SOCSYS037: THE 37TH SYMPOSIUM OF TECHNICAL COMMITTEE ON SOCIAL SYSTEMS
PROGRAM FOR THURSDAY, MARCH 13TH
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15:20-16:40 Session 2A: ミドル発表(1A)
15:20
社会的孤立の発現メカニズムにおける要因分析

ABSTRACT. コロナ禍で深刻化した社会的孤立を抑制するために,日本では孤立・孤独対策推進法を施行し,全世代にわたる孤立問題解消への取り組みを推進している.先行研究では,孤立が生じる要因や孤立しやすい対象については一定の知見が得られているものの,孤立の発生メカニズムや要因間の相互作用の解明は十分に進んでいない.孤立の発生メカニズムの解明を目的に,ABMによる時系列モデルを構築し,規定要因の関係性をクラスタリング手法およびシナリオ分析により分析した.結果,特に高齢者の孤立は,複数の要因の重なりにより生じている可能性が高く,急激な接触頻度の低下は,各要因が相互に影響を及ぼしながら連鎖的に低下する,相乗効果の結果であることが示唆された.

15:40
混合整数計画モデルをベースとした避難所への救援物資配分・輸送の最適化支援システム

ABSTRACT. 災害発生時の救援物資の備蓄倉庫から各避難所への配分・輸送は,適切かつ迅速に行われる必要があるが,現在の自治体の職員による配分・輸送では,ある備蓄倉庫に需要が集中し職員の無駄足が生じるなどの問題が生じている. 本研究ではその解決のため,各避難所の避難者の人数・属性等から物資必要量を算出し,確実に実行可能解を提示するために備蓄量等を勘案した調整の上,混合整数計画モデルとして物資配分・輸送の最適化を確実かつ迅速に行うシステムモデルを構築する. 構築するモデルは,物資の代替性や避難者の性別・年齢・ハラール・アレルギーの有無等の属性を考慮可能なものである. そのモデルを用い,実際の地方自治体の避難所・備蓄倉庫の規模の避難物資配分・輸送最適解がリアルタイムに求解されることを確認し,その有効性を示す.

16:00
要支援者と支援者の動的マッチングによる避難効率の向上

ABSTRACT. 大規模商業施設における地震発生時の避難を想定し,要支援者と支援者の最適なマッチング方式をマルチエージェントシミュレーションで評価した.全フロア共通の方式では出口に近い要支援者を優先して支援を行う「出口近距離優先方式」が最も効率的であり,支援の有無や方式が避難時間に大きな影響を与えることが確認された.また,3階のみマッチング方式を変更することで,階段での混雑が分散され,全体の避難時間が短縮されることが示唆された.さらに,フロアごとに適した方式を選択することで,避難支援の最適化が可能であることが示された.

16:20
通所介護利用者の移動負荷均一のための送迎スケジュールの作成アルゴリズム

ABSTRACT. 本論文では,通所介護利用者の移動負荷を均一化するための送迎スケジュール作成アルゴリズムを提案する.高齢化が進む日本において,通所介護サービスの利用者数は増加傾向にあり,特に送迎時の移動環境が課題である.先行研究では,厳密解法で送迎スケジュールを作成しているため,大規模な問題は解くことができない.そのため,本論文ではメタヒューリスティクスアルゴリズムであるAMOSAを用いて送迎スケジュール作成アルゴリズムを開発した.実験結果から,車両台数や運行回数によって得られる解の多様性が異なることが示され,最適なルート生成に向けた有効性を確認した.

15:20-16:40 Session 2B: ミドル発表(1B)
15:20
深層学習を用いた建物の用途判別 -合成人口データにおける住所情報の精度向上に向けて

ABSTRACT. 近年,社会制度の分析などに用いられる手法として社会シミュレーションが注目を集めている.社会シミュレーションを行う際には,実社会を模倣したモデル作成が必要とされる.このモデル作成に使用される情報源の1つとして合成人口データがある.合成人口データとは,複数の統計データを基に最適化を用いて作成された,仮想的な個票データである.しかし,町丁目より詳細な世帯の位置情報に関しては,世帯が無作為に割り当てられており,現実に即したものとは言い難い.そこで,深層学習を用いて建物の利用用途を判別する研究が行われている.本稿では,それらの先行研究の手法に対して,画像の処理方法等で改良を加え,より精度,汎用性の高い学習モデルの作成を目指す.

15:40
合成人口の複数自治体からの流入を考慮した就業者への従業地属性割当て最適化手法

ABSTRACT. 本研究では,合成人口データの就業者に従業地属性を割当てた先行研究の改良手法を検討する.先行研究では,就業者が在住する常住地における市区町村単位で独立な割当てが行われており,複数の自治体からくる就業者の従業地割当ての結果が就業者が働く従業地市区町村単位の統計的特徴を捉えているか考慮されていない.本稿では,先行研究の割当て手法を適用した場合の割当て結果を分析し,従業地市区町村単位の統計を考慮した再割当て手法について検討する.

