SOCSYS036: THE 36TH SYMPOSIUM ON SOCIAL SYSTEMS
PROGRAM FOR SUNDAY, SEPTEMBER 1ST

View: session overviewtalk overview

13:00-14:30 Session 2A: 構想発表1-A
Location: A会場
13:00
ABSSにおけるミクロ-マクロ・リンクの観点から類似する状況分類手法の構想

ABSTRACT. エージェントベース社会シミュレーションにおける入力である状況を分類する際に,マクロ的な指標値で分類すると施策効果の類似性は分かるが,施策効果の要因まで類似しているかどうかまでは分からない.似た状況であっても施策効果が発現する過程は異なる可能性があるため,ミクロ-マクロ・リンクの観点で類似する状況を明らかにすることは,共通した要因を持つ状況の把握や施策効果の理解に有用であると考えられる.本研究では,発生した事象の順序関係をネットワーク図で表現し各状況におけるミクロ-マクロ・リンクを把握できる手法を発展させ,施策の前後でのネットワーク図の構造的違いを見ることで施策効果の要因の類似性から状況の分類を試みる.

13:10
合成人口データへの国籍の割り当ての構想

ABSTRACT. 現在,国内の在留外国人数は増加傾向を示しており,今後も増加することが見込まれている.この現状を踏まえて,在留外国人との共生社会を目指し,既存の制度の改善が必要になっている.その際、制度の効果を検証するために、シミュレーションを利用することができる。本研究では,合成人口データと呼ばれるシミュレーションに使用することができる仮想の個人データの属性に,国籍を新たに追加する.これにより,在留外国人に関するシミュレーションに合成人口データを利用することが可能になる.

13:20
地方鉄道の在り方の検討

ABSTRACT. 近年、日本の鉄道において赤字路線の廃止が加速しており、それらの路線の存続のために行われている施策として、上下分離方式を利用した路線維持を行っているが、インフラ部分を維持する行政の金銭的な負担が増加するという問題が生じており、自治体の財政的状況・沿線住民の移動需要に沿った路線の維持を検討することが求められている。先行研究では、赤字路線の持続可能性について上下分離方式と運賃制度の視点からの研究はされていたが、運行システムの見直しや沿線住民の移動需要に関する視点からの研究はされていない。そこで本研究では、対象路線の特性、沿線地域のニーズを考慮しながら、赤字路線の持続可能性を定量的に検証することを目的とする。本研究により、赤字路線の持続可能性を評価するために、特性や地域ニーズを反映した評価指標が構築され、赤字路線の存廃を決める議論において、より実効性のある判断が可能となることが期待される。

13:30
認知のジレンマ的状況についての事例分析

ABSTRACT. 本研究では認知のジレンマについて具体的な事例分析を行う.認知のジレンマとは不完備情報下において誤った認知が非協調的なゲームの解を導く状況のことを指す.本研究では,認知のジレンマに該当する状況を模索し,体系的に分析することを目的とする.

13:40
アンケート調査によるサイクリングルート選定要因の分析 ―浜名湖一周サイクリングルートを事例としてー

ABSTRACT. 2016年に自転車活用推進法が成立し, 国土交通省を主導として全国各地でサイクリングルートの整備が進められてきた. 多くのサイクリストに利用されるサイクリングルートを実現するには,どういった要因によりサイクリングルートが選ばれているかを明らかにする必要がある.本研究では, 浜名湖一周サイクリングルート(通称“ハマイチ”)を事例に,サイクリングルートの地域特性や観光資源, 走行環境などの要因が,サイクリストのルート選定に与える影響についてアンケート調査をもとに分析し,今後のさらなるサイクルツーリズムの推進に寄与したい.

13:50
情報カスケードモデルによる情報の非対称性の影響分析

ABSTRACT. 情報カスケードとは、先行者の行動を観察した個人が、自分の行動や意思を気にすることなく先行者の行動に従うことが最適であると判断した場合に発生する現象のことである。この現象は、市場、社会、組織など、様々な場面で観察される。従来の研究では、この現象について数式化を行う際に、個人の所持している利得や、意思決定に要するコストについては均一であるという前提がおかれていた。本研究では情報の非対称性を反映させることによってより現実的な情報カスケードのモデルについて検討する。

14:00
健康寿命の延伸を目的とした政策の費用対効果

ABSTRACT. 日本では,医療費が年々増加傾向にあることを受け,厚生労働省は医療費削減対策として健康寿命の延伸を目的とした,「健康日本21」などの政策を行っている.一方で,それらの効果は定量的に明らかになっていない部分が多く,過去の政策評価や未来に向けた政策立案が困難となっている.先行研究では,治療法・医薬品における費用対効果やその評価方法についての研究は行われているものの,政策導入時からの費用対効果を算出している研究は見受けられない.そこで本研究では,政策の導入時点から削減が期待される医療費までの費用対効果を算出することを目的とする.

14:10
日本の食料品小売業における共通商品マスタ推進のための意思決定支援ツールの構想

ABSTRACT. 食料品小売業では商品データベースである商品マスタが業務に利用されている.各小売業で業務に必要な情報は共通のものが多いが,現在は同じ情報の登録作業を各社で行なっている状況にある.商品マスタを各社で共通化することにより業務負担の軽減が見込まれるが,社内の環境整備の必要や導入による利益が不透明なことから商品マスタ共通化には困難が伴う.そこで本研究は商品マスタが共通された場合の利益を算出するシミュレータを作成し,それを用いて意思決定を支援する手法を提案する.これにより各社の状況に合わせたマスタ共通化のインパクトを判断材料にすることができ,より納得感のある意思決定が可能になると考えられる.

13:00-14:30 Session 2B: 構想発表1-B
Location: B会場
13:00
貧困の連鎖を断ち切るために有効なアプローチについての考察

ABSTRACT. 日本では近年、貧困が親から子へと受け継がれる貧困の連鎖が注目されており、その原因として、貧困状態にいる子どもが、自身の社会的な不利に気づいておらず、必要な支援を得られていないという可能性があげられている。 先行研究では、経済面の不利と生活面の不利について着目しているものが多く、現状認識と貧困の連鎖を紐づけた研究は見られなかった。また、現状認識に関する研究では、現状を正しく理解するには他者との関わりが重要であるとされていた。 よって本研究では、貧困層の子どもが非貧困層の人々と主体的に関わることが、貧困の連鎖から抜け出す際に、どれだけの効果をもたらすのか明らかにすることを目的とする。そのために、貧困の連鎖を断った状態の定義や、主体的な関わりを持つことの効果の解明を行っていく。

13:10
エージェントベースシミュレーションを用いたリスク顕在化メカニズム生成手法開発の構想

ABSTRACT. 効果的なリスクマネジメントを実施するには,リスクが顕在化するメカニズムを正確に理解する必要がある.しかしリスクが未来の事象であるためにリスクが顕在化する過程のデータがないことから,現状メカニズムの推定が定性的に行われており,因果関係を誤認し不適切な対策が取られる可能性がある.そこで本研究では,個人や企業などのエージェント間の相互作用によって形成される社会システムが持つ可能性を再現できるエージェントベースシミュレーションを活用し,リスク発生時に途中で発生しがちなイベントを特定し,発生を防止または強制する介入によるリスク発生確率の変化から,定量的に因果関係を検証したリスク顕在化メカニズムの生成手法の開発を試みる.

13:20
話し合いのための方法論の定量的評価

ABSTRACT. ブレインストーミングをはじめとした話し合いのための方法論は、定性的に評価されているものが多く、それぞれが定量的に評価され、比較検討されている研究は少ない。そこで本研究では、異なる価値観や情報、世界観を持ち、利害関係のあるエージェントを生成し、それらのエージェントを方法論に沿ってコミュニケーションさせるエージェントベースモデルを作成・シミュレーション分析することによってそれぞれの手法の定量的評価及び比較を行う。実証実験では同じ人が再び同じテーマで別の方法論を最初から行うことができないため定量的な比較はできないが、ABMでは複数の方法論で同条件のエージェントが作用するため、方法論の定量的比較が可能になる。

13:30
合成人口データにおける深層学習を用いた住所情報の微細化に関する研究構想

ABSTRACT. 近年,社会制度の分析などに用いられる手法として社会シミュレーションが注目を集めている.この社会シミュレーションを行う際には,実社会を模倣したモデル作成が必要とされる.また,このモデル作成に使用される情報源の1つとして合成人口データがある.合成人口データとは,複数の統計データを元に最適化を用いて作成された,仮想データである.しかし,町丁目より詳細な居住地情報に関しては,世帯が無作為に割り当てられており,現実に即したものとは言い難い.そこで,本研究では先行研究を参考に深層学習を用いて住所情報の精度向上を目指す.

