影響が生じるため、適切な料金を設定することが難しい。一方で、有料化による収益は自治体財政にとって重要である。しかし、料金設定が駐車場利用率や周辺交通に与える影響を事前に予測することは困難であり、根拠に基づいた政策判断の障害となっている。本研究では、エージェントベース・シミュレーション(ABM)を用いて料金設定に伴う利用者行動や交通環境の変化を予測するとともに、大規模言語モデル(LLM)を活用して非専門家でも結果を容易に解釈できるようにし、自治体の料金設定を支援するシミュレーションシステムの構築を目指す。

13:50
多目的蟻コロニー最適化による都市物流経路探索モデルの構築に向けて

ABSTRACT. 運転手不足や輸送コストの高騰といった都市物流における課題解決を目的としている. この目的を達成するため, 多目的蟻コロニー最適化に基づく経路探索モデルを構築する. モデル設計においては, 「時間要因」「道路幅員に基づく安全性」「道路階層コスト」の三つの評価指標を導入し, 効率性, 安全性, および構造合理性を同時に考慮した経路最適化を実現する. これにより, 現実的な最適経路選択の支援を提供することを目指すものである.

14:00
社会的合意の形成に向けたステークホルダー間の意図の把握

ABSTRACT. 社会的合意形成は,公共事業計画において多様なステークホルダーの意図(関心・懸念・価値等)が交錯し把握が難しいため,合意が停滞しやすい.自治体は上位計画・法令・補助要件に拘束され,賛否両派は条件次第で立場が揺れる.その結果,遅延・訴訟・コスト増・信頼低下が生じうる.そのため,共事業計画における合意形成では,各主体が合意可能な公共事業計画を具体的に設計する必要がある.既往研究は,争点の上位化,段階導入・試行、補償、事実・制度知識の共有,可視化が対立緩和と受容性向上に寄与する一方で,意図を項目化し計画と体系的に照合し,効果を定量検証する手順や事例横断の統合枠組は未整備である.目的は、意図を項目化して収集し,計画項目(目的・効果・費用・影響・代替案)と照合して意思決定に反映する.今後は意図を定義し情報調査・ゲーミングとシミュレーションで合意の推移と到達度を評価する.

14:10
社会シミュレーションによる避難行動時の外国人観光客への情報提供の検討

ABSTRACT. 訪日外国人観光客は年々増加している一方で,防災対策は十分とはいえず,災害発生時には言語や文化の違いによる情報伝達の遅延が問題となっている.効果的な情報伝達を実現するためには,事前に誘導人員の配置や使用言語を検討する必要がある.本研究では,道路幅に基づく混雑状況と観光地の労働者による誘導を考慮し,これらの要因が避難行動全体に及ぼす影響を社会シミュレーションを用いて明らかにすることで,効果的な避難計画に貢献することを目指す.

14:20
世帯構成と行動特性に基づく鉄道輸送需要の分析

ABSTRACT. 近年、地方鉄道では路線の廃止や運営形態の見直しが進められており、輸送需要の分析と要因把握が重要となっている。既存研究では「沿線人口」「高齢化率」「自動車台数」などを変数とした分析が行われてきたが、必ずしも統計的に有意な結果は得られていない。本研究では、西日本旅客鉄道株式会社が運営する輸送密度1,000人未満区を対象とし、沿線人口を市区町村単位ではなく居住地座標と駅座標から推計する。さらに「通勤・通学人口」「子育て世帯数」「高齢者単身世帯数」「労働力人口比率」といった指標を加えた対数線形モデルを用いた重回帰分析により、利用者の行動特性や属性構造を反映し、従来のモデルでは説明しきれなかった鉄道利用の実態の解明を目指す。

14:30
生成AIによるシステム工学的意思決定支援の検討

ABSTRACT. 近年,生成AIの利用が拡大することで多様な領域での応用が進んでおり,企画設計や意思決定でも活用が行われている.生成AIを用いることで専門知識の有無に関わらず,多様な企画等を瞬時に作ることができる反面,そうして作成されたものが目的との整合性や構成の論理性を考慮できているか不明瞭である.そこで,本研究では,システム工学的意思決定手法を活用することで,目的との整合性を保ちながら,最適な企画設計を論理的に導く枠組みをつくる.そして,企画に対して,構成案の発案・構造化・計画までを一貫して自動化する支援枠組みの構築を目指す.

14:40
クロスプラットフォーム環境における誤情報拡散のダイナミクス分析

ABSTRACT. 本研究は,オープン型 SNS とクローズド型 IM を接続した二層ネットワークモデルを構築し, クロスプラットフォーム環境における誤情報拡散の特徴を分析することを目的とする. 誤情報拡散に影響を与えるパラメータを操作し, 理論解析とシミュレーションを組み合わせることで, 拡散の臨界条件や最終規模に与える影響を明らかにすることを目指す. 本研究により, 削除戦略の有効性や情報の持続性に関する理論的示唆が得られると期待される.