16:00
業種や職種に着目したワーク・ライフ・バランスと企業業績の関係

ABSTRACT. 本研究では, 労働者の属性や企業区分により求める働き方が異なり, 企業の施策がワーク・ライフ・バランス(WLB)や企業業績に十分結びついていない課題に着目した. 先行研究では, WLB施策の影響は指摘されているものの, 業種や労働者の属性を考慮した詳細な分析は不足している. そこで, エージェントベースモデル(ABM)を用いて労働者と企業の意思決定をシミュレーションし, WLBと企業業績の変化を分析した.シミュレーションの結果, 施策の影響は業種や労働者の属性によって異なり, WLBの向上が必ずしも企業業績の改善につながるとは限らないことが確認された. また, 労働市場の動向やWLBのばらつきが業種ごとに異なる影響を与え, 一様な関係が成り立たないことが示唆された.

16:20
観光地におけるSAVSの導入効果の評価

ABSTRACT. 本研究では,観光地におけるデマンド交通サービスとしてのSAVS(Smart Access Vehicle System)の導入効果を,ABS(Agent-Based Simulation)を用いて定量的に評価することを目的としている.SAVSは,主に都市部を対象として開発されており,コンピュータによってすべての車両の位置と経路を管理し,固定路線やダイヤを持たず,乗り合いでデマンドに即時対応することが特徴の新しい公共交通システムだ.近年,MaaS(Mobility as a Service)などの次世代交通サービスが提案される中で,SAVSはその一つの可能性として注目されている.本研究では観光地に導入することを前提とし,地域特性が異なることによる効率性の差異を,シミュレーションを通じて分析する.

17:00-18:40 Session 3A: ミドル発表(2A)
17:00
まちづくりゲーミングシミュレーションのための 納得感のある市民ペルソナ作成の課題と方法論の提案

ABSTRACT. 社会課題解決の意思決定支援手法として,社会シミュレーションが注目されている.ステークホルダー(SH)の行動変容を促し,課題解決に繋げるために重要となるのが,シミュレーションの納得感である.そのために,モデリングプロセスにいかにSHを巻き込むかが鍵である.モデルが市民の行動を再現しているとSHに体感してもらう手法として,市民になりきって行動を選択するゲーミングシミュレーション(GS)が開発されている.そのためには,仮想市民のペルソナが必要である.本研究では,SHを巻き込み,実在感のあるペルソナを作り,納得感のあるペルソナ作成手法を考案する.作成したペルソナを用いたGSにより,モデルの妥当性評価や納得感の醸成に貢献することが本研究の意義である.

17:20
商店街での消費者行動予測に対するオンライン調査の有効性の検証

ABSTRACT. 商店街は衰退傾向にある.商店街は,経済性のみならず地域性という側面から重要な機関であり,再生のために様々な事業が実施されている.一方で,衰退を抑制することができていない.効果的な施策提案には消費者行動の予測が必要である.しかしフィールド調査を用いた従来手法では,予測に大きな時間・人為的コストがかかる.そこで本研究では,オンラインでの店舗調査の台頭に着目し,消費者行動予測に対するオンライン調査の有効性の検証を行った.算出した予測値と実データを比較することで,オンライン調査の有効性を検証するとともに,フィールド調査とオンライン調査の比較を行った.その結果,オンライン調査の有効性を示し,フィールド調査と比較してオンライン調査では,予測値の分散が小さくなる可能性があることが推測できた.

17:40
順序付き購買データを用いた小売実店舗における商品の購買間隔を考慮した商品推薦の汎用性確認と分析

ABSTRACT. 近年,食品スーパーをはじめとする小売実店舗では,決済機能付きカートが導入されつつある.このカートは,レジを介さず決済が可能なことや,来店中の顧客に動的な商品推薦を行える点から注目されている.しかしながら,現状の商品推薦ではカートの機能や近年の顧客特徴を考慮できていない.そこで本研究では,新たな商品推薦として,「購買間隔を考慮した次点購買予測」を提案する.手法の有効性評価として,異なる店舗や条件下での汎用性について検証を行うことで,適用可能な範囲を明確化し,異なる条件や状況においても効果的に機能するかを明らかにする.

18:00
まち歩き観光における消費行動促進のための社会デザイン

ABSTRACT. 近年では,まち歩きを目的とする旅行者が増加傾向にあり,観光地の新たな消費機会拡大を実現させる要 素の一つとして期待されている.その一方で,まち歩き観光における消費行動のメカニズムは解明されておらず, 実社会をどのように変化させれば消費行動の活性化につながるのかの議論には至っていない.本研究では,まち 歩き観光における消費行動を 4 つのタイプで分類し,まち歩き観光を通じて得られる多様なデータから,まち歩 き観光時の消費行動に関する理解の深化を目指す.本研究では,小樽市と熱海市で実証実験を行い,その結果を 多角的に分析した.その結果として,観光地において,まち歩き観光での消費行動を促進する,阻害する要因を 特定することができ,まち歩き観光に最適な社会システムについて検討することができた.