13:40
傾斜型動く歩道の可能性と課題 ―エレベーターおよびエスカレーターとの比較分析―

ABSTRACT. フロア間の昇降設備としてエレベーターやエスカレーターが一般的であり,動く歩道が運用されているのは一部の大規模施設のみとなっている.本研究では,広く普及していない動く歩道に着目し,その理由と新たに活用するための条件を探る.具体的には,利用者の属性,設置環境,昇降設備の稼働速度,設置コストなどのパラメータを想定し, 各昇降設備における利用者の移動時間と滞留した利用客の捌き時間をシミュレーションにより算出する.シミュレーション結果と併せて設置に関わる費用や設置コストなどを比較し,動く歩道の優位性を探る.

13:50
検討すべき社会課題・政策(ニーズ)と 評価技術(シーズ)とのマッチング方法の提案

ABSTRACT. まちづくりに関する多種多様な社会課題に対して,政策実施前に政策の効果を評価することが求められている.このような状況下で,エージェントベースモデル(Agent-Based Modeling)を用いた社会シミュレーションによる政策評価を行うことが近年増加している.しかし,どの政策の評価を行うかを決定する判断は難しく,実務の場面では多くのリソースを割く必要がある.そこで本研究では,ニーズである様々な政策とシーズである政策を評価する方法とのマッチングを行う方法論を提案する.マッチングには,自己組織マップ(Self-Organizing Map)を用いることで,様々な政策とそれらの評価方法の関係性を可視化し,半自動化とリソースの削減を行う.

14:00
シェアリングエコノミーの調和的発展に向けたマクロ視点の 分析と調整メカニズムの構築にむけて:Airbnb を事例に

ABSTRACT. 本研究は,Airbnb を含むシェアリングエコノミーの影響を調整し,社会全体の成長を促進 するメカニズムを構築することを目的とする.現行の宿泊ビジネスとの両立が困難な状況を背景に, データ分析を活用して包括的かつ持続可能なソリューションを提案する.また,規制の整備や住宅市 場への長期的影響をより深く理解することで,社会課題の解決を目指す.

14:10
オーバーツーリズム未然防止に向けた観光政策の効果予測
PRESENTER: 隆斗 小嶋

ABSTRACT. 近年の観光客数の増加や SNS の普及に伴い、過度の混雑やマナー違反などが生じ、地域住民の生活や旅行者の満足度低下が引き起こされるオーバーツーリズムが深刻化している。先行研究では、自治体による観光政策が住民や観光客の満足度に与える影響の程度を予測しているが、観光行動の意思決定を考慮し、満足度の時系列的な推移を分析した研究は少ない。本研究では、自治体による観光政策が将来的に地域住民と観光客の満足度に与える影響を、定量的かつ時系列的に分析し、満足度と未然防止を両立する政策の検討を目的とする。そのため、オーバーツーリズムが起こる過程をモデルとして表現し、観光政策による地域住民と観光客の満足度の変化をシミュレーションにより分析する。

13:00-14:30 Session 2C: 構想発表1-C
Location: C会場
13:00
日本におけるベンチャーエコシステムの施策とその評価

ABSTRACT. 日本が急速に変化する社会構造と国際競争の激化に対応するためには,健全なベンチャーエコシステム(VES)をデザインし,持続的にユニコーン企業(企業評価額が10億ドル以上で,設立10年未満の未上場企業)が生まれる環境を創出することが必要である.創出に成功している国々を比較した結果,VESの成り立ちには共通する5つの段階(「変革」「展開」「進展」「拡大」「持続的成長」)があり,それぞれの段階で重要な事象がVESに影響を与えている.一方,日本は文化的交流による価値観の変化とイノベーションの創出が行われる「進展」期が弱く,VESの成長が鈍化している.本研究は,起業に対するリスク受容度の観点から,文化や価値観の変化がVESの発展に与える影響について明らかにする.

13:10
過疎地域の交通利便性向上のためのライドシェア導入の検討

ABSTRACT. 人口減少・高齢化が進む過疎地域において,経営悪化した交通事業者の撤退や路線バスの運行回数減少といった問題が起きており,地域住民の生活の足をどのように確保するかが問題になっている.その対策として,乗合タクシーやデマンドバスの運行が行われており,またタクシー不足解消を目的として,各地でライドシェアの導入が進められている.本研究では,地域住民が所有する自動車を活用したライドシェアに着目し,ライドシェアの導入効果の検証と過疎地域への導入にあたり改善すべき点の検討を行う.

13:20
防災力向上のための地域コミュニティ活性化施策評価を対象とするABSSモデルの一検討

ABSTRACT. 地震,豪雨などの自然災害に対する防災力の向上には,地域コミュニティの維持・活性化が重要な役割を果たすことが注目されている.そこで我々は,豪雨災害時の避難行動を対象に,エージェントベース社会シミュレーション(ABSS)を用いて,地域コミュニティの活性化施策が地域防災力向上にどのように寄与するかを評価・解明するための研究を行っている.本発表では,合成人口データとGISを導入し現実に即したシミュレーション環境,並びに防災施策に対する住民の行動変容を反映可能なエージェントモデルの検討について述べる.

13:30
地域の活性化と定住人口の研究動向

ABSTRACT. 地方都市では人口の流出による生活の諸問題が顕在化しており、自治体は修学・就職できる環境の整備​や、地域子育て支援事業など定住に向けた政策を行っているが、活性化につながるかが把握できていない。先行研究では、地域の人口流入の事例分析や政府への提案などは解明されているが、流入が都市に与える影響は明らかにされていない。そこで本研究では、人口流入によって定住した人口が地域の活性化や持続可能性にどのような影響を与えているか明らかにすることを目的とする。そのため、活性化の定義を行った上で、地域の活性化において人口におけるどの要因が影響しているか明らかにする必要がある。

13:40
商店街PRに効果的なVTuberの作成・運用のための フレームワークに関する研究

ABSTRACT. 近年,観光産業や地域創世の場面でのバーチャルYouTuber(VTuber)によるPRが増えてきていて,志摩スペイン村の例のように大成功を収めたケースも確認されている.一方,一部の地方自治体などでは独自のVTuberを用いて自らの自治体を盛り上げていこうとするケースも散見される,しかし,どういった特徴を持つVTuberが自治体のPR効果的なのか,また,どのようにVTuberを運用していくのが効果的なのかはまだに体系的にまとめられていない.そこで,本研究では商店街PRに効果的なVTuberの作成・運用のためのフレームワークの作成を研究テーマとし,文献調査や研究室実験からフレームワークを作成し,その後実際の商店街を対象にフレームワークを用いたVTuberの作成・運用によってどの程度効果があるのかを測定する.

13:50
SES 業態における社内の関係構築アプローチの社会ネットワーク分析による検証の構想

ABSTRACT. クライアント企業に対してエンジニアの技術提供を行うSES業態では,相手先に常駐し業務を行う客先常駐がなされている.しかし,この業態は職場環境の激しい変化にストレスを抱えることも多く,帰属意識が低下しやすくなる.そのためSES業態においてこうした社員同士の疎な繋がりを改善し,帰属意識を高めるアプローチが施行されているが,その有効性は未だ実証されていない.本研究では集団内の重層的・複合的な関係性を表現するマルチレイヤーネットワークを用いた社会ネットワーク分析を複数回にわたって実施し,その調査間で関係構築アプローチを施行することでフォーマル・インフォーマル双方の繋がりの構造と帰属意識,パフォーマンス指標との関連性からアプローチの有効性を多面的に検証する.

14:00
映像コンテンツに対するコメントを利用した盛り上がりの 測定及び推定

ABSTRACT. 近年、Youtubeやニコニコ動画等の動画サービスの利用者増加に伴い、動画に対するコメントを投稿するユーザーも増加している。視聴者がリアルタイムでコメントを送信するサービスにおいては、コメントを動画の評価指標の目安や、視聴者の需要を推測する材料になるのではないかと仮定した。コメントデータの有効活用により、動画コンテンツを制作する際に重要な参考とすることが期待できる。本研究では動画コメントを利用し、ユーザーがどの場面でどのようなリスポンスをするのかを測定、予測する。ユーザーの反応が分かりやすく、盛り上がるポイントが分かりやすいスポーツの生中継のコメントを採用する。

14:10
社会的合意の円滑な形成に向けた分析

ABSTRACT. 社会的合意形成と呼ばれる河川整備事業やダム建設事業等といった社会基盤整備に関わる合意形成において、事業計画の際に関係するステークホルダーが多種多様であるため、あらかじめ意図や話し合いのあり方や、議論点等を把握することが必要である。しかし、先行研究では個々の事業計画が実現に至るまでの経緯をまとめている文献はあるものの、他の事例に適用したり、現時点で議論している公共事業計画に活用している事業や、個々の事業計画をまとめ、一般化している研究は少ない。そのため、本研究では、各事例における社会的合意形成にいたるまでの流れをまとめ、それぞれの社会基盤事業においてステークホルダーの意識の相違や停滞箇所といったものを示すフロー図を作成することを目的とする。結果として、事前に関係するステークホルダーや、意図を把握し、今後の事業計画で円滑な合意形成に貢献することに期待できる。

13:00-14:30 Session 2D: 構想発表1-D
Location: D会場
13:00
通所介護利用者の移動負荷均一のための送迎スケジュールの構想

ABSTRACT. 高齢化が進む日本において,要介護認定者数と介護サービスの利用者数は年々増加している.介護サービスの需要増加は,通所介護の送迎体制に大きな影響を与える.通所系介護サービスにおいて,利用者に負荷がかからないように,片道30分以内の送迎が一般的とされている.しかし,一度に複数人送迎する場合,毎日決まった経路で送迎すると,利用者の総乗車時間に差が生じるため,利用者の間で移動による負荷が不均一になる.そこで本研究では,通所介護利用者の移動負荷の均一を目指した送迎スケジュールを作成する.