14:50
平行トレンド仮定不成立下におけるエージェントベースシミュレーションを用いた因果推論手法の提案

ABSTRACT. 因果推論は,対象を施策を施す群と施さない群に分けることで施策の効果を定量的に測定する手法である.先行研究では,相互作用の生じる事象に対する因果推論の手法として,施策の効果を直接効果と間接効果に分ける方法が提案されている.しかし,この枠組みを人々が自身の特性に基づき施策を自己選択する現実的な状況下では,平行トレンド仮定が成立しないという課題が生じる.この仮定は「もし施策がなければ,両群の結果は同じように推移したはずだ」というもので,因果効果を測る上での比較の妥当性を保証するものである.本研究では,この問題を解決するため,エージェントベースシミュレーション(ABS)によって相互作用,自己選択のメカニズムをモデル化し,バイアスのない反実仮想を生成することで,平行トレンド仮定不成立下においても施策の直接効果と間接効果を分離・定量化する,新たな分析手法を提案する.

13:40-15:00 Session 2B: 構想発表1-B

Room: 1310

Chair:
13:40
地理情報システムと合成人口データを用いたATMの統廃合の影響の検討

ABSTRACT. 現在,ATM設置台数の減少とキャッシュレス決済の普及を背景に,経営効率化を目的としたATMの統廃合は,今後さらに加速すると考えられる.しかし,統廃合は試験的に実施することが困難なため,シミュレーション等を用いてその影響を事前に評価および検討するアプローチが求められる.そこで本研究では,地理情報システムおよび合成人口データを用いた統廃合に関するシミュレーションを行い,各銀行の統廃合の意思決定に貢献することを目指す.

13:50
現実区画形状と不整形地評価を考慮した小規模連鎖型区画再編事業の検討

ABSTRACT. 近年,建築基準法を満たさない狭い道路に面した空き家の解決策として小規模連鎖型区画再編事業が注目されている.この事業は,空き家周辺の道路や隣接地を一体として小規模に連鎖して整備を行うことで,低未利用土地の解消と有効活用を目指すものであるが,扱う土地の特性や維持費の発生等により事業採算性が不確実である.その為,採算性確保と住環境改善の両立が課題となっている.本研究では,社会シミュレーションを用いて,道路の拡幅や土地形状の改善が長期的な事業利得にもたらす影響を明らかにし,事業採算性の見込みを検討する.

14:00
SPDで行われる市職員なりきりゲームにおける共創の評価方法の提案

ABSTRACT. 近年の政策決定に対するステークホルダーの納得を得るのが困難であるという課題に対し,デジタル社会実験(SPD)のプロジェクトが進行中である.SPDでは,ステークホルダーがゲーミングシミュレーションなどのワークショップ(WS)を通して政策を体験・議論する.本研究は,SPDにおける共創プロセスとして位置づけられるステークホルダーとのWSに着目し,ステークホルダーが自分ごととして関与し,共創が行われているかを評価することを目的とする.具体的には,現在SPDプロジェクトが進行している加茂市の事例において,市職員なりきりゲームに着目し,共創が行われているかどうかの評価指標の1つとしてロジックモデルの構造類似度に着目する.

14:10
就農者が持続的に稼いでいくための仕組みの構築

ABSTRACT. 現状の日本農業では、新規参入者や農地面積の減少などにより引き起こされる生産力の減少が問題視されている。新規参入者が入らない要因として収益・資金面での課題があるため、本研究において、収入を改善する収益最大化モデルの構築を行い、提案までを目的と置く。

14:20
差分の差法(DiD)を用いた小売店におけるデジタルサイネージ効果の分析に向けて

ABSTRACT. 近年,小売業界の実店舗においてデジタルサイネージ(DS)の導入が進展している.DSは購買行動に影響を及ぼし,特に衝動買いの促進が指摘されているが,その影響を定量的に捉えることは困難である.本研究では,協力小売店から提供された詳細な購買履歴データと,DSの掲載履歴・設置場所に関するデータを統合し,差分の差分法(DiD)による分析を行う.DiDを適用することで,地域文化や全店一律クーポンといった外生的要因を統制し,DSが購買行動に及ぼす波及効果を厳密に推定することが可能であると考える.本研究により,DS由来の非計画購買を含む購買行動への波及的影響を実証的に示すことを目的とする.

14:30
性格特性を組み込んだ意思決定モデルによるエージェントベースシミュレーションの妥当性向上

ABSTRACT. 本研究は,エージェントベースシミュレーションにおける意思決定モデルの妥当性向上を目的とする.従来のモデルでは,各エージェントの行動を調査結果に基づく確率で設定していたため,個人差や行動のゆらぎを十分に再現できないという課題がある.そこで本研究では,合成人口データを用いた各エージェントにビッグ・ファイブ・パーソナリティに基づく性格特性を割り当て,その特性を反映した意思決定モデルを設計する.

14:40
地域に密着したマーケティング・ナラティブの生成方法の開発に向けて

ABSTRACT. 近年、地域密着型小売店ではデータ活用による顧客理解が重要となっている。コンビニや大手チェーンとの競争が激化する中、地域ベーカリーにとって素材へのこだわりや人との関係といった「数値化しにくい価値」をどう把握し活かすかが課題である。従来のアンケートや販売記録では属性や行動は捉えられても、購買動機や気持ちまでは難しい。本研究はペルソナが語るナラティブを生成し、顧客の価値観や感情に迫る仮説的知見を得て、店舗改善や商品開発に活かす方法を提案する。

14:50
仮想接地における接地可能性を高める要因抽出と回答者選定手法の構築に向けて
PRESENTER: 瑛斗 小田

ABSTRACT. エージェントベース社会シミュレーションは,その性質から,近年意思決定支援への活用が注目されている.その構築には,人々の行動を再現し得る妥当なデータが不可欠であり,その取得手法の一つに仮想接地がある.仮想接地とは,実データが得られない状況下で当事者に仮想空間で意思決定を行わせデータを生成する手法である.しかし,当事者からのみでは十分なサンプルを確保できない場合,当事者以外から妥当なデータを得られるか,またその選定方法が課題である.そこで本研究は,WEBアンケート上で行動モデルを対象とした実験を行い,類似経験や属性を踏まえて接地可能性を高める要因を抽出し,妥当な回答者を選定する手法の構築を目指す.