18:20
利用対象者の要望に適した介護施設の特性を学習するシリアスゲームの開発

ABSTRACT. 本研究では,日本の高齢化問題により介護施設の重要性を理解する機会を提供することを目的とし,利用対象者の要望に適した介護施設の特性を学習するシリアスゲームを開発する.シリアスゲームは,体験型学習を促進し,知識の定着を図る手法として注目されている.提案するシリアスゲームでは,利用者の要望を考慮しながらプレイヤーが介護施設の特性を設定し,フィードバックを受け取りながら学習を進める仕組みを取り入れている.検証結果から,介護施設の特性やサービスに関する知識の習得が確認された.一方で,シリアスゲームにおいて,ペナルティの見直しや難易度調整が課題である.

17:00-18:40 Session 3B: ミドル発表(2B)
Chair:
17:00
社会生活基本調査による地域性および行動の連続性を考慮した生活行動生成

ABSTRACT. エージェントベース社会シミュレーションを実現するには,「個々人の生活時間を考慮したデータ」が不可欠である.エージェントの時刻ごとの行動状況がわからなければ,対象コミュニティの時刻別の状況もわからないからである.しかし,これまでの関連研究で作成されたデータでは,コミュニティ全体としての妥当性は考慮されているが,「地域性」や個々人の「行動の連続性」が十分に考慮されていないという課題が指摘されている.そこで本研究では,コミュニティにおける時刻区分別行動者率の統計データに合致しつつ,「地域性」と「行動の連続性」を考慮した個人の行動データを作成することを目的とする.

17:20
合成人口データへの国籍の割り当て

ABSTRACT. 本研究では,合成人口データに国籍を割り当てる手法を提案し,鳥取県を対象に実験を行った. 現在,日本の在留外国人数は増加しており,外国人との共生社会の実現に向けた統計に基づいた政策改善が求められている. 本研究では,合成人口データに国籍を割り当てるため,最適化手法であるシミュレーテッドアニーリング(SA法)を用いて,国勢調査のデータをもとに国籍の初期割り当てを行った.実験の結果,外国人の年齢別人数については統計との誤差を完全に削減でき,他の評価項目においても誤差が大幅に減少したことが確認された.

17:40
断面交通量を用いた自治体規模における通勤時間帯の発生交通量推計

ABSTRACT. 本研究は断面交通量をもとに発生交通量(その地域がトリップの開始地点となる交通の量)を推計する.先行研究は都市の狭い地域を対象としたOD推計であったため,調査対象地域内で発生する交通量は少なかった.本研究では熊本市全域を対象に多くの交通が調査対象地域内で発生する場合の推計手法を提案する.また,通勤時間帯の発生交通量を推計し,周辺に住む就業者数の分布と比較する.

18:00
合成人口データへのフリーランス属性の合成手法の開発

ABSTRACT. 日本の相対的貧困率は上昇傾向にあり,社会保障制度の見直しが求められている.社会保障制度の検証手段として,合成人口データを用いた社会シミュレーションがある.しかし現在の合成人口データは,事業所得などの多様な所得は考慮できていない.そこで本研究では,現在注目されているフリーランスに着目し,合成人口データへのフリーランス属性の合成手法を開発を行った.本研究により,合成人口データの所得属性が多様になり,より最適な社会保障制度の検証が行えると考える.

18:20
PLATEAUの建築物属性と国勢調査の住居・居住地統計を考慮した合成世帯割当て手法

ABSTRACT. 本研究では,世帯の属性と建築物の物理的特性(延床面積,建築面積,階数,用途など)を詳細に考慮した合成世帯割当て手法を提案する.特に,従来の手法では考慮されていなかった世帯の面積属性を導入することで,より現実的な世帯配置を実現する.これにより,建築物の収容能力を適切に反映した合成世帯の割当てを実現し,地域社会の再現性を向上させることが可能となる. 従来の合成人口データは国勢調査の統計情報を基に作成され,都市計画や社会シミュレーションに活用されている.しかし,現行のデータ生成手法では,建築物の用途や延床面積,階数といった物理的特性が十分に考慮されておらず,不整合が生じることが課題となっていた. 例えば,小規模な建築物に過剰な世帯が割り当てられたり,大規模な建築物で適切な世帯数が割り当てられないケースが見られる. 本研究では,国土交通省が整備する3D都市モデルPLATEAUを活用し,建築物の詳細な属性を考慮した世帯割当て手法を構築する. これにより,従来手法で発生していた不整合を解消し,都市計画や防災,交通シミュレーションなどの分野での精度向上が期待できる.