13:10
ゲーミングシミュレーションを用いた エージェントベースモデルの分析

ABSTRACT. 近年,ステークホルダーが関与する問題に対して用いる手法として,エージェントベースモデル(ABM)とゲーミングシミュレーション(GS)を組み合わせたGAMが注目されている.本研究では,加茂市のデジタル社会実験における駅前商店街のにぎわいにつながる交通整備の施策検討のためにGAMを用いる.施策検討のために作成されたABMをGSに変換し実際にゲームを行う.GSではプレイヤーに市民のペルソナを与え,ペルソナに見合う行動を選択してもらう.GSの結果より,ゲーム内で取られた行動がペルソナにどれほど見合っているかという観点から行動とペルソナの近さを測定する方法を調べることが本研究の目的である.

13:20
政策立案過程におけるシミュレーションAI活用ガイドラインの開発の構想

ABSTRACT. 本研究では実事例とシミュレーションAIを使った政策立案過程を比較することで,活用における価値や課題などについて分析を行う.そして,行政が主体となってシミュレーションモデルの構築・分析・評価するためのガイドラインを開発し,またその有効性を実事例に適用することで評価を行う.今回実事例としては福岡県糸島市で実際に行われている駐車場有料化政策を対象としてモデルの作成、評価を行う

13:30
消費者の食品ロス削減行動を促すゲーミング・シミュレーション

ABSTRACT. 本研究は,日本政府が公布した「食品ロス削減推進法」に基づく2030年の食品ロス削減目標に向け,特に家庭系食品ロスに注目し,消費者の行動変容を促進することで,さらなる削減を目指すものである.家庭系食品ロスが全体の半数を占めており,日本政府は消費者の食品ロスの削減を推進しているが,消費者が実際に削減のための行動をしている割合は数年間70%を前後している.そのため,食品ロス発生の行動要因を解明したのちに,消費者の家庭系食品ロス発生のメカニズムを明らかにし,食品ロスのデモグラフィック規定要因を特定する. 以上の内容を含め,食品ロスを削減行動変容を引き起こすためのゲームを開発することで,食品ロスのさらなる削減に期待する.

13:40
合成人口データを用いた電気自動車の充電スタンドの配置最適化

ABSTRACT. 近年,地球温暖化対策の一環として電気自動車の市場占有率が向上している.日本政府はEVを普及させるために,充電インフラとしてのEV充電スタンド(EVCS)の増設に注目していて,2030年までに30万口の充電インフラを整備することを目指している.そのため,EVユーザーの充電需要を考慮し,EVCSの配置計画が求められている.本稿では,EVCSの配置最適化とEVユーザーの充電需要に関する研究を整理し,既存の合成人口データに基づくEVユーザーの年齢,収入,産業分類などの属性を含む人口データを合成した上で,彼らの充電需要を計算してシミュレーションを行い,EVユーザーの通勤の充電需要を中心にEVCSの配置最適化手法を提案する.

13:50
社会シミュレーションに基づいた政策効果に関する多様な意見による政策立案支援の構想

ABSTRACT. 近年,政策立案の過程において,政策効果に着目した多様な意見を取り入れるため,コンセンサス会議など市民が参加するワークショップが行われている.しかし,これらの話し合いの参加者は年齢などのデモグラフィックデータに基づいて決定されており,属性の多様性は実現できても,意見や議論が一元化する恐れがある.本研究では,社会シミュレーションの出力結果を活用し,決定木を用いたエージェントの分類に基づく適切な参加者の特定を行い,政策効果に焦点を当てた多様な意見と視点に基づく議論を支援する.この構想の実現により,多様な意見を求める政策議論の場において,最適な参加者の特定を行い,コンセンサス会議などのワークショップの活性化を促進する.

14:00
探究学習の社会への普及に向けたアプローチの検討

ABSTRACT. 現代社会はグローバル化やデジタル化の進展に伴い予測困難な状況が続いており、そうした状況に対応するための力を育成できる探究学習が注目されているが、教育者が抱える課題やステークホルダーの理解不足により、社会全体に広く普及しているとは言えない。先行研究では、教員への研修や教職課程の見直し、各年代の教育現場の連携や接続の必要性が指摘されているが、探究学習の普及に関しての言及やそれに伴う具体的なプログラムを提案する研究はされていない。そこで本研究では、探究学習の具体的な事例を調査し、各年代における授業や評価方法を明らかにするとともに、その後、各ステークホルダーに対する効果的なアプローチを検討していく。本研究は、教育者が抱える問題の改善を図り、各ステークホルダーが探究学習を十分に理解することで、探究学習の社会への普及を促進されることが期待される。

14:10
観光地におけるSAVSの導入効果の評価

ABSTRACT. 本研究では、観光地におけるオンデマンド交通サービスとしてのSAVS(Smart Access Vehicle System)の導入効果を、ABS(Agent-Based Simulation)を用いて定量的に評価することを目的としている。SAVSは、主に都市部を対象として開発されており、コンピュータによってすべての車両の位置と経路を管理し、固定路線やダイヤを持たず、乗り合いでデマンドに即時対応することが特徴の新しい公共交通システムだ。近年、MaaS(Mobility as a Service)などの次世代交通サービスが提案される中で、SAVSはその一つの可能性として注目されている。これまでに小規模な実証実験が行われてきているが、本研究では観光地における具体的な効果をシミュレーションを通じて分析し、その有効性と課題を明らかにすることを目的としている。

14:45-16:45 Session 3A: 構想発表2-A
Chair:
Location: A会場
14:45
季節と天候を反映した観光地混雑緩和策の社会シミュレーション構想

ABSTRACT. 現在の日本では,経済的・社会的課題に直面しており,その解決策の一つとして観光業が注目されている.特に,訪日外国人の急増に伴い,観光地や大都市への旅行需要が高まっている.また,この訪日外国人の増加により,現地でのオーバーツーリズムが問題視され,住民に対する負担が増加している.本研究では,観光地の混雑を緩和するためのシミュレーションを行う.季節や天候を考慮し,マルチエージェントシミュレーション(MAS)を用いることで,観光客の動向や施設の混雑状況を分析する.これにより,観光客の数の変動をより現実的に分析することが可能だ.最終的に,この研究は観光客や住民にとって快適な移動環境を提供し,地域の持続可能な観光開発に寄与することを目的とする.

14:55
ハイパーゲームを用いた認知のジレンマに陥る条件の分析

ABSTRACT. 本研究では,認知更新の動機を得られない状態に陥る条件の分析を目的とする.笹治は不完備情報下において相手の真意に対して誤った認知を持っているにもかかわらず認知を更新する動機を持たない状況を「認知ジレンマ」と定義した(笹治,2022).笹治は認知のジレンマの分類や特性についての分析を行ったが,どのような学習過程を経てこの状況に陥るかは明らかにされていない.認知のジレンマに陥る条件を明らかにすることで,陥らないための学習方法の提案につなげる.

15:05
ナッジの国際的効果検証に向けた社会的選好を反映するナッジモデルの構築

ABSTRACT. ナッジは2017年にRichard Thalerがノーベル経済学賞を受賞してから,世界中の政府や自治体で注目を集めている.一方で,政府や自治体が政策手段としてナッジを活用する際に,実証実験を行いコストや時間など制約が多く,ナッジを用いた様々な政策を行うことの障壁となっている.そこで実際の社会実験ではなくデジタル的に社会実験を行い評価できるナッジモデルを作成することで,コストや時間などの制約を考えず,様々な政策を評価できるようになる.  特にナッジは国や文化によって効果が異なる.そのため互恵性や同調性など社会的選好を反映できるナッジモデルを作成し,日本だけでなく世界で政策評価として活用できることを目標とする.