13:40-15:00 Session 2C: 構想発表1-C

Room: 1309

13:40
生成AIと専門家協働によるケーススタディ教材開発に向けて

ABSTRACT. 本研究は,生成AIと専門家の協働により,教育用ケーススタディ教材を効率的かつ柔軟に生成する手法を提案する.従来,教材開発には多大な労力と専門知識が必要とされ,学習者の背景や理解度の違いにより効果に差が生じ,高品質な教材提供は困難だった.本手法では,教育目標に基づき専門家が情報を整理し,生成AIが教材を作成する.さらにAIによる整合性確認と専門家のレビューを組み合わせることで内容を精緻化し,教材の品質を確保する.特にDX人材育成を目的とするCIOアカデミーでの教材開発を対象とし,学習者の進捗に応じて段階的に情報を提示できる形式の構築を目指し,実際に生成した教材を用いた評価を行う予定である.

13:50
商品の構成材料を用いた商品分類による解釈可能な新商品の売上予測手法の開発に向けて

ABSTRACT. 新商品開発時は製造者の経験則に基づいて材料の組み合わせを判断して新商品開発を行っている.そのため,売上に影響のある材料を製造者が解釈可能な売上予測手法は重要であると考える.一方で,新商品の投入頻度の高さから長期的な販売履歴の蓄積が困難であるとともにデータのスパース性が発生する現状にある.ここで,データのスパース性とは本質的特徴を決定する要素が少ないことを指す.本研究では商品の構成材料に着目し,商品の構成材料が同じであれば類似した商品特性や売上が期待できると考え,類似している構成材料を解釈可能にし,これらに基づく商品群からスパース性を改善する新商品の売上予測手法の開発を目指す.

14:00
不確実性下における遺伝的アルゴリズムを用いたエフェクチュエーションの意思決定モデル

ABSTRACT. 近年,AIなどのデジタル技術の発達を筆頭に,新型コロナウイルス感染症や異常気象,国際情勢の変化などによる不確実性が高まっている.このような環境に起業家が適応し,新規ビジネスを立ち上げる中で見られる意思決定のパターンをサラス・サラスバシー博士がエフェクチュエーションとして提唱し,5つの原則にまとめた.また,先行研究からその適応のプロセスが遺伝的アルゴリズムと相似点があり,エフェクチュエーションをモデルとして表現するためのツールになる可能性がある.そこで本研究では遺伝的アルゴリズムを用いてエフェクチュエーションの意思決定モデルを構築し,不確実性下での意思決定に関する示唆を得る.

14:10
実個票データとの比較による合成人口データの有用性と秘匿性の評価

ABSTRACT. 本研究は,合成人口データの秘匿性と有用性を実個票データとの比較により実証的に評価することを目的とする.従来の研究では仮想都市データを用いた検証が中心であり,実際の都市のデータや人口規模を踏まえた評価は十分ではなかった.本研究では,統計センターのオンサイト利用により国勢調査個票を参照し,属性の組合せに基づく識別リスクや世帯内年齢差の分布や構成員対応不能世帯数を指標に有用性を評価する.これらの評価をすることで,合成人口データの安全かつ効果的な活用に向けた指針を提示する.この成果は,統計データの公開と利活用の両立に関する実務的指針を与え,社会シミュレーションや地域計画研究への応用にも資することが期待される.

14:20
社会シミュレーションの理解促進に向けた表現方法の検討

ABSTRACT. 社会シミュレーションでは,問題状況やシナリオといった前提情報と,それに基づく結果が複雑な文章や表,図などで表現されている.結果の可視化に関しては研究が進んでいる一方,前提情報である問題状況やシナリオの可視化手法は十分に検討されていない.そこで本研究では,「問題状況」「シナリオ」「結果」の3段階を対象に,従来の複雑な表現に代わる多様な表現方法による可視化を試み,非専門家にとっての理解促進に有効な表現方法を検討する.

14:30
LLM駆動型社会シミュレーションに向けた合成人口データへの個性の割り当て手法の構想

ABSTRACT. 近年,エージェントに大規模言語モデル(LLM)の技術を組み合わせたLLM駆動型社会シミュレーションの研究が行われている.それらの研究では,LLM駆動型のエージェントに個性を付与する際,個人の属性と個性の関係性や,現実社会での多様な分布を考慮できていない課題がある.そこで本研究では,現実の人口統計データに基づいて作成された合成人口データに対し,性格や価値観といった個性を適切に割り当てる手法を検討する.これにより,現実社会の個性分布や人口構成に基づいたLLM駆動型社会シミュレーションが可能になる.