15:15
離散選択モデルのパラメータ推定のための大規模言語モデルを用いた仮想市民によるデータ生成手法の構想

ABSTRACT. ABSSの構築において離散選択モデルのパラメータ推定を行うために,離散選択モデルの構造に適合したかつ人々が選択したデータを数多く確保する必要がある.データ確保の手段として,モデル対象者に対し離散選択モデルの構造に従ってアンケート上で仮想的に選択を行ってもらうVirtual Grounding (VG)という手法がある.しかし,VGには数多くの被験者を要するため,人口が少ない地域で実施することが難しい.本研究では市民への調査で得た情報と大規模言語モデルを組み合わせることで仮想市民を作成し,仮想市民にVGを実施することでデータの仮想生成を試みる.

15:25
現代社会における日本の伝統継承のあり方の検討

ABSTRACT. 近年の急速なグローバル化に伴う世界的な文化の画一化を受け,地域の固有性や経済的価値の損失が拡大しており,伝統の保護や活用といった継承の必要性が増加している.日本では,各自治体やコミュニティにおいて,人材や資金の不足,デジタル化への対応の遅れに加え,地域や伝統により継承状況に格差が生じており,社会変化や各々の異なる条件に対応した伝統継承の在り方の検討が求められている.伝統継承における先行研究では,中国国内での伝統工芸の効果的な継承を目指し,伝統継承を構造化した研究や各伝統の継承レベルを評価した研究があるが,日本で各伝統に適する継承の枠組みを検討した研究はない.そのため本研究では,日本において,伝統が継承される要因から伝統継承を構造化し,伝統継承モデルを構築することで,各地域や伝統ごとに条件に適する継承方法を選択可能にすることを目的とする.

15:35
合成人口データを用いた居住地割当の改良

ABSTRACT. 国勢調査の常住人口をもとに合成された合成人口データをもとに居住地を適切に割り当てる手法を考える.合成人口データでは,小地域別の常住地を一定の確率で割り当てている.本研究では,世帯収入や世帯人員,居住面積などの世帯情報に加えて,地価や家賃相場を考慮して,統計データに沿うように,より実社会に近い仮想実社会データの作成を目的とする.

15:45
組織のコミュニケ―ションの効果を分析する新たな可視化手段・手法の確立

ABSTRACT. 働き方の多様化によって、組織のコミュニケーションとそれが組織に与える影響を分析する必要性が高まっている一方、会議などに着目した取り組みが多く、他にも分析の余地が残されているため、新たな手段・手法の構築が必要である。そこで本研究では、身体特徴を検知する効果的な手法の組み合わせを確立することで、組織のコミュニケ―ションの効果を分析する新たな可視化手段・手法の確立を目的とする。そのため、身体特徴を検知し分析する手法を明確にする必要があり、また、分析を精度良く行なう手法の組み合わせを明らかにすることや、分析結果を用いた施策を実施した際に、組織のコミュニケ―ションが改善するのかを検証する必要がある。そこで、まず身体特徴を検知するため、360度カメラを設置して感情分析や視線計測に活用する映像の撮影を行った。

15:55
逆シミュレーションを用いた感染症シミュレーションにおけるパラメータ設定の方法論

ABSTRACT. 感染症流行時、施策効果の分析や感染症予測に数理モデルやシミュレーションを用いる有効性が示されている。特に、エージェントベースモデル(ABM)では、個人の行動変化を表すことが出来るため、テレワークや休校などの幅広い施策効果を分析することが出来る。また、感染症施策は感染拡大前に講じることが効果的であるため、施策効果を分析するためのシミュレーション構築には迅速性が求められる。よって本研究では、実証研究の結果に頼らずに、シミュレーション結果を陽性者数推移の実データに合わせる逆シミュレーションを用いてABMのパラメータを推定する。その後、開発した逆シミュレーション手法に必要な陽性者数推移の日数などの要件を分析する。

16:05
不便益の活用によって得られる効果

ABSTRACT. 現在,効率や利便性が追求される一方でこれに伴って失われる能力や経験がある. 主に体を使った動作や運動,筋力や柔軟性などの身体的な能力と思考力,記憶力,創造力,判断力など、心や知識に関わる認知的能力が低下している. この能力低下は,健康リスクの増加や社会的孤立,さらには技術伝承が必要な伝統的なスキルの喪失などの問題を引き起こしている. これらの問題を明らかにもかかわらず,人々が便利を追求してしまう主な理由には,時間や労力の節約,習慣化から依存につながる,社会の変化に対応するため,そしてその影響力を理解していないことが挙げられる.このように,便利さは効率的に行動し社会とつながるために不可欠であるが、依存や健康被害など深刻な問題を引き起こす。こうした問題に対し本研究では,「不便益」という不便だからこそ得られる効力を活用し,人間の能力低下を防ぐために最適な便利と不便のバランスを明らかにすることを目指す.

16:15
ABSSを用いたサプライチェーンにおける寸断と復旧の考察の構想

ABSTRACT. 近年,新型コロナウイルスや自然災害といった出来事に直面した際に,グローバルなサプライチェーンの脆弱性が顕著に現れ,寸断が発生しやすいことが明らかになっている.本研究では,エージェントベースシミュレーションを用いて,サプライチェーン寸断の影響およびその復旧に関する考察を行う.さまざまな種類の寸断をシミュレーションし,サプライチェーン全体のパフォーマンスに及ぼす影響を定量化する.さらに,これらの施策が寸断の影響を軽減し,サプライチェーンの復旧を加速する上での効果を評価し,その有効性を分析する.本研究は,サプライチェーンステークホルダーの意思決定支援へ資することを目指す.

16:25
日本型雇用システムが労働生産性に与える影響のモデル分析

ABSTRACT. 近年,日本では労働生産性の低下が顕著であり,その要因として新卒一括採用から終身雇用,年功型の賃金配分制度,企業ごとに設置される労働組合などが挙げられる.これらの雇用慣行が長時間労働や労働者のモチベーション低下といった労働問題を引き起こしている.しかし,日本の雇用システムを定量的に分析した研究は少なく,新しい雇用システムに向けた情報はまだ十分に揃っていない.日本の労働生産性を向上させるためには,企業単体ではなく,労働市場全体を考慮した雇用システムが必要である.本研究では,システムダイナミクスを用いて労働市場全体の生産性を向上させる雇用システムを考察するため,現行の雇用システムをモデル化した.

16:35
両利きの経営における規範モデルの構築と資源配分の分析

ABSTRACT. 近年,様々な要因による経営環境の急速な変化に伴い,企業の環境適応が強く求められている.その中で,組織の資源を活用し,既存領域の発展である「深化」と新規領域への挑戦である「探索」を両立できる組織を構築することが,環境適応と長期的成長に有効であるとされており,「両利きの経営」と呼ばれている.しかし,両者を両立することはリスク的観点や,利害の対立等の理由から難易度が高いとされている.そこで,本研究では,両利きの経営の事例を組織的観点から分析し,両利きの組織を実現する上で必須となる要素を抽出することで,規範モデルを作成する.また,作成したモデルを用いて「深化」と「探索」に対する資源配分を考察する.

14:45-16:45 Session 3B: 構想発表2-B
Location: B会場
14:45
多重認知ハイパーゲームの解概念の分析

ABSTRACT. 通常の情報完備ゲームではすべてのプレーヤが同じゲームを見ていることを仮定している.しかし問題状況によっては各プレーヤはゲームの要素(戦略集合,選好順序(利得関数),プレーヤ集合)について不完全な情報しか持たないことがよくある.このよう情報が不完備な状況を扱う枠組みとしてハイパーゲームがある.多重認知ハイパーゲームはハイパーゲームをさらに拡張した枠組みで確率を用いて主観的認知を表現することで,複数の認知を同時におこなう状況を表現・分析することができる.多重認知ハイパーゲームにおける解概念はまだ構築されていない.本研究では相手の持つ選好順序に関して未知な2人多重認知ハイパーゲームにおける解概念の分析を行う.

14:55
災害急性期における災害時要配慮者に対する施策の定量的な効果検証の検討

ABSTRACT. 災害時要配慮者は、災害時に災害関連死となるリスクが高いため、過去の施策の効果検証を行った上で、彼らを取り残すことのない施策の検討が求められる。しかし、過去に行われた施策の効果検証は、主観的なものが大半を占めており、定量的な評価が不足しているため、本研究では、施策の効果が災害関連死に強く影響する災害急性期に着目し、災害時要配慮者への施策の定量的な効果検証を行うことを目的とする。検証のために、エージェントベースシミュレーションを用いて、本人の属性や周囲の人からの影響を考慮した、災害時要配慮者の需要を算出する。また、需要を元に過去の施策をシミュレーションにより検証することにより、過去の施策が有用であったかを明らかにする。

15:05
遺伝的アルゴリズムを用いたエフェクチュエーション理論のモデル構築

ABSTRACT. エフェクチュエーションとは2008年にサラス・サラスバシーによって提唱された起業家の意思決定についての理論であり、市場などの不確実性の高い状況下でどのように意思決定を行うかを5つの原則から説明したものである。しかし、この理論はインタビューなどの質的な分析により生まれたものであり、定量的に評価する方法論が存在しない。そこで同じく生物が不確実性のある環境下で進化してきた過程を模倣した遺伝的アルゴリズムを用いて、エフェクチュエーションをモデル化することで定量的に分析可能にすることが本研究に目的である。

15:15
利用対象者の要望に適した介護施設選択を学習するシリアスゲームの開発構想

ABSTRACT. 日本は現在,日常生活において生活に支障のないとされる年齢を指す健康寿命が年々伸長している傾向にある.これは,要介護状態の発生を防ぐ介護予防の取り組みが促進されたためであり,介護施設を効率的に運用するための立地政策が必要であるとされている.しかし,こうした介護施設の最適立地問題を述べた研究に関して,介護施設とその利用者との距離のみが考慮されていることから,利用者の意志や要望を度外視しなければならない問題がある.本研究では,利用者の要望の考慮とその評価をするシリアスゲームを開発する.これにより,高齢の両親を介護する親族や,高齢者を介護する可能性がある若年層に対し,介護施設選択への関心と理解を促す効果を期待する.