14:40
エージェントベース・モデリングによる最後通牒ゲームの研究構想 — 資源量・行動選好の異質性と分配構造の創発 —

ABSTRACT. 本研究の目的は、エージェント・ベース・モデリング(ABM)を用いて、最後通牒ゲームにおける資源量や行動選好の異質性が、繰り返しの相互作用を通じてどのように集団レベルの分配構造に影響を及ぼすのかを明らかにすることである。現実社会の「貧富格差」を直接再現するのではなく、資源を抽象概念として扱い、提案・受容という交渉過程を最後通牒ゲームとして定式化する。これにより、個人の選好が資源の蓄積や役割分担にどのように反映され、不平等な分配構造の形成につながるかを分析する。先行研究では、社会的地位や文化的背景が不公平提案の受容に影響を与えることが報告されており1,2,3)、本研究はそれらを踏まえ、資源差異と戦略行動の関係をシミュレーションにより検証する。

14:50
都市再開発における公共性評価の制度設計に関する研究

ABSTRACT. 日本の都市再開発は老朽化市街地の更新や土地利用の高度化を通じ都市機能を再生する政策手段として展開されてきたが、公共貢献は形式的整備にとどまり、公共性確保が課題となっている。関連研究を整理するためシステマティックレビューを行い、J-STAGEから3,942件を抽出し除外条件を設定した結果、47件を分析対象とした。先行研究では公開空地整備の偏在や評価枠組みの不備、多者協議の制度化不足、地方都市における公共支援と公共性確保の関係性の検討不足が指摘されている。本研究は都市再生特別地区を対象に、制度分析・テキストマイニングで公共貢献要素を抽出し、事例統計分析と調査を通じ指標体系と運用基準を提案する。成果として公共性を測定・検証する評価システムを構築し、学術的には新たな分析枠組みを、社会的には自治体が活用可能なチェックリストを提供する。

15:20-16:40 Session 3A: 構想発表2-A

Room: 1311

15:20
防災意識の長期的維持に向けた地域社会の特性と介入策の影響分析

ABSTRACT. 近年、日本では自然災害が頻発する中で、住民の防災意識は一時的に高まっても時間とともに風化しやすいことが指摘されている。先行研究では教育的介入や個人特性の影響が報告されているが、防災意識の長期的維持や地域の社会的背景との関連は十分に明らかでない。本研究は、地域社会への関与度や移住者の定着といったコミュニティ特性が防災意識に及ぼす影響を解明し、それに基づく介入策を設計・実証することを目的とする。方法として、地域データを用いて社会的背景を指標化し、統計的手法により防災意識との関連を分析するとともに、介入を実施し、アンケートやインタビュー調査によりその効果を評価する。

15:30
コミュニケーションが労働生産性に与える影響

ABSTRACT. コロナ禍でリモートワークが拡大した結果、企業は従業員のコミュニケーション不足による生産性低下を理由に対面出社を増やしたが、従業員はリモートを望む傾向が強く、その働き方のギャップから抵抗や離職が相次ぎ、生産性や経済、QOLの低下に繋がっており、その背景には対面が必要となる従業員の属性や業務内容、状況が明確にされていないことがある。先行研究では、コミュニケーションが労働生産性に与える影響を個別具体的に明らかにしたものは見られるが、網羅的に分析した研究は見られなかった。そこで本研究では、働き方のシチュエーションによって、労働生産性を向上させるコミュニケーションの種類、従業員属性、勤務形態、話し方・目線などの測定可能な行動指標といった構成要素を体系的に明らかにし、その影響の検証を行うことを目的とする。

15:40
EBPMと経験則を包含した施策形成のフレームワークの構築

ABSTRACT. 「Evidence-Based Policy Making(以下、EBPM)」は、自治体施策におけるPDCAの限界や環境変化への対応策として注目されている。しかし現状では、政策立案がトップダウンや経験則に依存し、合理的根拠や評価指標の不足が課題となっている。さらに、都市施策は多様なステークホルダーの利害が複雑に絡み合うため、効果予測や代替案の比較が困難である。 先行研究では、シナリオ分析やシミュレーション、対話型手法など多様な立案アプローチが提示されているが、それらを統合・体系化し、立案・評価プロセスに反映する方法論は未解明である。また、評価段階においても「Check」から「Act」への接続が弱く、質的データと定量的指標を組み合わせた改善サイクルの設計は十分に確立されていない。 本研究は、経験則の利点を活かしつつEBPMを包含した施策形成フレームワークを構築することを目的とする。具体的には、統計や予測モデル、シミュレーション、住民対話の知見といった複数のエビデンスを接続し、ステークホルダー協働による政策立案と評価の仕組みを設計・検証することで、合理性と実践性を両立する行政運営に貢献する。

15:50
救急到達時間と影響人口に基づく橋梁重要度評価

ABSTRACT. 本研究は,鹿児島市の道路橋を対象に,救急到達時間の遅延と影響人口を統合した橋梁重要度指標を提案 する.橋梁閉鎖時の代替経路性を考慮し,維持管理・統廃合の優先順位付けに資する定量的評価手法を構築する. 等時圏分析により橋梁閉鎖の影響を可視化し,実務的意思決定への適用可能性を示す.

16:00
電子カルテ共有が医療費に与える影響

ABSTRACT. 日本は高齢化に伴い医療需要が増加し、国民医療費は年間45兆円を超えている。厚生労働省は、医療の質・効率の向上と費用抑制を主目的に電子カルテ共有を推進している。しかし本施策は、多様なステークホルダーに利点と課題の双方の影響を及ぼす。そこで施策の有効性を検証するためシステマティックレビューを実施し、研究目的として「国内における電子カルテ共有が医療費に与える影響の解明」を設定した。

16:10
ABMを用いたビジネスアイデア発想フェーズにおける心理的安全性ダイナミクスの解明と施策設計に向けて
PRESENTER: 拓己 菅野

ABSTRACT. 本研究は,ビジネスアイデア構想におけるアイデア発想フェーズにおいて,個人特性・行動・相互作用が心理的安全性に与えるダイナミクスを分析・再現することを目的とする.個人特性を持つエージェントを設定し,行動やチーム内の相互作用を組み込んだエージェントベースモデル(ABM)を構築することで,心理的安全性が時間とともに変化する過程を動的にシミュレーションする.本モデルは,単純な条件依存ではなく,状況に応じて揺らぐ心理的安全性を表現できる点,さらに予備実験が行いづらい社会実験に代わり簡易的な実験環境を提供できる点に特徴がある.これにより,適切なチーム編成やマネジメント介入の検討を支援する.

16:20
エージェントベースシミュレーションにおけるミクロマクロリンク発見支援手法の開発に向けて

ABSTRACT. エージェントベースシミュレーション(ABS)とは,自律的な意思決定を行うエージェントと呼ばれるモデルによる行動から全体の振る舞いを推定することができ,ミクロマクロリンクを生成することが可能である.ミクロマクロリンクとは,個人と全体の繋がりのことで,これを適切に理解すると,様々な分野で施策の開発や検討に役立てることができる.しかし,現実との乖離が小さいABSを作成しようとすると,モデルを細かく設定する必要があり,結果として出力,シミュレーション自体が複雑になってしまい,ミクロマクロリンクを適切に捉えることが難しくなってしまう.本研究では,この現状を解決すべく,初学者のような非専門家でも適切なミクロマクロリンクを発見できるような支援手法を開発することを目的とする.

16:30
不完全な暗黙フィードバック環境下におけるアイテム推薦に向けて
PRESENTER: Yucheng Shang

ABSTRACT. 本研究は、Eコマース等におけるシーケンス推薦を対象とし、短期行動やクリック欠落に起因する欠測を含む暗黙フィードバック環境下においても、安定かつ高精度に動作する手法の確立を目的とした研究構想である。Transformer系モデルを基盤とするシーケンス表現学習の高度化、シーケンス単位のデータ拡張とアイテム共起に基づく対比学習の統合、メタデータおよびクラスタ埋め込みの活用による表現の強化、さらに暗黙的フィードバックに内在するラベルノイズに対し、一貫性正則化等を用いたロバスト化を統合的な枠組みの下で検討する。評価はオープンデータセットおよび実データを用い、主としてRecall@kおよびnDCG@kを指標とする。

15:20-16:40 Session 3B: 構想発表2-B

Room: 1310

15:20
飲食店のレビューサイトの内容が消費者の店舗選択に与える影響:アンケート調査とエージェントベースドシミュレーションによる分析

ABSTRACT. 近年,消費者の飲食店選択にグルメサイトや地図アプリのレビュー情報が広く利用されている.そのため,これらのオンライン上の情報が飲食店の集客に直結する重要な要素になっている.本研究では,飲食店のレビューサイト(グルメサイト,地図アプリ)に着目し,アンケート調査で消費者のレビュー情報の評価基準と重要度を特定し,その結果と属性や性格の関連性を明らかにする.次に,アンケート結果を消費者エージェントの意思決定ルールに実装し,エージェントベースドシミュレーションを用いて,消費者の意思決定が店舗売上に与える影響や,消費者の棲み分けについて解明することを目指す.

15:30
社会的排除の抑制に向けた効果的な支援体制の検討

ABSTRACT. 日本では、雇用の不安定化や核家族化等の家族形態の変容に伴い、人とのつながりが希薄化し、社会的孤立や生活困難が「社会的排除」として顕在化している。社会的排除とは、経済、就労、サービス、人間関係など多領域からの排除が重層的に累積し、社会参加や資源へのアクセスを妨げる過程を指す。先行研究では経済的困難と社会的ネットワークからの排除の組み合わせが中心的に観察されているが、要因間の因果関係や文化的要素を踏まえた外的妥当性の検討は不足している。本研究は、日本における社会的排除の発生要因を明らかにし、構造的問題への理解を深めるとともに、排除の抑制に向けた効果的な支援策を提案することを目的とする。

15:40
賃上げが日本経済に与える影響

ABSTRACT. 日本経済は長期的に低成長が続いており、2024年の実質GDP成長率はOECD加盟国38か国中32位と低水準にとどまっている。GDPの過半を占める個人消費を活性化させるため、日本政府は2022年より「賃上げ促進税制」を導入した。しかし、実質賃金は減少傾向が続き、購買行動の改善も見られない。このことから、賃上げが経済成長に及ぼす効果を明らかにする必要がある。先行研究については、J-STAGEおよびScopusを用いたシステマティックレビューを実施し、最終的に31件の文献を採択した。しかし、日本を対象に賃上げと経済成長の関係を直接分析した研究は極めて少ない。そこで本研究は、既存研究の知見を整理するとともに、日本における賃上げの経済効果を定量的に検討することを目的とする。