15:25
フォールトラインにおける各属性値が組織パフォーマンスに及ぼす影響分析

ABSTRACT. 少子高齢化や政府により推進されている「働き方改革」により、ダイバシティ・マネジメントに多くの企業が注目している。また、ダイバシティに関する議論の中で近年、注目を浴びているのがフォールトラインに関する研究である。フォールトラインとはいくつかの特性に基づいて組織の中に発生する仮想的な分断線を指し、これが様々な効果をもたらすという議論がなされている。これまでフォールトラインが組織のパフォーマンスに与える影響に関する研究は属性値をタスク属性とカテゴリカル属性の2値に分類し、盛んにおこなわれてきた。そこで、本研究では、各分類の中で、各々の属性値がフォールトライン・組織のパフォーマンスへ与える影響を分析する。

15:35
エージェントベースドアプローチにおける離散選択モデルを用いたエージェントの意思決定方法の提案

ABSTRACT. エージェントベースの社会シミュレーションにおいて,その結果に人々が納得するためにはアルゴリズムの妥当性が重要であり,エージェントベースドアプローチにおいては,エージェントの意思決定方法の妥当性が重要である.この妥当性を保証するには,エージェントの意思決定の過程が現実の我々と同じような根拠に基づくものである必要がある.本研究では,既存の研究をもとに離散選択モデルを用いた意思決定アルゴリズムを構築することを目的とする.

15:45
未経験者による妥当な回答を可能にする仮想接地における質問法の提案の構想

ABSTRACT. 本研究では,仮想接地(Virtual Grounding: VG)において,未経験者でも行動モデルのパラメータ推定に用いるデータとして妥当な回答を可能とする質問法を提案する.従来のVGでは,モデル化する対象に対して実経験がある人に,対象を忠実に再現した環境で仮想的に意思決定をしてもらうことでパラメータ推定に必要なデータを生成していた.しかし,過疎地域などの理由で十分な実経験者を集めることが難しい場合がある.それに対し,実経験者に加え実経験はなくとも類似経験がある人も対象にすることで解決を目指し,その際に従来のように忠実にではなく,モデル化対象に対してより抽象化した表現で質問することで,未経験者でも妥当な回答を可能とすることを目指す.

15:55
コミュニティラーニングが組織の知識伝播に与える影響の分析

ABSTRACT. 近年,DX化やイノベーションが進み,組織のメンバーは新たな知識の獲得を必要とされている.一方で多くの経営者や管理者は,知識伝播が十分になされておらず,メンバーによって知識の量と質に差があると感じており,知識伝播の促進の場としてコミュニティラーニングに注目が集まっている.本研究では,従来の知識伝播モデルにコミュニティラーニングの概念を導入し分析することで,メンバーの新たな知識の獲得にどのように影響するかを調査する.

16:05
都市施策におけるEBPMを活用した社会シミュレーションの研究動向

ABSTRACT. 「Evidence-Based Policy Making(以下、EBPM)」は都市施策においてPDCAの問題や環境変化に対応するため注目されているが、多様なステークホルダーのニーズや目的が複雑に絡み、効果予測や代替案の比較が困難である。先行研究では、EBPMの問題点や将来予測の可能性は明らかになっているが、多様なステークホルダーを考慮した政策・施策立案のための社会シミュレーションを用いた将来予測、代替案の検討に関する研究は少なく、その有効性は明らかではない。 本研究では、PDCAの問題を解決し、ステークホルダーの多様なニーズを満たすために、社会シミュレーションを用いて、複数の施策を導入した際の効果を予測し、最適な案から自治体への提案を目的とする。 本研究は、各自治体にとって最適な施策を検討するためのフレームワーク構築に寄与することを期待される。

16:15
小売実店舗における消費者自身の過去の購買傾向に 合わせた購買商品推薦手法の開発の構想

ABSTRACT. 本研究では,レジ機能付きスマートショッピングカート(SSC)のデータを活用し,消費者の現在のカートの中身を考慮した推薦を行う.購買履歴からは消費者の特徴が出やすいことから,消費者の購買履歴からクラスター分析を行い,それぞれのクラスターに適した商品推薦を行う方法を検討している.既存の研究の購買履歴データから購買傾向に基づく処理とレシピ情報データからレシピに基づく処理の2つの推薦を軸にしつつ,クラスターごとの購買傾向に合わせた商品推薦手法を開発することで,より多様な消費者のニーズに応えることを目指し,それぞれの消費者に合わせた戦略を立てていくことが可能になる.

16:25
オーバーツーリズムの事例分析と解決策の提案

ABSTRACT. 現代の観光業は、多くの地域で経済的発展をもたらす一方で、観光地における過度な観光客数の増加、すなわち「オーバーツーリズム」による問題が深刻化している。オーバーツーリズムは、観光地の持続可能性を脅かし、地域住民の生活の質を低下させるだけでなく、環境や文化遺産への影響を及す。これにより、観光地における社会的ジレンマが生じ、異なる利害を持つステークホルダー間での対立が顕著になっている。これらの問題に対する解決策を探るために、社会的ジレンマの理論的枠組みと、オーバーツーリズムの具体的な事例を用いた分析を行う。

16:35
公共政策におけるスティグマ軽減の有用性の検討

ABSTRACT. 近年,貧困や感染症の拡大に伴う社会福祉制度や医療制度利用時の問題や,環境破壊による風評被害の問題が顕在化しており,これらの問題に対する要因分析として個人の意思決定の観点から研究が行われてきた.既存研究において個人属性に基づいた意思決定モデルでは説明不可能な現象が見られる中,社会的に作られた否定的な負の烙印の意味を示すスティグマの概念がこれらの現象を説明する可能性があると期待されている.しかし,スティグマの特徴に文化的背景の影響を強く受ける性質があるにも関わらず,日本特有の集団心理や同調圧力などの社会心理現象に言及している研究ははあまりみられない.本研究では,日本の社会環境においてスティグマが個人の選択に与える影響性を明らかにすることにより,公共施策におけるスティグマ軽減に向けたアプローチの可能性について考察した.

14:45-16:45 Session 3C: 構想発表2-C
Location: C会場
14:45
因果推論によるエージェントベース社会シミュレーションの施策評価手法の提案

ABSTRACT. 因果推論は,対象を施策を施す群と施さない群に分けることで,施策の効果を定量的に測定する手法である.本研究は,エージェントベースシミュレーションに対して施策評価手法として因果推論の適用可能性を探るものである.先行研究では格子モデルを用いて感染をシミュレーションし,因果推論を適用できることを示した.本研究では,感染以外の伝播現象をモデル化する際に用いられることが多いコレクティブモデルを利用することで,エージェントベースシミュレーションと因果推論を組み合わせた施策評価手法が感染だけでなく様々な伝播現象に対しても適用可能であることを示すことを目指す.

14:55
合成人口データを用いた通勤ラッシュ時の渋滞シミュレーション

ABSTRACT. 国土交通省の資料によれば,交通渋滞による年間の時間損失は38.1億時間,経済損失は11.6兆円に上る.また,渋滞により走行速度の低下は自動車排出ガスの増加をもたらし,持続可能な社会を実現するため交通渋滞対策が一層求められる.本研究では,合成人口データを用いた交通渋滞シミュレーションを確立し,より効果的な渋滞緩和策の開発を目指す.

15:05
業種や職種ごとに適した働き方の提案

ABSTRACT. 日本では生産年齢人口の減少により、労働生産性の向上が求められており、国の対応として働き方改革が行われている。しかし、働き方改革は労働生産性やワーク・ライフ・バランスの向上に繋がっておらず、原因の一つとして業種や職種毎に異なるニーズを反映しきれていない事が挙げられる。働き方に関する研究は、雇用形態や労働環境などが健康状態やワーク・ライフ・バランス、企業業績に与える影響については行われているが、労働者の属性から適した働き方を提案する研究は不足している。そこで本研究では、業種や職種ごとに適した働き方を提案することを目的とし、働き方改革推進の一助になることを期待する。

15:15
販売記録データと社会調査データの融合によるペルソナに基づく商圏分析方法の開発の構想

ABSTRACT. 近年,家族構成や価値観の変化により,企業は多様な顧客ニーズに対応するため精緻なマーケティングが求められているが,一部の企業では顧客の属性情報の収集していない.先行研究では,属性情報を含むデータを用いたペルソナに基づく商圏分析手法を提案しており,属性情報を所有しない企業には適用が難しいという課題がある.そこで本研究では,属性情報が不足している状況において,販売記録データとアンケート結果を融合してターゲット顧客のペルソナを作成する.その後,ペルソナを基に,合成人口データを用いてペルソナに類似する住民が多く居住する地域を特定する商圏分析方法の開発を目指す.

15:25
社会的孤立における支援体制の検討

ABSTRACT. コロナ禍を経て深刻化した社会的孤立を抑制するために、日本では孤立・孤独対策推進法を施行し、全世代にわたる孤立問題解消への取り組みを推進している。先行研究において、孤立の発生に関連する要因や孤立に陥りやすい対象について部分的な知見が示されている一方で、全世代を対象とした社会的孤立の定量的な定義の確立や、要因を考慮した具体的な支援体制の構築に関する研究は十分に進んでいない。本研究では、社会的孤立が生じる要因に着目し、定量的な定義および測定基準を確立するとともに、安否確認として有効な支援体制の構築を目的とする。

15:35
ナッジにおける選択アーキテクチャの構造分析

ABSTRACT. 研究目的として、ナッジにおける選択アーキテクチャの相互関係を表現可能なモデル作成を目指す。このモデル化によりナッジの構造を紐解き、今後ナッジの事例研究や実証研究をナッジモデルにて分析、表現する場合に示唆を与えることのできるフレームワークを構築する。方法として、既存のナッジに関するフレームワークから選択アーキテクチャの特徴を抽出し、要素同士の効果の重複や、人のどのような行動に対する影響度を比較し分析する。分析にはアクションフェーズと認知モデルを用いる。

15:45
採用活動における志願者データに基づく適性評価モデル開発の構想

ABSTRACT. 現代の採用業務では面接評価を重視しすぎている傾向があり, 一括採用による大量の志願者データから優秀な人材を絞り込む必要があるにも関わらず, 評価基準が明確に定められていない企業が多い. また, 採用時に得られるデータを用いたデータドリブンな採用業務を行い, 面接評価のバイアスを低減した採用選考を実現している企業が存在するが, 専門人材の不足により, ごく少数にとどまっており, 具体的な方法論や手順を明確に示したマニュアルは存在していない. そこで本研究では, 履歴書の文章に対する感情分析の適用や性格診断結果データに対する統計処理や機械学習により優秀者の特徴を明らかにし, これを用いた選考モデルの構築と, そのマニュアル化を目指す.

15:55
日本企業における組織学習のモデリングによる分析

ABSTRACT. 本研究は、日本企業における組織学習のプロセスをモデリングし分析することを目的とする。日本企業の世界的な競争力低下が叫ばれている中、組織学習の効率化は企業の競争力向上に寄与すると考えられる。モデリングにより学習の促進要因と阻害要因を明らかにし、具体的な改善策を提案する。組織学習の効率化に向けた実践的な知見を提供し、日本企業の持続的な成長に寄与することを目指す。

16:05
インターネット広告の多様性と消費者行動に与える影響

ABSTRACT. 近年,インターネット広告は飛躍的に発展し,デジタルマーケティングにおいて不可欠な要素となっている.一方で,広告の過剰配信や多様なマーケティング手法の乱立により,広告の効果が十分に発揮されないケースが増加している.このような状況では,広告費用の非効率性が生じるだけでなく,消費者の関心を喚起するどころか,むしろ広告疲労を引き起こす可能性が懸念される.また,既存研究では特定の広告形式や対象に限定されているものが多く散見される.そこで本研究は,インターネット広告の多様な形式や分野を体系化し,インターネット広告が消費者行動に与える影響を明らかにすることを目的としている.

16:15
デジタル社会実験における共創のためのエンゲージメント測定手法研究

ABSTRACT. これまで,都市政策評価のための社会実験には,コストが高い,関与者の納得感を得るのが難しいなどの課題があった.そこで,これらの課題を解決する方法として,デジタル社会実験が提案されている.このデジタル社会実験においては,社会シミュレーションはもちろん,シミュレーション後に関与者との合意形成を図り,政策を共創するプロセスが重要となる.そして,このプロセスで必要不可欠となるのが,関与者のエンゲージメントである.本研究では,エンゲージメントの測定手法を提案することで,デジタル社会実験における関与者のエンゲージメント評価を可能にし,デジタル社会実験の有効性をはかることを目的としている.

16:25
合成人口データを活用した避難所配置の適性分析の検討

ABSTRACT. 大規模な地震時には,建物被害等により多数の避難者が想定されている。しかし,地域によっては避難所の定員を超える被災者が発生する恐れがあり,多くの地域避難所不足が懸念されている。そこで本研究では,合成人口データや避難所の施設規模に関するデータを活用して,各地域の地域特性を考慮した避難所配置の適性を評価する.さらに、避難所として指定されていない施設を新規避難として追加した際の適性の比較と分析を行う.

14:45-16:45 Session 3D: 構想発表2-D
Location: D会場
14:45
「生活環境」に着目した健康無関心層の行動変容のための検討

ABSTRACT. 近年、国内では健康に対して無関心な人々が増加しており、国は医療費の削減を目指して健康増進施策を実施しているが、その効果が限定的となってしまっている。先行研究では、自宅の近くに生鮮食品を扱うスーパーの有無などの「生活環境」が健康無関心層の運動や食事などの健康関連行動を起因する大きな要因となっていることが明らかにされているが、アンケート調査に基づく主観的な指標を用いた分析のみであり、客観的な指標を用いた研究はされていない。 そこで本研究では、健康無関心層が能動的に行動を起こすことができるような「生活環境」を定量的に示したのち、シミュレーションモデルを用いて、どのような「生活環境」であれば健康無関心層の行動に変化が起きるのか検証することを目的とする。本研究は、健康無関心層の実態把握につながり、今後行われる健康増進施策や健康まちづくり施策の検討材料となることが期待される。

14:55
合成人口データへのフリーランス属性の合成手法の開発構想

ABSTRACT. ここ数10年の間に日本の「格差社会」は浮き彫りになりつつある.これに伴い,現行の社会保障制度の見直し,新たな社会保障制度の構築が求められている.社会保障制度の検証手段として,合成人口データを用いた社会シ ミュレーションがある.しかし現在の合成人口データの所得属性には,考慮できていない所得が存在する.本研究で は,合成人口データへのフリーランス属性の合成手法を開発する.これにより,合成人口データを用いて社会保障制度を検証する上で重要となる所得属性をより実社会に即したものとし,日本の「格差社会」是正へ向けた新たな社会保障制度の構築へ貢献することを目的とする.

15:05
破壊的イノベーションプロセスの多様性についての社会シミュレーション分析

ABSTRACT. 破壊的イノベーションは、既存製品の性能が顧客の需要を上回っており性能過剰を起こしている市場に対して、既存製品よりも性能など従来の価値基準で劣ってはいるものの、価格など新しい価値基準において既存製品よりもどこか優れた一面を持つ新製品を市場に投入するという技術革新である。 この破壊的イノベーションが進行するプロセスやペースには業界や事例ごとにばらつきがあることが確認されているが、その破壊的イノベーションの持つ多様性について分析がされていない。 そこで本研究では、破壊的イノベーションが発生した市場に対し、業界や事例ごとの特徴の違いを表現したシミュレーションモデルを作成し、特徴に応じて有効な破壊的イノベーションへの対策を分析する。

15:15
地域特性を考慮したABSSによるライドシェア制度設計手法の一検討

ABSTRACT. 交通事業者の撤退,縮小に伴う交通利便性の低下は深刻な社会課題の一つである.また,地方都市では運転免許を返納し自力での移動が困難な住民にとっては日常生活における移動手段の確保が喫緊の課題である.そこで政府・自治体は,自治体が運用する乗合タクシーなども含めた「自治体ライドシェア」を拡充し,地方都市へのライドシェア制度導入に向けた実証実験を開始している.しかし利用者の移動需要や交通事業者の供給能力は地域により大きく異なる.そこで我々は,社会シミュレーションを活用し地域特性を考慮したライドシェア制度設計に関する研究を開始している.本発表では,新潟県加茂市を対象として,その交通課題並びにライドシェア制度設計手法の構想について述べる.