15:50
公共施設駐車場の有料化に伴う利用行動と料金決定施策の影響分析に向けて
PRESENTER: 駿 横山

ABSTRACT. 公共施設駐車場の有料化に伴い,運営費の確保や違法駐車対策など,利用者と運営者双方に多くの課題が生じている.本研究では,これらの課題を踏まえ,動画データを用いた利用者行動の基礎分析と,自治体担当者へのインタビューによる現場運営の実態把握を行う.得られた実データとヒアリング結果から,利用者行動の特徴を整理し,料金設定に関わる主要なパラメータを推定する.これらのパラメータは,エージェントベース・シミュレーション(ABSS)モデルの構築に活用されることで,根拠に基づく料金施策の評価や運営者による意思決定に役立つ.本研究の成果は,運営の効率化と利用者満足度の向上,持続可能な運営の実現に寄与すると期待される.

16:00
共創的モデリングを利用した企業内のGX推進のための意識変革に向けて

ABSTRACT. 社会課題の解決には企業の協力が必要になることがあるが,社会や組織の構造により協力を得ることが難しい場合がある.本研究では脱炭素に向けた取り組みであるグリーントランスフォーメーション(GX)を対象とし,共創的モデリングを利用して協力企業における組織横断的な協働を促す意識変革を目指す.具体的には,ステークホルダー分析を通じて社内のGX推進に影響力のある人物を各部門ごとに特定し,その人物らがワークショップでGXに関する事業の立案と,その事業によって実現され得る未来像を共創する.これにより参加者の意識変革が促され,GX推進にむけた社内横断的な協働体制の構築が期待できる.(278文字)

16:10
生活行動生成における機械学習ベースのAsIsモデルの構築

ABSTRACT. 既存の生活行動生成モデルによる生成データに関して,コミュニティ全体としては統計に一致するものの,個々のエージェントの活動を観察すると,頻繁な行動の切り替えが発生していることがあるという問題が存在する.この問題を解決し,各地域ごとの特徴を反映した生活行動生成を行うため,社会生活基本調査を用いたSA法による手法を提案したが,この手法では現実的な人口に対するデータ生成は困難であることがわかった.そこで本研究では,ヒューリスティクスよりも推論時間に優れる機械学習ベースのAsIsモデルを構築することを提案する.

16:20
大規模言語モデルを用いた納得感のあるエージェントベース社会シミュレーションに向けて
PRESENTER: 翔哉 佐々木

ABSTRACT. 大規模言語モデル(LLM)を用いた社会シミュレーションは、人間らしい意思決定を模倣できる利点を持つ一方、透明性・一貫性・現実性に欠け、特に新規現象やニッチ領域では幻覚を生じやすいという課題を抱える。本研究では、シミュレーション過程にステークホルダーによる承認フローを導入し、各エージェントの行動や発話が社会的に妥当であるかを逐次検証する枠組みを構築する。これにより、単なる言語的模倣にとどまらず、政策シナリオ検討など現実的な文脈に応用可能な基盤を整える。さらに、曖昧な状況における合理的な意思決定を担保しつつ、LLMを用いた新たな社会シミュレーションの方法論を提案する。

15:20-16:40 Session 3C: 構想発表2-C

Room: 1309

15:20
自治体横断的デマンド交通整備にむけた人口集中地区間の接続可能性分析にむけて

ABSTRACT. 近年,公共交通の衰退に伴い交通空白地帯が拡大し,非自動車所有者の生活に深刻な影響を及ぼしている.これは,従来のバスや鉄道は停留所制約により柔軟性に乏しく,自動車の代替となる運用が期待できないことに起因する.一方,予約制に基づくデマンド交通(DRT)は効率的運行が可能であり,交通空白地帯の解消策として期待される.しかし現行の多くは市町村単位に留まり,生活圏の広域化に対応していない.本研究では,国勢調査や国土数値情報,OpenStreetMap等を用いて人口集中地区(DID)間の実走行時間に基づく接続可能性を分析し,孤立地区の特定と広域的なDRT導入の可能性を示すことを目的とする.

15:30
実店舗小売における多コンテキスト統合による次点購買推薦手法の提案に向けて
PRESENTER: 裕稀 野原

ABSTRACT. スマートストアでは、決済機能付きレジカートから消費者へ次に買いたいであろう商品の推薦を行い、購買行動を促進させる働きかけを行っている。しかし、消費者個人に訴求する高精度のパーソナライズ推薦を実現するには消費者が持つ購買目的が強く影響を及ぼすため、それらを取得できるデータから考慮する必要がある。 そこで本研究では、消費者が行う購買行動の意図を文脈情報(コンテキスト)を利用し推定する。スマートストアから取得されるデータからコンテキストを複数形成し、それらを推薦モデルに反映させることで、消費者の購買目的を考慮した高精度の次点購買推薦手法を提案することを目指す。

15:40
グループワークにおける学習効果向上のための参加者構成の分析

ABSTRACT. 本研究は,グループワークにおいて各個人の学習効果を高めるため,どのようなメンバー構成が有効であるかを明らかにすることを目的とする.近年,教育やワークショップを通して,参加者同士が意見を交わし課題解決に取り組む活動が広く行われている.学習は単なる知識の受け取りではなく共同体への参加を通じて成立するとの見方があり,グループワークにおけるメンバー構成は学習の質を左右する重要な要素と考えられる.本研究では,参加者の因子を考慮してグループ構成を行い,議論や情報整理を通じて作成するロジックモデルの変化を分析し,学習量を測定する.得られた知見は,参加者の特性を考慮した効果的なグループ構成の設計に活用できる.