15:25
産業関連表を用いたスポーツ産業が地域に与える経済波及効果の分析

ABSTRACT. 文部科学省が第3期スポーツ基本計画で挙げた,「スポーツの成長産業化」と「スポーツによる地方創生,まちづくり」という目標を達成するために,スポーツが地域に与える効果を明確にし,地域にとってスポーツが価値のあるものかどうかを分析することが重要であると考えられる.スポーツ産業の先行研究では,個々のイベントやチームによる経済波及効果を分析した研究はあるが,地域内にあるスポーツ資源全体を対象とした研究はない.本研究では,スポーツが地域に与える経済波及効果を,産業連関分析によって明らかにすることを目的とする.方法論として,産業連関表をスポーツ産業分析に活用できるように修正を加え,産業構造による地域間比較や時系列分析を行う.

15:35
イノベーションのジレンマに対する両利きの経営の有効性検証

ABSTRACT. イノベーションのジレンマは,破壊的イノベーションに取り組む余裕がある既存企業が,優れた経営能力により既存顧客に向けた持続的イノベーションを追求してしまい,最終的に新規企業にシェアを奪われてしまう現象である.この現象への有効な対策としてスピンアウト戦略が提唱されていたが,近年はその有効性が疑問視されている. スピンアウト戦略の問題点は既存企業が新規企業より優れている資源を活用できないことであり,新たな対策として資源を適切に配分するための経営手法である両利きの経営が有効だと考えられている.本研究ではイノベーションのジレンマという状況下において,どの対策がシェアの確保に有効なのかを検討する.

15:45
ツリー構造を用いた商品展開の可視化による市場調査方法開発の構想

ABSTRACT. 市場調査は市場規模や顧客のニーズ,競合他社の情報を把握し,最適な販売戦略を構築するために用いられる.本研究ではツリー構造を用いて味や容器,容量などの商品展開を可視化し,時系列変化に伴う商品展開の変化を観察することで,消費者のニーズの変化や,メーカーの販売戦略の分析が行える市場調査方法の開発を試みる.

15:55
繰り返し囚人のジレンマゲームにおける利得構造の変化による影響

ABSTRACT. 繰り返し囚人のジレンマゲームは社会的に生じるジレンマ状況を説明するモデルとして、多くの研究がなされている。様々な戦略があるなかで、協力的な戦略は強い、つまり得られる平均利得が高い傾向にあることや、割引率によってナッシュ均衡が定まることが明らかになっている。本研究では、高い平均利得を得られる要素として協調性、ノイズ耐性、裏切り耐性の3つをあげ、繰り返し囚人のジレンマゲームとして成り立つ範囲内での利得構造の変化が3つの要素へ与える影響を考察する。また、利得構造が変化しても各戦略の強さに関わる要素に大きな変化が現れないゲーム形式を考案することを目的とする。

16:05
情報リテラシーの獲得に関する手法分析と提案

ABSTRACT. 日本において、インターネット利用の普及が急速に進み、社会全体でインターネットが不可欠な情報基盤となっている。インターネットの更新性や検索可能性の向上により、SNSなどが政府や企業の公式情報発信の場として活用されているが、インターネットの利用に不慣れな高齢者や低所得者層と、一般利用者との間で情報収集や精査能力において格差が広がっている現象が見られる。これに加えて、生成AIの普及により、フェイクニュースやエコーチェンバー現象の顕在化、ハルシネーションの発生など、従来のリテラシーでは対応が困難な新たな問題が生じている。そこで本研究では、幅広い世代が情報リテラシーを獲得できる環境や要素は​どのようなものかを明らかにすることを目指す。

16:15
商品レビューデータにおける時系列を考慮した消費者の新たな需要の特定手法提案の構想

ABSTRACT. EC市場の拡大と共に,消費者の需要が多様化しており,企業は消費者の需要を把握してから商品を開発する必要がある.これまで,レビューデータの文章から消費者の需要を特定する方法が提案されてきたが,時系列の変化を考慮していないため,特定した消費者の需要が,昔から存在する需要なのか,新たに表れた需要なのかが区別されていない.そこで,楽天市場の商品レビューデータを用いて,時系列を考慮した新たな消費者の需要の特定手法を提案する.消費者の需要を自然言語処理技術の一つである係り受け解析を用いて,商品に対する評価属性と評価語を抽出して,その出現した語の変化を時系列ごとに可視化する.

16:25
共創するモデリングのための ステークホルダーエンゲージメントの方法論の開発

ABSTRACT. 社会課題解決の意思決定支援手法として,社会シミュレーションが注目されている.ステークホルダー(SH)の行動変容を促し,課題解決に繋げるために重要となるのが,シミュレーションの納得感である.しかし,SHが設計に参加していないシミュレーションは,SHにとってブラックボックスの状態であり,結果を自分ごととして捉えにくい.そのため,モデリングの段階からSHを巻き込み,SHの行動が反映されていると認識させることが必要になると考えられる.本研究では,ロングインタビューを行い,SHの活動の詳細や施策への反応を明らかにする.モデリングにおけるSHエンゲージメントの方法論を開発し,SHとモデルをリンクさせることが本研究の目的である.

17:10-18:50 Session 4A: 研究発表1-A
Location: A会場
17:10
国勢調査に基づく合成人口データの未調査年度世帯個票データの補間手法の提案

ABSTRACT. 近年, プライバシーを守りつつリアルスケールなシミュレーションを行うために, 各国で合成人口データが用いられている. しかし日本では国勢調査が5年ごとにしか行われないため, 合成人口データの作成も5年間隔でしか行うことができない. そこで本研究では, 合成人口データを用いてその間の世帯構成を補間する手法を提案する. この手法では, 遺伝的アルゴリズム(GA)を活用し, 人口移動データを最適化することで, より正確な合成人口補間データを生成する. 人口移動データは, 日本の統計局によって毎年公表されているため, 本手法で1年間隔の補間データが作成可能となる.

17:25
「グループワークにおける対人関係に関する価値観」に基づくグルーピングによるチームの高パフォーマンス実現にむけて

ABSTRACT. 本研究は,「グループワークにおける対人関係に関する価値観」が近いメンバー同士でチームを組むことで,ビジネスアイデアの構想に与える影響を分析した.特に,同じ価値観に基づいてグルーピングすることでメンバー同士の相性が向上するという仮説のもと,より高いパフォーマンスを発揮するグルーピングを行うことを目的とした.実験は,イノベーション創造を行う授業で行い,23名の学生を対象に実施された。価値観の分類にはQ方法論と呼ばれる分類法を用い,23名の学生を4,5人の5つのチームへとグルーピングした.実験終了後のアンケートやインタビューから,多くの参加者がチームメンバーを信頼しているなど,ポジティブな意見が多く得られた.一方で,価値観の多様性が低下したことで,進行が滞る可能性も示唆された.

17:40
出張移動シミュレーションによる長距離公共交通インフラの需要予測

ABSTRACT. 都市間を結ぶ長距離公共交通は,人口減少等の社会変化による需要減少に伴い維持が難しくなる可能性があり,今後のあり方について検討するため,適切な需要予測に基づく経営を行うことが求められる. 先行研究では,新規開業予定の交通インフラの需要予測は行われているが,既存路線の将来的な需要予測を行った研究は少ない. 本研究では,既存路線を含めた交通需要予測を行うため,長距離公共交通の利用目的のうち大きな割合を占める出張移動について,人々の移動及び交通機関選択を再現したシミュレーションモデルを構築することを目的とする. 本研究は、交通需要推計につながり,持続可能な交通インフラの維持に向けた政策立案やあり方についての検討材料となることが期待される。

17:55
順序付き購買データを用いたBERT4RECによる小売実店舗での商品推薦へむけて

ABSTRACT. 本研究では、協力小売店から提供された順序付き購買データをBERT4RECへ適用し、実店舗における商品推薦を実装する。現在、いくつかの小売実店舗ではスマートショッピングカート(SSC)を用いた商品推薦が行われている。SSCには、レジを介さず決済できることや、来店中の顧客に対して動的な商品推薦を行える等の様々なメリットがあるため、導入により他店舗との差別化が期待されている。しかしながら、現状のSSCにおける商品推薦は、協調フィルタリングやポイント還元対象商品の推薦である。そのため、本研究ではBERT4RECを用いて顧客が次に購買する商品を予測し推薦するという、より実店舗に則した商品推薦を実装し、その効果を分析・評価する。

18:10
Simulation of Managerial Cognitive Representations in Post-merger Companies

ABSTRACT. This study examines the influence mechanisms of managers' cognitive representations on organizational decision-making. Three critical factors are identified: representation intensity, representation bias, and experience richness. Using the NK landscape framework, a model is developed to simulate decision interactions between two merged companies. The analysis shows that the impact of these factors on performance is interdependent. Simulation results indicate that understanding the relationships among these cognitive factors can significantly enhance decision outcomes in complex organizational environment. Lastly, a model is proposed to elucidate the influence mechanisms of representation intensity, bias, and experience richness on organizational decision-making.

18:25
A Network Motifs Analysis Framework for Community Improvement: Applications in AI ethics, Tourism and Second-Hand Luxury Market

ABSTRACT. This study introduces an innovative Network Motif Analysis Framework designed to enhance community activities across diverse sectors, including AI ethics education, tourism, and the second-hand luxury market. Unlike traditional network analysis methods, this framework integrates multiple attributes into network motifs, allowing for more precise and multifaceted insights into complex networks. The novelty of this approach lies in its adaptability: in AI ethics education, the framework evaluates shifts in ethical perspectives during a job-hunting case study, offering a unique method for assessing educational effectiveness. In tourism, it uncovers previously overlooked interactions between sightseeing spots, enabling the design of optimal routes that improve visitor satisfaction. In the second-hand luxury market, the framework pioneers the use of network motifs to identify profitable transaction patterns by analyzing ROI and time-series data. This flexible and innovative framework holds great potential for advancing decision-making and strategy development in various domains.

17:10-18:50 Session 4B: 研究発表1-B
Location: B会場
17:10
マルチスケール社会シミュレーションを用いた地域活性化のための政策立案支援~自治体の財政マクロモデルと市民の歩行ミクロモデルの連携~

ABSTRACT. 社会シミュレーションは,膨大な時間・費用がかかるまちづくり政策における社会影響評価への貢献が期待されている.我々は異なる意思決定基準を考慮可能なマルチスケール社会シミュレーションに着目し,京都府八幡市のスマートウェルネスシティ構想を対象として,実際の施策策定プロセスに即した意思決定支援手法に関する研究を進めている.本稿では,自治体の財政に着目したマクロモデルと市民の歩行行動に着目したミクロモデルを連携させるアプローチを提案し,施策例に適用することでその有効性を示す.

17:25
強化学習を用いたパラメータ設定による妥当性検証の方法論の提案

ABSTRACT. エージェントベースモデル(ABM)を用いた社会シミュレーションにおいて多くの工程があるが,モデル化の対象が複雑で不確実性が多い社会システムであることに起因して,モデルの妥当性検証の重要性が高い.しかし,定性的状況をモデルの再現対象とする,パラメータ数が多いなど複雑な状況下で妥当性検証の1つであるパラメータ設定を行うことを求められる場面もあり,こうした工程が社会シミュレーションの結果に大きな影響を与える.本研究では,こうした定性的な状況やパラメータ数が多いなどの状況で逆シミュレーションを用いてパラメータ設定を行う方法論を提案する.強化学習を用いて定性的な状況とモデルの差分を小さくしていくことでパラメータを設定する.

17:40
製パン出荷データに基づくパンの出荷数予測モデルの開発にむけて

ABSTRACT. 本研究では, 製パン企業における多種類のパン商品の工場出荷データを用いて,多くの商品の日次出荷量を予測するモデルの開発を行う.賞味期限が短く, 生産調整が頻繁に求められる製パン企業において, 生産数量の精密な管理と調整を行うために, パンの毎日の出荷量予測は生産の把握において極めて重要である. そこで, 本研究では, 過去の主要なパン商品の日次出荷データの時系列に基づき, ニューラルネットワークアルゴリズムを用いて, アイテムのマッピング処理を行い, 埋め込み手法により入力ベクトルの次元を削減することで, 高精度な商品出荷予測モデルの開発を目指す.

17:55
日本の未婚女性を対象とした結婚意欲の要因分析

ABSTRACT. 深刻な少子化問題を抱える日本政府が、人口維持のために掲げる目標「希望出生率1.8」を達成するためには、人々が結婚に希望を抱けるような支援を講じる必要があり、そのためには結婚意欲に影響を与える要因を明らかにする必要がある。 先行研究では、結婚意欲は成長過程における様々な経験を通して生まれ、変容するものであり、過去の経験や環境が関連していることがわかっているが、将来の不安や性別役割分業意識との関連は解明されていない。 そこで本研究では、将来の不安や性別役割分業意識が、未婚女性の結婚意欲に影響を及ぼすか明らかにすることを目的とする。 令和3年度人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査の個表データを用いて、因子分析と順序ロジスティック回帰分析を行った結果、結婚意欲に影響を与える要因を解明した。

18:10
社会生活統計に基づく属性と時間帯別の目的地間のOD値生成手法の開発にむけて

ABSTRACT. 日本では交通分野の政策立案等のために,いつ・どのような人が・どこに・何人移動したか,が即時的に,詳細に分かる携帯電話の位置情報データを用いた人口統計情報を用いることが増えている.しかし,使用時に費用がかかることや,利用時の現状では1つ1つの道の移動量しか明らかに出来ていないなど,データの利用者側の観点では課題もある.そこで本研究では,合成人口データやNHK国民生活時間調査等の公開されているデータを使用し,目的地を付与した人の1日の行動パターンを作成することによって,属性と時間帯別の具体的な目的地間の移動量を明らかにするデータ生成手法の開発を目指す.

17:10-18:50 Session 4C: 研究発表1-C
Chair:
Location: C会場
17:10
暗黙的フィードバックに対応するデータ拡張手法の開発にむけて

ABSTRACT. 概要- パーソナライズされたニュース推薦は,情報過多の問題を軽減する.ニュース推薦モデルは,ユーザーとニュース間のインタラクティブな情報を利用する.従来のニュース推薦手法では,ユーザーの行動履歴から文脈情報を抽出するために高度な自然言語処理技術を使うが,現実の暗黙的フィードバックデータセットはノイズと欠損値が多く,ユーザーの好みやアイテムの特徴表現を効果的にモデル化することが難しい.そこで,本研究ではデータの欠損を補完し,新しいデータ拡張技術を提案する.MINDデータセットでの実験では,提案手法を導入することで,ヒット率が6.8%,nDCGが7.7%程度向上し,推薦モデルの精度が向上された.

17:25
地域問題解決のための建築機能導出プロセスの開発

ABSTRACT. 地域社会の問題解決において重要な役割を果たす公共建築は、その企画段階においては、事業目的の不明瞭さにより要求される機能等が整理されず、設計段階において事業の停滞を引き起こす可能性がある。そのため地域の問題を捉えて、必要な機能をいかに論理的に導出するかが重要である。そこで本研究では、事業目的を明確化し、建築に求められる機能を合理的に導出するプロセスを開発することによって、公共建築の地域における問題解決を促進することを目的とする。プロセス開発においては、システム工学手法と建築設計手法を接続させた新たな計画プロセスを考案し、道の駅のリニューアル計画に適応した。その結果、開発された新たな計画プロセスによって、定量データに基づく問題の特定、要求される機能や空間の合理的な導出が可能になることがわかった。

17:40
合成人口データを用いた就業者の通勤手段属性の改善と従業地属性の分析

ABSTRACT. 先行研究において,合成人口データの就業者に対し従業地属性,従業地までの通勤手段・通勤経路・通勤 所要時間を割当てる研究がなされている.本研究では,合成人口データにおける就業者に関する属性の改善手法 と構想について述べる.通勤手段については,鉄道利用者割合を中心とした割当てから,常住地から最寄り駅ま での距離,常住地から従業地までの距離を中心とした割当て手法を提案する.また,従業地属性については先行 研究における課題と現時点での研究計画についてまとめる.

17:55
都市政策と都市構造が与える市民の活動量に対する影響の推計 - エージェントモデルを用いた分析 -

ABSTRACT. 近年,増加の一途を辿っている我が国の医療費を削減するために健康寿命を伸ばすことが求められている.健康増進のためには,日常の運動量を増加させることが必要不可欠であり,そのために効果的な施策の検討が求められている.本研究では,合成人口データの仮想個表を用いたエージェント・ベース・シミュレーションを行うことで,都市政策を施行した時の市民の交通手段選択や活動量を推計する.最終的には,複数の政策に関してシミュレーションを実行し,各シナリオの推計値を施策効果の指標として,その変化を分析することによって政策の有効性を検討する.

18:10
接触追跡アプリケーションの効果的な運用の模索 ワクチン対策との関係性からの考察

ABSTRACT. 新型コロナウイルス感染症の発生初期では,ワクチン対策の早期実施が困難なために,これに代わる感染対策として接触追跡アプリケーション(以下,接触追跡アプリ)が期待され,多くの国や地域で導入された.しかし,その多くはすでに運用を終了しており,先行研究においては,ワクチン開発・普及までの観点から有効性については十分に評価されていない.そこで本稿では,ワクチン接種率と接触追跡アプリの運用終了日との関係を分析することで,接触追跡アプリがワクチン普及期まで効果的に機能していたかを評価することを目的とする.ワクチン対策と接触追跡アプリの対策は,互いに補完的な役割を果たしており,次の感染症対策では,ワクチン普及までの間に接触追跡アプリを適切に運用する必要性を示した.