15:50
建築設計プロセスを効率化および自動化する技術の構築の構築

ABSTRACT. 近年建設業界では、頻繁な設計変更、資材・人材不足によるコスト増大、そしてクライアントの不満という深刻な課題に直面している。これらの問題の根底にあるのは、人的ミスを誘発し、問題発生時の対応を遅らせる「技術的な脆弱性」である。他産業がITやデジタル化で技術革新を進める中、建築設計分野は遅れをとっている。そこで本研究ではこのような業界の構造的な問題を根本から解決する新しい技術の構築を目的とする。まず現状分析として、効率化を図る技術を開発している18の会社の技術を分析、評価した。 さらに, 自動化する建築設計システムの構成案を作成した。

16:00
大学生の防災備蓄行動に対するナッジの効果と個人特性との関連分析

ABSTRACT. 南海トラフ地震など大規模災害のリスクが現実化する中、若年層の防災備蓄の促進が課題となっている。本研究では、静岡大学の学生を対象に、利得・損失・利他的動機・教育的動機・社会規範など6種類のナッジメッセージを用いたアンケート調査を実施し、各ナッジが防災備蓄意図に与える影響を分析する。また、ビッグファイブ性格特性(TIPI-J)や備蓄行動の段階(TTMモデル)とナッジの効果の関連も検討する。ナッジの効果が個人の性格や防災意識によって異なることを明らかにし、「誰にどのようなナッジが有効か」を導出することを目的とする。

16:10
日本学生支援機構の目的達成に向けた奨学金受給条件の検討

ABSTRACT. 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度は「能力に応じた教育機会均等」と「社会を担う人材の育成」を目的に掲げるが,現行制度は学力基準と年収基準を用いる一方で,家庭支出の考慮不足や「社会を担う人材」の定義の曖昧さから目的との整合性に課題がある。先行研究は貸与型奨学金に偏り,給付型や卒業後を対象とした研究は不足していた。本研究は,制度目的達成に資する受給条件を明確化することを目的とする。方法として,国内外の制度に関する文献を対象に目的と受給条件を整理し,制度評価軸を構築する。さらに,全国調査データにより現行基準の妥当性を検証し,シミュレーションを通じて目的達成度を最大化する受給条件を探索することで,公平性と人材育成を両立する制度設計に貢献する。

16:20
家庭への再生可能エネルギー導入の促進について

ABSTRACT. 二酸化炭素排出削減に向けて、再生可能エネルギーの導入は有力な手段である。企業・産業部門に比べ、家庭部門は設備規模が小さく相対的に短期間での導入が可能とされ、普及の加速が期待される。一方で、家庭への導入は、初期費用や補助金手続きの煩雑さ、情報不足、制度理解、環境意識などの要因により進展が阻害されている。本研究は、これらの阻害要因を実証的に特定し、家庭部門での導入を促進するための有効な施策と条件を明らかにすることを目的とする。

16:55-17:40 Session 4A: 研究発表3-A

Room: 1311

Chair:
16:55
日本企業において、長期的な両利きの経営を持続させる際に必要な組織学習の観点のビジネスゲーミングシミュレーションを用いた検証
PRESENTER: 健介 植木

ABSTRACT. 本研究は、日本企業における両利きの経営を長期的に維持するために必要な組織学習の在り方を検討するものである。KimのOADI–SMMモデルを枠組みとし、典型的な学習失敗(Fragmented Learning, Opportunistic Learning)をテーマにビジネスゲーミングシミュレーションを設計・実施する。その結果から、探索と深化の両立を可能にする組織学習のメカニズムを明らかにすることを目的とする。

17:10
オーバーツーリズム未然防止に向けた定量的評価基準の構築

ABSTRACT. 日本における観光客数は近年急増し,一部地域ではオーバーツーリズムが深刻化している.本研究は,日本全国を対象に観光需要と受け入れ能力を統合的に評価し,持続可能な観光政策立案に資することを目的とする.Cifuentes(1992)の枠組みに基づき,物理的・実質的・有効観光容量(PCC・RCC・ECC)を推定し,京都市,鎌倉市,石垣市,富士河口湖町を対象に分析した.結果,鎌倉市や京都市主要観光地ではECCに接近または超過する年度がある一方,石垣市や富士河口湖町では余裕が確認された.本研究は地域特性に応じた観光容量の差異を明らかにし,全国的なオーバーツーリズム未然防止と観光資源の適正配分に資する枠組みを提示する意義を持つ.

17:25
パニック購買下の生活必需品サプライチェーンにおける均等性分析

ABSTRACT. 必需品サプライチェーン(SC)におけるパニック購買リスクへの対応には,レジリエンスの向上だけでなく,購買機会の均等性を確保することも極めて重要である.そこで本研究では,トイレットペーパーのSCに着目し,メーカー・卸売業者・小売業者・消費者を含むエージェントベースシミュレーションを構築した.基準シナリオ,需要急増シナリオ,購入制限シナリオの三つを設定してシミュレーションを行い,ジニ係数とサービスレベルを組み合わせた指標による評価を行った.その結果,購入制限の導入がパニックを抑制し,均等性を回復させることが確認された.

16:55-17:40 Session 4B: 研究発表3-B

Room: 1310

Chair:
16:55
現代社会における日本の伝統工芸の継承形態と継承要因の解明

ABSTRACT. 現代では,伝統の継承が難しくなっており,地域や伝統によって継承の状況に大きな差がある.日本では,現代社会における一般化を目指し,全国各地の伝統の継承に基づき継承プロセスの構築,現状を評価し,実際の政策等まで繋げる総合的な研究が不足している.また,残すべき伝統や継承状態の要件等が定まっておらず,適切に定量的手法と定性的手法の両手法を包括した実践研究が行われていない.そこで本研究では,定量的・定性的な手法を統合的に活用し,現代社会における伝統継承の要因や構造を体系的に解明することを目指す.文献調査,統計分析,多変量解析などを統合的に用い,継承形態の違いや条件を明らかにする.最終的に,伝統の形態や地域特性を基に継承要因を明らかにし,評価指標を構築することで,地域や伝統ごとに適した持続可能な継承方法と政策方針を提案し,伝統産業の継承可能性と現代社会における新たな位置づけを示すことを目指す.

17:10
各国の文化的相違による行動様式に対し,社会的選好を反映したナッジモデルの構築

ABSTRACT. ナッジは2017年にRichard Thalerがノーベル経済学賞を受賞してから,世界中の政府や自治体で注目を集めている.また,ナッジは国や文化によって効果・受け入れられる度合いが異なる.しかし,現在は導入するナッジの効果を測るために実証実験を行い,費用や時間の制約が大きい課題がある.そこで互恵性や同調性など社会的選好を反映できるナッジモデルを作成しデジタル社会実験を行うこと,日本だけでなく世界で政策評価として活用できることの2つを目標とする.

17:25
GPGPUを利用可能なエージェントシミュレーション記述系の設計とOpenCLを用いた実装

ABSTRACT. 本発表では、GPGPUを用いたマルチエージェントシミュレーション(MAS)の設計において、並列処理に関わる学習負担を軽減するための記述系に関する研究について述べる。先行研究のフレームワークでは、Pythonで記述されたMASコードをNVIDIA製GPU上で並列実行可能なコードに変換していた。一方、本研究では、Intel・AMD・Appleなど各社製GPUで動作する共通規格言語であるOpenCLへの変換を実装した。また、先行研究の記述系は機能や記述方法に制約が多く、柔軟なシミュレーションの実装が困難であった。これに対し本研究では、機能の拡充や記述系の再設計により、記述性の向上を図った。さらに、先行研究では未実装であったシミュレーションの可視化機能も実現した。

16:55-17:40 Session 4C: 研究発表3-C

Room: 1309

16:55
公的制度非利用行動におけるスティグマ軽減の介入方策の検討

ABSTRACT. 近年,支援を必要としながらも公的制度の利用をためらう「非利用」の問題が顕在化しており,その要因として意思決定における心理的障壁であるスティグマが指摘されている.本研究は,制度利用に関わるスティグマの形成・拡散とその影響を動的に捉え,軽減方策の検討に資することを目的とする.本研究では,特にスティグマの形成要因を明らかにするために体系的文献調査を行い,医療・福祉・文化の3領域における形成要因とその方向性(増強/抑制)を整理した.結果として,誤情報の拡散や制度不信は一貫して強化要因,正確な知識や接触機会は軽減要因として作用することが確認された.また,性別・年齢・就業状況などの個人属性は文脈により両面の効果を示した.今後は,これらの知見をモデル化し,介入条件やタイミングの検討に活用することで,効果的なスティグマ軽減方策の設計が期待される.

17:10
ハイパーゲームを用いた搾取の分析

ABSTRACT. 本稿では,複数のプレイヤーが関与する意思決定状況において,プレイヤーの誤認知の結果,どのように利得の搾取が行われ,誤認知が維持されるかをモデル化する.誤認知プレイヤーが主観的なゲーム状況において,相手のとった戦略が合理的であると考える場合,自分のゲームに対する認識を改める動機が生じない.その結果,誤認知がなければ得られるはずの利得を奪われてしまう.本稿ではこの状況を搾取と定義した.このモデル化により,利得の搾取が成立する利得構造の特定と,誤認知のパターンを明らかにした.さらに,誤認知が存在する特定の利得構造下では,搾取をするには被支配戦略を選ぶ優位性があることを示す.

17:25
複数自治体からの流入従業者を考慮した従業地割当て手法の全国適用に向けた検討

ABSTRACT. 本研究では,日本の合成人口データの就業者に対し,複数自治体からの流入を考慮した従業地割当て手法を提案する.従来研究手法の常住地側から独立に確率的な割当てを行う手法の課題を改善する.国勢調査および経済センサスに基づく統計整合性を指標に,小地域×産業分類単位の過不足を再配分により補正し,割当結果と実統計の乖離を縮小することを示す.対象自治体での実証により,統計との適合性と再現性の向上を確認した.